大分県が復活を目指している別府湾のホーバークラフト航路、その運航事業者が第一交通産業に内定しました。地元でもタクシーで知られる同社ですが、なぜホーバークラフト運航事業者に選ばれたのでしょうか。

運航事業者に応募したのは1社のみだった

 大分県が復活を目指している大分市〜大分空港間のホーバークラフト航路について、2020年10月16日(金)、県の委員会が運航事業者の審査を行い、最優秀者を決定しました。11月にも、事業契約が締結される見込みです。

 最優秀の運航事業者候補となったのは、全国でタクシーを中心に事業を展開している第一交通産業(北九州市小倉北区)です。そもそも今回、ホーバークラフトの運航事業者として名乗りを上げたのは同社のみでした。

 第一交通産業は大分市や別府市でも、グループ会社が「第一」の行灯を付けたタクシーを運行していることもあり、「タクシー会社」の認識が強いといえます。それがなぜホーバークラフトの運航事業者に選ばれたのか、大分県の交通政策課は次のように話します。

「第一交通産業さんは、2019年からグループ会社(第一マリンサービス)が沖縄本島の那覇と本部半島のあいだを結ぶ高速船を運航しており、それに立ち上げから関わった実績なども評価されました」

 県はこれまで海運事業者を中心に、複数社へ運航を打診し、興味を持っていた会社もあったといいます。しかし、募集要件の「定期船を運航している事業者」に該当せず、結果的に第一交通産業のみが応募し、最優秀に選ばれたということです。

ホーバークラフトとタクシー「親和性ある」

 ホーバークラフトはかんたんに言うと、高圧の空気で水面から浮上して高速航行する船で、1970年代には各地の航路で見られました。しかし徐々に数を減らし、国内で最後まで残ったのが、別府湾を横断する大分市〜大分空港間の大分ホーバーフェリーでした。2009(平成21)年に廃止され、会社はすでに解散、国内で旅客船としてのホーバークラフトの製造も終了しています。

 しかし、大分市から大分空港までは、別府湾を回り込む高速バスで60分もかかることから、県は空港のアクセス改善を目的に航路の復活を検討。背景には2019年度までのインバウンド(訪日外国人)需要の高まりがあります。同区間を25分で結ぶスピードと、遊休施設も活用できる面から、ホーバークラフトの再導入が妥当と判断されました。

 ちなみに2020年現在は、世界的に見ても、定期のホーバークラフト航路としてはイギリスにひとつを残すのみです。そうした特殊な船であるため、国内に運航経験者はほとんどなく、今回の事業者募集にあたってもホーバークラフトの運航経験は要件に含まれていませんでした。

 では、第一交通産業はどのような理由から、今回、ホーバークラフトの運航事業者に名乗りを上げたのでしょうか。

「当社は地域公共交通として、大分市などでも古くからタクシー事業を展開しており、地方から要望があれば、前向きに検討するようにしています。そうしたなかで今回、県からお声掛けをいただきました。市街からホーバークラフトの乗り場まで、タクシーの需要にもつながります」(第一交通産業)

 また、ホーバークラフトの大分側乗り場は、かつてのホーバー基地が残る大分市西新地地区と、西大分地区の2つが検討されていましたが、第一交通産業の事業案は西大分地区を推しています。西大分は神戸〜大分のフェリーが発着するほか、港の再開発でオシャレなスポットとして人気が高まっている地区です。

肝心のホーバー、どう調達する?

 第一交通産業も、「これからが本番」というホーバークラフト復活計画。大分県は、「まず事業所を立ち上げていただいたうえで、ホーバークラフトの訓練を行っていく必要があります。その前に、造船会社も決めなければなりません」と話します。

 前出の通り、すでに国内でホーバークラフト航路はなく、唯一のメーカーだった三井造船(現・三井E&S造船)も生産を取りやめています。いまから国内メーカーに製造を依頼するのは、安全面でも現実的ではないとのこと。

 イギリスには船員の訓練まで実施している船舶メーカーがあるとのことですが、「本当に世界でその1社だけなのか、広く探したうえで入札をかけます。現地へ行く、あるいは大分まで指導員に来てもらうかして、船員の訓練を行っていくこととなるでしょう」(大分県交通政策課)といいます。

 大分県はホーバークラフト航路について、2023年をめどに運航したい構えです。

 ちなみにホーバークラフトの操船は、大分県の担当者が経験のある人に聞いたところ、「船を運航するというより、ヘリコプターでホバリングをしているような感覚」なのだそうです。