クリニックに勤務する川野も患者さんの変化を実感しています。以前から対人不安(対人緊張)を抱える患者さんは少なくありませんでしたが、最近特に多く受診されるようになったと感じます。コロナ禍がある程度落ち着いたのは喜ばしいこと。しかし、リモートワークが終わり、通勤が再開したことで、人と関わるシーンが増え始めました。そこに、対人不安を有する患者さんは強いストレスを抱えているのです。(「まえがき」より)

2つ目の特徴は、こうした状態から抜け出すことを目指す本書が、「マインドフルネス」と「モメンタム」の観点から書かれているということ。

「マインドフルネス」と「モメンタム」

もはやすっかりおなじみだと思うが、マインドフルネスは、「瞑想」などを通じて「いま、この瞬間」に意識を向けようという概念。そうすることで、脳の疲れが癒やされ、心のモヤモヤやイライラが晴れるなど、心を落ち着かせることができるわけである。

川野氏と恩田氏は、そんなマインドフルネスを「人生を健やかに生きていくための、叡智のかたまり」であると考えているそうだ。

一方の「モメンタム」は、「パッとしない状態」から心を引っ張り上げ、さらに活力を与えるような心的エネルギーのことを指すという。「心を落ち着かせる」のがマインドフルネスなら、「心を勢いづかせる」のがモメンタムだということ。要するに、これらは「2つでひとつ」のものだと考えられる。