戦車などの戦闘車両は、地雷原を突破するために車体前方に処理用ローラーなどを付けることがあります。これはローラーの圧力で地雷を爆破処理し物理的に無害化するものですが、同じような発想は水中に潜む機雷でもあったようです。

敵味方双方で同時期に考えられた「飛行機による機雷除去」の方法

 第2次世界大戦中、イギリスおよびアメリカとドイツは、戦艦や潜水艦などでの戦いとは別に双方の国の周辺海域に機雷を敷設しあう、いわゆる「機雷戦」も激しくやりあっていました。

 その機雷を無力化しようと用いられたのが、磁気リング付きの飛行機です。「磁気リング」と聞くと、なにやら健康器具のようですが、そのようなものを付けた飛行機とは、なかなか想像が難しいかもしれません。

 そもそも機雷は、敷設に関しては水上艦艇や飛行機、潜水艦など様々な手段で短時間のうちにできるのに対し、その除去となると水上艦艇や潜水夫(水中処分員)がひとつひとつ時間をかけて対処するしかなく、それでいて蝕雷すると被害は甚大という厄介なものです。

 しかも当初は直接、接触することで爆発する、いわゆる蝕発式だけだったのが、第2次世界大戦では鉄製の船体が帯びる磁気を感知して爆発する、いわゆる磁気感応式も登場しました。

 磁気感応式機雷に対しては、駆逐艦や掃海艇など機雷処理にあたる艦船も、鉄製で磁気を帯びていると危険度が増します。このため機雷を除去する掃海作業は一気に複雑困難となりました。

 磁気感応式機雷の除去が困難ならば、逆に強力な磁気を発することで機雷を誘爆させて無力化してしまえばよいという、まさに逆転の発想で作られたのが、磁気リング付き飛行機でした。

わりとすぐに姿を消した理由は「新型機雷」

 掃海用の磁気リング付き飛行機は、イギリスをはじめとした連合国軍と、ドイツをはじめとした枢軸国軍の双方で開発され、1940(昭和15)年頃から使われるようになりました。

 機体は双方ともに、一定以上の大きさのリングと、発電機など磁気発生用の各種装置を搭載する必要から双発エンジン機以上とされたものの、高々度飛行や高速性は必要ないため、当初は輸送機改造の機体もありました。

 また磁気を発生させる装置はリング状でなくてもよかったため、菱形や棒状など、その形状にもいくつか種類が見られました

 大戦が進むにつれて、海面に降りることのできる飛行艇も用いられるようになります。基本的には既存機の改造で、機種はバラエティに富んでいたものの、おおむね1機種あたり数機から多くて10数機といった数でした。

 しかし、第2次世界大戦中盤以降、より複雑でかつ高性能な音響機雷や水圧機雷も登場するようになります。「音響機雷」とは船のエンジンやスクリューの音を感知して爆発するもので、「水圧機雷」は艦艇の航行時に発生する水圧によって爆発するものです。これら新型機雷には、海面上を飛ぶ飛行機では対処のしようがありませんでした。

 そのため掃海用の磁気リング付き飛行機は、第2次世界大戦で姿を消すこととなります。しかも機雷自体の高性能化が進んだため、そののち掃海作業は再び水上艦艇や水中処分員などが中心になっていきました。

 2020年現在、アメリカや日本などでは、ヘリコプターで機雷除去具を引っ張る掃海作業も実施されていますが、主流はやはり掃海艇や水中処分員です。