旅客機の化粧室では、バキューム式のものが採用されるのが一般的ですが、乗客が用を足したあとの「落とし物」は、超高速で配管を駆け抜け、タンクに収められます。なぜ高速運搬がされ、またどのように行われているのでしょうか。

A380の場合 配管を駆け抜ける速度は約210km/h

 2020年2月現在、一般的になっている旅客機の化粧室(ラバトリー)といえば、流す際に「シュゴ」っと大きな音を出し、用を足したあとのいわゆる「落とし物」が吸い込まれるのが特徴の、バキューム式(真空式)のものです。この「落とし物」はどこにいくのでしょうか。

 実は現在の旅客機の多くで、機体後部などに「落とし物」を貯めるタンクがあります。旅客が洗浄ボタンを押し、流されたものはそこに貯められ、目的地到着後など地上でラバトリーサービスカーという専用車で回収されます。

 このタンクに向かうまでの「落とし物」は、機内の配管を通ってタンクまで至るわけですが、その配管を駆け抜けるスピードは、非常に高速です。

 たとえば総2階建てのエアバスA380型機の場合、2007(平成19)年にトイレの試験装置を用いた、内容物のタンクに収められる様子が報道陣に公開されていますが、このときの内容物の速度は、F1カーにも匹敵するおよそ時速130マイル(約210km/h)とされています。

 現行の旅客機の多くでは、先述のとおり機体後部にタンクを備え、そして化粧室は機体前方にも見られます。先出のエアバスA380型機は、全長約73mと非常に大きな胴体を持っており、最前部のトイレから最後部のタンクまでの距離も、相応の長さになります。F1カーにも匹敵するスピードを出せるほどの吸引力がなければ、タンクに「落とし物」を収めることができないのです。

 ではこの高速運搬、どのように行われているのでしょうか。

「落とし物」高速移動には理由あり そのメカニズム、メリットは

 バキューム式化粧室での「落とし物」の高速運搬を生み出す吸引力の源は、気圧の差です。映画やドキュメンタリー、そして整備不足などが原因で過去に生じた航空事故の再現VTRなどで、飛行機の外壁に穴が空いたとき、一気に人や荷物などが外へ吸い出されてしまうシーンがあります。これは空気が、気圧が高い客室から、気圧の低い上空外気へ流れているためです。

 これと同じように、上空で化粧室の洗浄ボタンを押すと、タンク内に備わる専用装置の一部の弁が開き、飛行機は小さな穴が開いたような状態になり、配管内の気圧が下がります。高い気圧の客室内にあるトイレの「落とし物」は、この気圧差で一気に吸い出され、タンクに収まり、空気のみ機外に放たれます。また地上など気圧差が十分でない場所では、バキュームブロワーという装置を使って、タンク内を低い気圧にして対応するそうです。

 なおこのバキューム式のトイレは、吸い込む際に大きな音が出てしまうのがデメリットですが、ほかの方式の旅客機用トイレと比べて、そして乗客にとってのメリットも多いのです。

 従来型の旅客機のトイレは多量の洗浄水を積み、「落とし物」を流したあと、浄化し再利用する循環式でしたが、これだと飛行機の重量が増えてしまいます。バキューム式であれば、吸ってしまうぶん、使う水は少量で済むので、より重量を減らすことができ効率的なフライトにつながります。

 このほか、化粧室自体の快適性も、バキューム式に軍配があがります。これは、洗浄ボタンを押して「落とし物」を吸引する際、その強い吸引力で臭気まで吸い取ってくれるためで、使用後のニオイ残りも軽減されるとのことです。