お笑い関連書籍では10万部を超える異例のヒットを飛ばす新書『言い訳〜関東芸人はなぜM-1で勝てないのか〜』。出場者、審査員として『M-1グランプリ』に深く関わってきたナイツの塙宣之さんが、なぜ今、この本を執筆したのか? インタビュー前編では、「本を出した理由」や「M-1を勝ち抜く難しさ」などについてうかがいました。 

――ご著書が売れているそうですが、どんなお気持ちですか?

思ったより売れているのでハズい(恥ずかしい)っていうのがいちばんの感想ですね。こんなに話題になるとは思わなかったから。自分の考えは瞬間瞬間で変わるので、僕自身が読み返しても「今とはちょっと考えが違うな」って思うところもあります。書いた時点で思ったことだから、芸人とかで「これを参考にします」っていう人がいたら、そんなにしないほうがいいよ、とは思いますね。

――現役の芸人が笑いについての理論的な本を書くのは割と珍しいと思うんですが、こういうのを書くことに対する抵抗はなかったんですか?

こういうのって取材で絶対聞かれるんですよ。とくに『M-1(グランプリ)』がすごいんです。2008年ぐらいからはもう毎日のように取材があるわけですよ。「今年の『M-1』はどうですか?」とか。それは本当にキツいんですよ。何かボケたりしても「いや、もっとまじめなことを言ってくれよ」みたいな感じになるから。結局、まじめな話をずっとすることになる。永遠に聞かれるし、ずっと言われるからもう出しちゃおう、みたいな。

本音を言えば「取材は嫌」

――なるほど。塙さんとしては、そういうときにも本当はずっとボケていたいんですね。

それはやっぱりありますよ。芸人だから適当にやっていたいじゃないですか。ただ、すげえ取材をされるから。それが嫌で嫌で、というのがいちばんの本音です。もう今後取材させたくないから「これを読んでください」っていう本なんです。ただ、ほかの人よりはお笑いについてまじめに話すことに対する抵抗感はないかもしれない。というのは、そこで逆に抵抗することがもう寒くなってきているというか。

――ああ、もう一周回っちゃってるんですね。

「芸人は笑いを語らないほうがいい」って言っているやつが、もういちばん語っちゃっているでしょ。だからそれはしょうがないんですよ。断るときも寒くなるわけだし。オファーが来ちゃっているんだからやっておいて、興味ある人にだけ見てもらって、興味ない人には本当に見てほしくない。だから、この本も別に見なくてもいいと思っています。