国立がん研究センターの統計によると、2016年にがんと診断された約100万人中、20歳から64歳の就労世代は約26万人。全体の約3割だ。

だが、治療しながら働く人の声を聞く機会は少ない。仕事や生活上でどんな悩みがあるのか。子どもがいるがん経験者のコミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ」の協力を得て取材した。

約9年前、10万人に1〜2人というGIST(胃がんや大腸がんのように消化管の粘膜ではなく、粘膜下の筋層にできる悪性腫瘍の1つ)が食道に見つかった谷島雄一郎さん(43)。大阪ガスに勤務する彼が病後、価値観をどう変化させていったのかを紹介する。

ゆるキャラ猫が自粛生活に提供した知恵

「大手新聞に『う○こ』の文字を載せていただけたのが、うれしいっすね」 

色白で、切れ長な目の谷島さんはそう言ってほくそ笑む。クールな顔立ちながら、笑顔でさらっと3文字を口にする点が関西人。筆者もそうだから、彼の言わんとすることはよくわかる。

2020年5月19日付読売新聞夕刊(関西版)に掲載された、「自粛生活がん患者の知恵」という見出しの5段記事のこと。3点のイラスト付きだ。

LINEスタンプのひとつ(画像:ダカラコソクリエイト提供)

その1点が、室内で寝転びながら窓外の3つの雲を「おしり」「う○こ」「くじら」に見立てる、“在宅忍者”ゆるかわ系キャラ猫「ニャ助」。谷島さんが会社勤めのかたわら、発起人・世話人を務めるダカラコソクリエイト(以下、カラクリ)が、カッパの「パ次郎」とともに、5年前に作り出したキャラクターだ。

もともとは、カラクリに集うがん経験者が、入院や療養中にかけられてうれしかった言葉をLINEスタンプにしたもの。「がんばりすぎやで」「おしえて〜な〜」などの、ほっこりする関西弁が添えてある。病気とは無縁でも、多忙さにこわばりがちな心と体を一瞬ほぐしてくれる。1セット40 個で120円。