富山県高岡市では江戸時代から続く『伏木曳山祭』が17〜18日に行われます。この祭りにかかせないのが、高さ約8メートル、重さ約8トンにもなる曳山(ひきやま)です。この山車がぶつかり合う大迫力の神事が18日に予定されています。

一方、高岡市では、能登地震での液状化による深刻な被害が残っています。今回は地域外の見物客を規制し、祭りの規模自体も大幅に縮小しました。それでも開催の決断をした背景には、住民の切実な思いがありました。

■山場の“けんか山”に多くの客

祭りの始まりを告げるのは、神輿の行列。先導するのは、地元の小学生たちの武者行列です。18日は、約360個の提灯で飾られた曳山が町内に繰り出します。去年は13万人が見物に訪れました。祭り一番の山場は『けんか山』。重さ8トンにもなる曳山をぶつけ合います。港町として栄えた伏木を守る、海岸鎮護などの祈りが込められた神事です。

今年のけんか山は1カ所だけで、無観客に。引き回しの道のりも例年の4分の1です。先月の調査により、液状化で沈んだ電柱などが安全な巡行を妨げることが分かったからです。

規模が縮小されても開催する理由は、特別な想いがあるから。能登半島地震で最大震度5強を観測し、4600軒以上の住宅に被害が出た高岡市。多くの住民が悩まされたのが、地震の際に地盤が液体のようになってしまう『液状化現象』です。4カ月以上経ちましたが、町の至る所で液状化による被害は残ったままです。

■“心がふさがるなかで…”住民が寄せた思い

液状化の被害は家の中でも明らかです。高岡市に住む、田子さんの自宅には床の下に大きな穴が開いたためか、家は11センチ沈みました。震災から、多くの部屋の床が傾いたままに。開かなくなってしまった扉もあります。

田子良枝さん(76)
「孫たちも喜んでいるし。皆、今後の復興を願う気持ちでいるわけだからいいかなと。だんだんそんな気持ちになってきた」

いつもより規模が小さくても、住民にとってはうれしい祭りです。

祭りの参加者
「とってもうれしいです。大変な家もたくさんあって。去年通り曳山が出たっていうのはうれしいし元気が出ます」
「例年通りの気持ちでできるかと言われたら、正直そういう気持ちはあれなんですけど。もうやってきたので、明日は祭りとして楽しもうかなと」

祭りの主催者も想いは同じ…。

伏木曳山祭実行委員会 針山健史委員長
「曳山祭を一生懸命やることが、また地域にとって復旧復興の力になればいい」

伏木曳山車 脇田歩總々代
「祭りを後世に残していくためにも“震災に負けない伏木”を出していくためにも、できる範囲での祭をやると開催を判断した」