「周りを取り囲まれ、背後から首を絞められ、殴られたり、蹴られたりしました。カッターの刃を突き付けられ、目の前でのノコギリを振り回され、恐怖で体が硬直し、頭の中が真っ白になりました。やがて暴行を受けても痛みを感じなくなり、私に向かって撃たれたエアガンの弾が、体をすり抜けていくような感覚になりました」

佐藤和威さん(21)は、11月18日に福岡高裁で開かれた控訴審の第1回口頭弁論でこう述べた。佐藤さんは佐賀県鳥栖市立の中学校に入学した2012年4月から10月までの7カ月間、複数の同級生から繰り返し暴力を受けた。それが原因で重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)になった。

佐藤さんと両親、妹は、加害生徒のうち8人と保護者、そしていじめを認知しながらも不適切な対応だったとして鳥栖市を訴えている。加害者と保護者、市側に合わせて約1億2800万円の損害賠償を求めている。

一審判決はいじめ行為を過小評価?

一審の佐賀地裁(遠野ゆき裁判長)は2019年12月20日、加害者たちには一定の責任を認めた。賠償額は連帯責任で400万円。市側の責任は問われない内容の判決を出した。これに対して、佐藤さんらは控訴した。一審がいじめ行為を過小評価したと考えているからだ。

実際、この一審判決をつぶさに見ると違和感がある。

いじめのきっかけは、中学入学前に近所でエアガンを撃たれている女児を助けたことだった。「加害者Aから『いい格好しやがって』と言われました。Aとは同じ小学校だったんですが、それまで何もされていませんでした。今あのときに戻っても、女児へのいじめを止めていると思います」

いじめの現場の1つだった農道は、通称「兎(ウサギ)狩りロード」と呼ばれていたという。スーパーセンターに行く途中、加害者Bらが佐藤さんを走らせ、後ろからエアガンで撃つということが繰り返された。

「4月は毎日のようにエアガンで撃たれていたんです。当時、外出するときは、ジャージを来ていました。持っている服のなかで最も痛みを和らげることができたものでした。普通なら、外出時にジャージは着ません」(佐藤さん)