多くの空港に設置されているラウンジのなかでも、JALの入口では「いつどこでも同じ、いい香り」がします。これはどこから出ていて、なぜ同じなのでしょうか。担当者に聞いたところ「匂い」ひとつにも多くのこだわりが詰まっていました。

2013年から導入のオリジナルアロマ

 多くの空港では、その航空会社を多く利用する「常連さん」や、上位クラスの座席に搭乗する人に向けた特別な待合室「ラウンジ」があります。限られた人しか入ることができないながらも、その館内ではドリンクやフード提供をはじめとして、特別なサービスが受けられます。

 JAL(日本航空)の空港ラウンジでも、その館内は随所にこだわりが見られます。その代表例といえば、国際線ラウンジの「カレー」ですが、もちろんそれだけではありません。国内空港のJALラウンジの入口には常に「いい匂い」が漂っているのです。しかも、どの空港でも同じ匂いです。

 この「JALラウンジのいい匂い」はなぜ生まれ、どこから発生するのでしょうか。JALの商品・サービス企画本部の相原 光さんに話を聞くことができました。

――ラウンジにいい匂いが漂っているのは、どうしてでしょうか。

 JALでは国内空港で2013(平成25)年からラウンジ入口にオリジナルアロマを導入しています。実は嗅覚は、人間の記憶によく残るそうなのです。そこでJALラウンジに来たお客様に思い出していただき、ブランド感を高める狙いがあります。実は、香りの導入前、聴覚からJALらしさをお客様にアプローチできないか試したこともありますが、空港という特殊な環境上、それはなかなか難しかったのです。

 そのときに海外の「五つ星ホテル」などでは、独自の香りを導入しているところがあることもわかりました。色々なホテルや高級レストランに、ちょっと不審だよな……と思いながらも(笑)、どのような香りなのかを確かめに行きました。

JALのラウンジのいい香り どう決まった?

――アロマを導入するにあたって、気をつけたポイントやこだわりなどはありますでしょうか。

 このアロマで一番こだわったのは素材です。航空会社として香りを導入する以上、JALの安心・安全をお届けしなければなりません。アレルギーを持つお客様もいらっしゃいます。そのため、素材には人工物を使わず天然のものを使うことで、「国際的に問題ない」基準をクリアしました。また実際の調香はプロモツール(東京都文京区)さんにお願いしたのですが、ここは強くオーダーしたところです。

 また当時、JALのラウンジには「伝統」「革新」「日本の心」といったテーマがあるのですが、このテーマにのっとって、可能な限り日本のテイストを取り入れています。

――香りはどのように決められたのでしょうか。

 実はJALのラウンジでは、朝と夜で違う香りを使っています。一種類ではもったいないというのもありまして……。朝はヒノキ系統のさわやかな香り、夜はどちらかというと魅惑的な、ゆずやラベンダーなどを用いた香りです。イメージを伝えて、プロモツールさんに作っていただいた香りを朝用と夜用のそれぞれ3種類ほどにしぼり、会議室のなかで香りを実験的に焚き、みんなで決めました。開発には1年近くを要しました。

――実際の空港ラウンジでは、どのようにアロマを焚いているのでしょうか。

 実は空港によって異なります。アロマも強く抽出しているものと、薄く抽出しているものがあり、空港ごとに数種類を使い分けています。大きなラウンジを持つ空港は濃いものが、コンパクトなラウンジの空港は薄いものが、それぞれ使われることが多いですね。

空港ごとにも違う! JALアロマの深〜いこだわり

――実際に焚くときに、空港ごとに違いがあったりするのでしょうか。

 実はアロマを入れているJALの空港はすべて、調香師の方に実際に来ていただいてチェックしてもらい、納得したうえで実際に提供しています。

 コンパクトなラウンジであれば、アロマオイルをディフーザー(散布器)で霧状に噴射し、撒いたあとファンで拡散します。成田や羽田などの大きな空港ラウンジであれば、壁のなかにディフーザーとファンを埋め込んでいるところもあります。

 また、空港ごとに空調の風向きが異なりもしますので、どこに置くかというのもポイントです。

――アロマを噴射するタイミングは、空港ごとに異なるのでしょうか。

 空港によっては出し続けていたり、何分か吹いたら何分か休めたり、空港によってすべて使い分けています。基本的に、どの空港でもできる限り「香りの強さ」も一緒になるようにしています。

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 なお相原さんによると、ラウンジの香りは「ずっと変えていない」のだそう。また、一般販売はされていませんが、JAL機内のおしぼりの一部には、朝使われているアロマの香りを吹きかけているそうです。

 また先述のとおり天然素材だからこそ、「いい匂い」が続く時間も限られていると話します。そのため、アロマを交換する頻度も「新鮮なうちに」と気を配っているとのことです。