グーグル、フェイスブック、マイクロソフトをはじめ、世界中のテクノロジー企業が開発を進めるVR(仮想現実)技術。インターネットの歴史の中で、情報をデジタル化したのがWeb、人と人のやりとりをデジタル化したのがSNSだとすれば、オフィスや街などの空間をデジタル化するのが仮想現実の特徴だ。

仮想世界は、フィクションでも度々描かれてきた。7月16日に公開された劇場版アニメ『竜とそばかすの姫』もその1つだ。本作は、世界中で50億人が登録する<U(ユー)>というネット上の仮想世界に、内気な地方在住の高校生・内藤鈴(すず)が「ベル」という名のアバター(作中では<As(アズ)>と呼ばれる)で参加するところから物語が動き出す。

原作・脚本・監督を務めるのが、『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(2009年)などを手がけてきた細田守氏だ。これまでもネット上の世界をテーマに作品を作ってきた細田氏に、今改めて仮想現実を舞台にした理由を聞いた。

ネットの持つ意味合いが変わった

――2009年に公開された『サマーウォーズ』では、<OZ(オズ)>という仮想世界が舞台でした。本作で再び仮想世界を描いたのはなぜですか。

僕はこれまで、約10年おきにインターネットを舞台にした作品を作ってきた。『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』は2000年、『サマーウォーズ』は2009年、そして本作。10年おきに見ていくと、そのときどきでインターネットの持つ意味合いが大きく変わっている。

20年前の『デジモン』の時代のインターネットは、一部の若い人が世界を変えていくための新しいツールだった。

その10年後の『サマーウォーズ』は、ちょうどiPhoneが出てきた時代。子どもからお年寄りまでネットに触れるようになる中で、そこに希望が持てるように、という思いを込めて作った。グローバルで自由なインターネットと、人間関係でがんじがらめになった田舎の親戚。正反対なものを掛け合わせてみたら面白くなるはず、とも考えた。

そこからさらに10年経った今、インターネットといわれて多くの人が連想するのは、誹謗中傷ですよ。