信号機のない横断歩道でクルマが一時停止してくれるかどうかを調べるJAF(日本自動車連盟)の調査で、また長野県が1位になりました。5年連続、かつ他の都道府県と比べてもダントツの結果、なぜでしょうか。

7割のクルマが一時停止←「いや、まだ3割が止まらない」

 信号機のない横断歩道を歩行者が横断しようとしている場合、クルマは一時停止しなければなりませんが、その「一時停止率」が低いことが、改めて浮き彫りになりました。

 JAF(日本自動車連盟)は2020年10月16日(金)、「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」の2020年版の結果を発表しました。5回目となった今回の調査対象は9434台で、一時停止率としては年々上がっているものの、依然として約8割のクルマは止まらず、という結果でした。

 都道府県別で見ると、ワーストは宮城県の5.70%で、全国平均は前年から4.2ポイント増の21.3%です。2位は兵庫県の57.1%ですが、1位はそこから大きくポイントを引き離し、長野県の72.4%でした。

 つまり、全国では8割のクルマが止まってくれないのに、長野では7割のクルマが止まってくれた、というわけです。

 長野県は一時停止率も過去最高を更新しています。1位は5年連続で、2016年の初回調査時は全国平均の一時停止率が10%未満というなかで、長野県だけが突出して高いことにJAF自身が驚き、調査をし直したほどでした。

 今回の状況について、「いや、まだ3割のクルマが止まっていません」と話すのは、長野県警の交通企画課です。横断歩道におけるクルマの一時停止率が長野県で高いことについて、同課に聞きました。

長野ではどんなことが行われているのか?

――横断歩道での一時停止無視について、取り締りを強化しているのでしょうか?

 はい。ここ5年で見ても、検挙件数は上がっています。ただこれは全国でも同じことでしょう。

――横断歩道の安全対策や、交通マナーの啓発という点は強化しているのでしょうか?

 横断歩行者の保護には力を入れています。たとえば、横断歩道の標識については、外周がLEDで光るものを独自開発して導入しているほか、(車両と歩行者とで青信号のタイミングを分離する)歩車分離式信号も多く整備しています。それでも県内では、歩行者事故の3割が横断中に起こっていますので、横断歩道を「歩行者の聖地」としてアピールしたい考えです。

 また交通安全教育に関しては、交通安全教育支援センターが県内の学校などからの依頼を受け、無償で行っています。保育園・幼稚園から高校まで、年に1回は必ず交通安全教育に触れる機会があります。

――他県では、JAFの調査結果を受けて横断歩道における交通マナー啓発を強化する動きもありますが、長野県ではどうでしょうか?

 JAFさんの調査結果は大々的にではないものの、折に触れ紹介しています。2020年9月から1か月間実施した交通安全運動では、「『全国1位』というよい習慣を伸ばしましょう」とアピールしました。

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 長野県警は様々な取り組みを行ってはいるものの、とりたてて「長野県独自」というものはなさそうです。実際、「これをやっているから(一時停止率が)高い、というものはない」といい、「県民性」だとする向きもあるとのことです。

歩行者も知らない歩行者優先 大切なのは「アピール」

 では、一時停止率が低いとされた県は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

 2018年に実施されたJAFの調査で、一時停止率が全国最低の0.8%とされた栃木県は、JAFの調査結果を逆手に取り、大々的なキャンペーンと取締りを展開、2019年には13.2%まで向上し、今回は14.2%でした。

 以前の取材時に栃木県警の担当者は、そもそも信号機のない横断歩道で一時停止しなければならないことを知らないドライバーも少なくなかったと話していました。これは歩行者も同様。「クルマが行ってから渡ればいい」と考え、横断歩道を渡る意思がドライバーに伝わりにくい場面があることから、歩行者への広報も必要だということでした。

 長野県警の担当者に聞いたところ、たとえば子どもが横断歩道で手を上げていれば、クルマはほぼ止まってくれるといいます。そして子どもには、「クルマが完全に止まったかどうか確認してから渡ろうね」と教えているそう。

「こうして、クルマが止まってくれることを経験した子どもが、大人になって、習慣が脈々と続いているのではないでしょうか」(長野県警 交通企画課)

 とはいえ、小学校低学年くらいまでは交通ルールをしっかり守っていても、大きくなるにつれ守らなくなる子どもが増えるのは、どこでも同じだと話します。

 ちなみに、横断歩行者の保護徹底については、警察庁や国土交通省も力を入れています。国土交通省によると、日本では2017年における自動車乗車中の交通事故死者数がG7(日本、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア)で最も低い一方、歩行中および自転車乗車中の死者数は人口10万人あたり2.0人と、G7でワーストです。