空港で見る旅客機は車輪を出していますが、その状態で機首側の前脚ドアを見ると、多くで「赤い線」が塗られています。それにどのような意味があるのか、JALの整備士に聞いたところ、安全に欠かせないものでした。

トーイングカー運転手に限界を伝える「赤い線」

 空港で見る旅客機は車輪、つまり脚を出しており、機首側にある前脚(ノーズギア)上部には、上空で脚をしまうときに閉じるドアが、開いた状態で見えています。

 この前脚のドア、多くの旅客機で「赤い線」が引かれています。どのような意味があるのか、JAL(日本航空)の整備士に聞きました。

――前脚ドアの赤い線は、なんのためにあるのでしょうか?

 これは、地上で飛行機の支援を行うグランドハンドリングの際に用いられます。

 飛行機は原則、自力でバックはしないので、駐機場からバックして出ていく際には、「トーイングカー」という車両に押してもらいます。このトーイングカーは飛行機の前脚のステアリングを操作し、飛行機の向きを所定の方向に変えることができるのですが、この赤い線は、そのときトーイングカーの運転手に「これ以上前脚のステアリングを切れません」という目印の役目を果たしているのです。

 こういったモデルでは、前脚のタイヤを支える支柱下部にも赤い線が引かれており、この線がドアの赤い線を越さないようにけん引をします。

物理的には「赤い線」超えは可能? 安全ラインはほかにも

――車輪のステアリングは赤い線より横に切ることができるのでしょうか?

 飛行機のモデルにもよりますが、多くで可能です。ただ、その場合破損の危険性があり、安全が保障できない可能性も出てきますので、それに備えて、トーイングカーの運転手は飛行機の方向を変えるとき、赤い線を最大としてステアリングを操作しているのです。

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 なおJALによると、トーイングカーにはけん引するときに、棒(トーバー)を使うタイプと、使わないタイプがありますが、両方とも、赤い線を目印にステアリングを切るのは変わらないといいます。また、同社の新鋭機であるエアバスA350-900型機も、同様の目印がついているとのことです。

 ちなみに、飛行機に引かれている赤い線はこれだけではありません。JALの整備士によると、たとえばボーイング737型機の胴体前方に引かれているものは、スタッフの安全を守る重要性の高いものだそうです。

「胴体前方の赤い線は、エンジンが回っているときに『これ以上エンジンに近づくな』という印です。飛行機を動かすエンジンはとても吸引力が強大ですので、近づきすぎると吸い込まれてしまう可能性もあります。整備士やハンドリングスタッフが安全に作業できるよう、飛行機は人間に注意喚起してくれているのです」(JALエンジニアリング 整備担当)

 同整備士は「飛行機に引かれている線は、それぞれにきちんと意味があるんです」と話を締めくくりました。