航空自衛隊のブルーインパルスはじめ、世界各国にはさまざまなアクロバットチームがあり、そしてその使用機体も実にさまざまです。最新戦闘機からヘリコプターまで、各チームが使用する機体やその背景などを見ていきます。

英仏のアクロバットチームが手を取り合って

 2020年6月18日、イギリス空軍のアクロバットチーム「レッドアローズ」と、フランス空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」が、ロンドンとパリの上空で儀礼飛行を行いました。

 この儀礼飛行は、第2次世界大戦でドイツに占領されたフランスから脱出した、のちのフランス大統領シャルル・ド・ゴールが、1940(昭和15)年6月18日にロンドンからフランス国民に対して、ラジオでドイツへの抵抗を呼びかける演説を行なってから80周年にあたることを記念して行なわれたものです。

 レッドアローズは、イギリス製のジェット練習機BAe「ホーク」、パトルイユ・ド・フランスはフランスとドイツが共同開発したジェット練習機の、ダッソー/ドルニエ「アルファジェット」をそれぞれ使用しています。

「ホーク」と「アルファジェット」は、戦闘機パイロットの訓練に使用することを想定して開発された練習機で、超音速飛行性能は備えていませんが、高い運動性と良好な操縦性を兼ね備えています。

ブルーインパルスもかつては超音速機を使用…なぜやめたの?

 世界には数多くのアクロバットチームが存在しますが、常時編成されている空軍のアクロバットチームの多くは、「ホーク」や「アルファジェット」のようなジェット練習機を使用しています。

 航空自衛隊の「ブルーインパルス」は2020年6月現在、「ホーク」や「アルファジェット」などと同様、戦闘機パイロットの教育にも使用されるT-4練習機を使用しています。それ以前は国産超音速ジェット練習機のT-2を使用していました。

 T-2は機体の規模に比べてエンジンの推力が小さかったため、高機動飛行を行なうと速度の低下が著しく、演技課目のあいだの旋回が1981(昭和56)年まで使用していたF-86F戦闘機に比べて大きくなってしまうため、演技に間延びした感があったといわれています。

 またT-2は超音速機であるが故に燃料消費量や騒音も大きく、こうした理由から亜音速のF-86Fが1960(昭和35)年から1981(昭和61)年までの21年間、現在の使用機である亜音速のT-4が1995(平成7)年から25年に渡って使用されているのに対し、T-2時代は1982(昭和57)年から1995(平成7)年までの13年間で幕を閉じています。

一方で超音速機を使用するチームも…なぜ?

 韓国空軍のアクロバットチーム「ブラックイーグルス」は、ブルーインパルスとは逆に、亜音速機練習機から超音速練習機に使用機を切り替えています。ブラックイーグルスは常時編成となった1994(平成6)年から2007(平成19)年まで、アメリカ製のA-37B「ドラゴンフライ」ジェット軽攻撃機を使用していましたが、2009(平成21)年からは国産の超音速ジェット練習機T-50B「ゴールデンイーグル」を使用しています。

 ブラックイーグルスは2018年の「シンガポール・エアショー」など、海外のエアショーにも積極的に参加していますが、これはT-50の輸出のプロモーションも兼ねているといわれています。

 ブラックイーグルス以外では、アメリカ空軍の「サンダーバーズ」、アメリカ海軍の「ブルーエンジェルス」、ロシア空軍の「ルースキエ・ヴィーチャズィ」と「ストリージ」、スイス空軍の「パトルイユ・スイス」、中国空軍の「八一飛行表演隊」などが、超音速戦闘機を使用しています。

 このうちサンダーバーズは2009年から、アメリカ空軍の現主力戦闘機であるF-16のブロック52仕様機、八一飛行表演隊も2009年から国産のJ-10戦闘機を使用しており、ルースキエ・ヴィーチャズには最新鋭機のSu-35S、ブルーエンジェルスも現在使用しているF/A-18C/Dを更新するF/A-18E/F「スーパーホーネット」の配備が開始されています。

 超音速戦闘機を使用するアクロバットチームの多くが、所属する軍の主力戦闘機を使用している理由のひとつは、韓国空軍のブラックイーグルスと同様、外国のエアショーで演技を披露することで、輸出を促進する狙いもあります。

ヘリコプターのチームほか変わり種チームもさまざま

 戦闘機やジェット練習機を運用するほどの予算のない空軍や、アクロバット飛行に適したジェット機を保有していない海軍のアクロバットチームは、海上自衛隊のT-5初等練習機を使用する「ホワイトアローズ」や、T-6「テキサンII」中等練習機を使用するイスラエル航空宇宙軍のIAFエアロバティックチームのようなプロペラ(ターボプロップ)機を使用しています。また、TH-480練習ヘリコプターを使用する陸上自衛隊の「ブルーホーネット」のような、ヘリコプターを使用するアクロバットチームも存在します。

 こうしたチームのなかで一番の変り種といえるのが、ヨルダンの「ロイヤル・ヨルダニアン・ファルコンズ」です。同チームはヨルダン空軍とヨルダンの航空会社であるロイヤル・ヨルダン航空が出資して設立した民間企業、アカバ開発会社の支援により運営される民間のチームですが、ヨルダンの航空技術を目的にフセイン1世前国王によって編成されたため、現在もヨルダン政府の公的なアクロバットチームと位置づけられています。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、世界のエアショーは軒並み中止となっていますが、再開された暁にはこうした背景を念頭に置いてアクロバットチームの演技を見ると、より楽しめるのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。