バイデン大統領は任期中で最も重要となるかもしれない法案に間もなく署名する。それは過去1年間、アメリカ国民を悩ましてきたパンデミックに終止符を打つべく、最大1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済支援策「アメリカ救済計画法案」だ。だが、バイデン政権は選挙公約に反し、初っ端から民主党単独で強行採決し、法制化に至る見通しだ。

バイデンの理想どおりに進む議会審議

追加経済支援策では、バイデン大統領は最初から超党派合意は棄てていたように見える。政権発足から2週間も経たない2月1日、バイデン大統領は穏健派の共和党上院議員10人とホワイトハウスで面談。彼らが提案する6180億ドルの支援策と政権の目指す1.9兆ドルの支援策の妥協案を模索する交渉がその後始動するかとも思われた。

だが、その期待はすぐに消え去った。政権は聞く耳を持っているそぶりを見せていたものの、共和党との妥協案を交渉する意思はなかったのだ。会合から約1週間後には議会民主党が予算決議を通し、バイデン政権が民主党のみで可決できる財政調整法を利用し法案策定を進めたことは、共和党を激怒させた。

政権が超党派合意を早期に放棄したのには理由がある。バイデン政権では、ロン・クレイン大統領首席補佐官をはじめ2009年の苦い経験を鮮明に記憶しているオバマ政権経験者が多数、要職に就いている。当時、リーマンショック後の景気対策「アメリカ再生・再投資法(ARRA)」で、オバマ政権は共和党の支持獲得のために支援額を減らすことなどに妥協するも、結局、ほとんど共和党の支持を得ることができなかった。

減額されたことが経済回復の遅れをもたらし、オバマ政権の経済対策を批判する共和党が翌年の中間選挙で下院議席を63も民主党から奪い大勝し、民主党にとって悲惨な結果をもたらした。これを教訓に、危機の中で時間を無駄に過ごすという同じ過ちを犯してはいけないと政権幹部は考えているのだ。

そしてバイデン政権は単独行動に強気となれるもう1つの理由がある。議会では共和党が1人も賛成しないとしても、国民世論において追加経済支援策は党派を問わず幅広い支持を得ているのだ。モーニングコンサルト紙・ポリティコ紙が実施した世論調査(2月26日〜3月1日)によると、追加経済支援策は全国民の77%、共和党支持者のみでも59%の支持を集めている。民主党は超党派の定義を「議会」ではなく「国民」にすり替え、公約違反でないことを主張している。