新型コロナウイルスの対応で保健所は忙しい。かかったと心配する人に検査が必要かどうかの判断をして、必要なら手配する。陽性と確認されると医療機関と入院や治療の調整をしたり、在宅療養をしている患者に定期的に安否の確認をしたりする。中でも職員の大きなストレスになっているのが「積極的疫学調査」だ。

これは、陽性患者から発熱や味覚がなくなるなどの発症がいつだったかを聞き、それから2週間さかのぼって感染源を探るものだ。発症日の2日前以降に会った人と連絡をとって、「濃厚接触者」の確認をする。濃厚接触者と認定されると、PCR検査で陰性になっても2週間は自宅で経過観察してもらう。

こうした調査は報道などで知られていて、相手を煩わせたくないと考える人の協力が得られるとは限らない。感染拡大で当事者が増えただけでなく、無症状の人までケアしなければならないため、当事者は膨大になる。

「賽の河原の石積み」のようなもので、きりがない

緊急事態宣言が出た1月8日に、神奈川県が「調査対象を絞り、重点化について徹底する」と発表したので、多少話題になったが、実は同県は昨年11月から「重点化」を表明してきた。そもそも、これだけ流行しているのだから、いまさら特定の人がどこで感染したかがわかったところで、賽の河原の石積みのようなもので、きりがない。当事者でさえ感染経路がわからないことが多いのに、たまたまその人の濃厚接触者になった人を探し出す意味がどれだけあるのだろうか。

この調査のマニュアルである「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」を作って公表している国立感染症研究所(感染研)も、その無意味さはよくわかっている。実は、昨年5月末時点の要領には、「本稿の位置付け」という項目があり、「クラスター対策が意味を成す段階」について、次のように書いてある。

「『大規模に患者が発生する前あるいは一定程度より下回った後』の『感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態』」