7つの道路が交わるという複雑な交差点が東京都大田区の住宅街に存在します。信号はありませんが、人々のゆずり合いによって「事故はない」とされている交差点、なぜできたのでしょうか。

細い道が7本集結 崩れる方向感覚

 いくつもの道路が交わる交差点は「多叉路」と呼ばれます。5叉路や6叉路は少なくありませんが、7叉路となると珍しいかもしれません。細い道が7本集結した、その名も「七辻」と呼ばれる交差点が東京都大田区の住宅街に存在します。

 位置は第一京浜(国道15号)東六郷1丁目交差点の東側。交わるそれぞれの路地と路地のあいだには、交差点ギリギリまで商店や住宅が立っています。交差点に進入すると複数の道路が斜めに分かれていくため、初見の人は方向感覚を失うかもしれません。

 この交差点は大田区南蒲田、萩中、南六郷、東六郷という4地区の境界をなしていることからも、古くから地域におけるひとつのランドマークになっていることがうかがえますが、傍らには以下のように、その成り立ちを説明した看板も設置されています。

「(交差点は)大正6年から10年の歳月をかけて行われた耕地整理によって完成したもので、そのころは、荏原郡六郷村子之神と呼ばれ、人家もまばらで水田と桃・なし・ぶどうなどの果樹を植えた畑が広がり、(中略)農家の大八車が時折通るだけで七辻の道路も当時としては道幅が広すぎ、その両側には名もない草花が生い茂っていた」

 そして時代が移り変わり、多くの人々が住むようになっても「思いやりのある心は受け継がれ、この地に事故はない」と結んでいます。交差点に面した看板の反対側には「日本一 ゆずり合いモデル交差点」との文字が。道路の優先関係がわかりづらい複雑な多叉路ですが、ここには信号がないのです。

 7本の道路のうち5本は、ここを起終点とした一方通行になっており、出口には一時停止線があります。双方向通行の2本は一時停止線の有無がわかれますが、通行した際には、クルマと鉢合わせて、向こうがゆずってくれる場面も。その複雑さゆえに慎重な運転となることが、ゆずり合いの気持ちにつながっているのかもしれません。