6月末からPCR検査数の大幅な拡充(3月、4月の約10倍)に伴って東京を中心に、全国で新型コロナのPCR陽性者数増加が報告されています。PCR検査数の急増にはあまり触れずに、その陽性者数の増加を「新規感染者の増加」として強調する報道が多く、中には恐怖をあおることが目的のようなものも散見されます。日々不安に思っている人も多いと思います。

私は東京都の企業約20社で産業医としての業務を行っています。「コロナの感染がどんどん広がっていて大丈夫でしょうか?」と動揺した社員さんから質問されることがしばしばあります。

そのたびに、「東京では検査数が春の10倍以上に増えているのだから、今まで隠れていた感染者が見つかるのは当たり前。3月、4月にこれぐらいの数を検査していたら、もっとたくさんの陽性者数が見つかった可能性が高いですよ」「ほとんどは無症状者か軽症者です。3月、4月には検査が受けられず、風邪として治癒していたような軽症の感染者が、今は検査が受けられるようになったので次々と判明しているだけです」「死亡者は微増で、ウイルスが変異して強毒化したというわけではありません」と説明しています。そうすると、多くの人はほっとした顔で落ち着かれます。

すでに多くの人が感染、無症状・軽症で済んでいる

私がそのように説明するのには根拠があります。

例えばソフトバンクが6月9日に行った大規模な新型コロナウイルス抗体検査において、PCR陽性者の約14倍の人が、抗体を保持していたことがわかっています。新型コロナウィルスに対して抗体を持っているいうことは、当然ながら過去に感染したことを示す証拠です。この抗体検査では被験者4万4066人のうち陽性者数は191人、陽性率は平均0.43%(医療者のみでは1.79%、非医療者だけでは0.23%)でした(ソフトバンクグループ「抗体検査結果速報値等について」6月9日付)。

この陽性率を単純に日本の全人口1億2373万人に当てはめると、53万2000人(非医療者の陽性率だと28万4000人)がすでに新型コロナウイルスに感染していたという計算となります。一方、日本で今までPCR検査を経て感染が判明した人は、累計でもわずか4万7466人のみ(8月8日現在)です。すでに多数の隠れた感染者がいても不思議ではありません。

「地方と東京は人口密度も感染状況も違うからその抗体陽性率で単純に計算できないのでは」というご意見もあるかと思いますので、東京都のみに当てはめて計算しますと、人口1400万人で抗体陽性率0.43%とすると約6万人、非医療者の抗体陽性率0.23%を適用したとしても約3万人と推計できます。東京都の公表しているPCR検査の累計陽性者数1万5536人(8月8日現在)の約2倍から4倍です。多くの方が知らないうちにコロナに感染して治癒しているということが類推できます。

ちなみに最新のコロナ抗体調査では、ソフトバンク調査より高い数字が出ています。神奈川県・横須賀市が無作為に抽出した2000人の市民を対象として7月3日〜15日に調査した結果、検査を受けた964人中10人に抗体があり、抗体保有率は1.04%でした。この抗体保有率を東京都の人口に当てはめると、約14万5000人がすでに感染していることになり、現在判明している陽性者数の約10倍ということになります。