今後、減っていくことが懸念される皇族の数をどう確保していくのか。安定的な皇位継承のあり方をめぐる与野党の本格的な協議が17日から始まりました。

春の園遊会。天皇陛下と秋篠宮さまのほかは、全員女性です。そのうち、次世代を担う未婚女性は、愛子さま、佳子さま、三笠宮家の長女・彬子さま、次女・瑶子さま、高円宮家の長女・承子さま。

今後、結婚された場合、皇室典範の定めに従い、皇族の身分を離れるため、皇族の数は、先細りしていくことになります。一方で、皇族が担う公務は多岐にわたります。被災地の訪問や式典への出席、国際親善など、秋篠宮家だと、今年度に入ってからこなされた公務の数はすでに少なくても38件に上っています。

皇族の数が減少すれば、こうした公務の担い手が不足することや、天皇の国事行為を代行できる皇族がいなくなることも懸念されています。

そこで、17日から始まったのが、衆参の議長や、与野党の代表者による会議です。

皇族数の確保に向けて検討されている方法の一つは、女性皇族が結婚後も皇室に残る案。多くの党が賛同する意見を述べましたが、結婚後に生まれた子の身分をどうするかは、意見が分かれています。自民党は、女性皇族の夫や子には皇族の身分を与えないとする案を支持しています。これを現在の皇室にあてはめてみると、愛子さまは、結婚後も皇室に残り、さまざまな活動を続けることが可能になります。夫や子は皇族ではなく、一般国民として生活することになります。一方、立憲民主党は、夫や子にも皇族の身分を与えることも検討すべきだとの立場です。

そして、もう一つ検討されている案が、戦後間もなく皇室を離れた旧宮家の“男系男子”を養子縁組によって、皇族に復帰させるというもの。男系とは、父方をさかのぼると、歴代天皇にたどりつくことをいいます。多くの党が賛同する方向ですが、立憲民主党は、平等性の点で憲法に反しないか、整合性を検討すべきとしています。

にわかに動き出した議論。舞台となっているのは、衆院議長公邸です。その狙いは。
額賀衆院議長:「議長公邸という“きわめて静謐な環境”で第一回の総会が開かれました」

強調するのは「静謐な環境」。通常の法改正は、国会の多数派に従って行われますが、皇室制度の改正においては、より幅広い合意形成が必要との考えから、議長のもと、党派を超えた議論を目指すことにしたのです。
ただ、議長の額賀氏は、今国会での取りまとめを目指すとも明言。残された時間は多くありません。

立憲民主党・野田佳彦元総理:「このペースでは、とても無理じゃないか。なるべく早く合意ができるならいいが、そう簡単ではない」
国民民主党・玉木雄一郎代表:「お年頃になっているし、それぞれの人生もある。
ご本人の意見に配慮しつつ、結婚後も身分を残せる案については、今国会で成立させるべきと思います」
日本維新の会・藤田文武幹事長:「主政党につきましては、冷静に議論すれば、合意を見いだせる範囲ではないか」

今回、正面から議題されていない課題もあります。“皇位継承”をめぐる問題です。

愛子さまの誕生を受け、小泉政権が女性・女系天皇を容認する報告書をまとめたのは2005年のこと。ただ、女性・女系天皇については、自民党の保守派が強く反対し、議論は進みませんでした。現在、皇位継承資格をもち、次世代を担う男子は秋篠宮家の長男・悠仁さまだけです。今回の議論でも、あくまでも皇族数の確保を中心に議論が進められることになります。

これに対し、共産党は。
日本共産党・小池晃書記局長:「日本国民の統合の象徴である天皇、これを男性に限定する合理的理由はない。女性天皇・女系天皇についても正面から検討すべきと申し上げました」

今後は、週一回のペースで会議を開き、取りまとめに向けた議論を進めます。


◆皇族の役割についてですが、政府の有識者会議の資料によりますと、国事行為の臨時代行。天皇陛下が外国訪問で国内に不在のときなどに、天皇の代行として、国会の召集や栄典の授与などの国事行為を行う。皇室会議への出席、摂政、天皇が成年に達しない時などに国事行為を行う。さまざま式典への出席や、災害の慰問など、皇族の役割は多岐にわたるため、皇族数を確保する必要があります。
皇位継承の問題もありますが、今回はそれと切り離して、まず皇族数の確保を協議しています。

政府の有識者会議が、皇族数確保のために示した案です。
●女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する
●皇族には認められていない養子縁組を可能とし、旧宮家の男系男子を皇族とする(男系男子、つまり父方をさかのぼると歴代天皇にたどりつく男子)

現在、皇室にいらっしゃるのは17人。そのうち、未婚の皇族は愛子さまや悠仁さまを含め6人。
現行の制度では、女性は結婚後に皇族の身分を離れるため、将来的に悠仁さま以外の皇族がいなくなる可能性があります。

女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持するという案に対し、自民党は「必要」の立場です。そのうえで「女性皇族の配偶者と子は皇族の身分を持たず、一般国民としての権利・義務を保持し続けることが適切」としています。
立憲民主党は「賛成」の立場。一方で「配偶者と子が皇族の身分を持つ・持たない、両論で検討が必要」としています。

養子縁組を可能とし、旧宮家の男系男子を皇族とする案についてですが、現行の皇室典範では養子は認められていませんが、それを可能にし、養子となった男系男子が皇族になる。そして、この養子の対象と考えられるのが、戦後に皇室を離脱した11の旧宮家の男子です。

自民党は「必要」の立場。「養子は皇位継承資格を持たず、その後に生まれた男子が皇位継承資格を持つことが適切」としています。

立憲民主党は、「そもそも養子の対象を旧宮家の男系男子に限定することが憲法に反しないか、整合性を検討すべき」などとしています。

天皇制に詳しい名古屋大学大学院の河西秀哉准教授は「短期的に公務を担う皇族の数を増やす狙いは評価できるが、一方で課題は大きく2つある。1つめは、象徴天皇制のもとで、どれぐらいの公務が求められていて、それを担う皇族がどれぐらい必要かを議論すべき。2つめは、長期的・安定的な皇位継承についての議論。今のままでは、将来の皇位継承者が悠仁さましかいなくなる可能性がある。これについても早く議論を始めるべき」としています。