「何てまあ、忙しいんでしょ」そんな風に私が驚いていたのは月曜日、土曜にエイバル戦に駆り出されていた2人のカンテラーノ、リケルメとオスカル・クレメンテが深夜2時にマドリッドに到着した後、早朝にはイビサ(地中海にあるリゾートアイランド)に移動。正午から、リーガ2部Bのペーニャ・デポルティーボ戦でアトレティコBのスタメンとしてピッチに立ったというニュースを読んだ時のことでした。いやあ、19才のリケルメはイプルアでベンチ観戦していただけですし、1つ年上のオスカルの方は7分少々の嬉しいトップチームデビューを果たして気分も上がっていたと思いますけどね。どちらも雨ザーザーの中、2日間で2敗というのはなかなかの試練だったかと。

実際、奇跡でも起こらない限り、アタッカーの頭数不足に悩まされているシメオネ監督は木曜のコパ・デル・レイ32強対決でも再びカンテラーノたちを徴用する他なし。いやまあ、相手は2部Bのクルトゥラル・レオネサですから、それこそ慣れているレベルで実力をアピールできる、彼らにとっては願ってもないチャンスではあるとはいえ、とてもじゃないですが、今季の最重要課題になっているゴール日照り解消まで頼ることはできませんからね。ただ、似たような問題を抱えているマドリッドのチームは決してアトレティコだけではない訳で…。

ええ、せっかく12月から昇り調子になりかけてきた弟分のレガネスが大変なことになっていて、何と先週木曜にいきなりエン・ネシリをセビージャに売却。移籍金2000万ユーロ(約25億円)はもちろん、クラブにとって新記録となる高収入なんですが、アギーレ監督は寝耳に水だったよう。同じ週の月曜にはもう1人のFW、サビン・メリーノも河岸を変えており、まさにその移籍先のデポルティーボで2部首位のカディス戦に先発、柴崎岳選手のアシストで決勝ゴールを挙げるという皮肉な結果になったんですが、逆にレガネスの方は金曜の弟分ダービーで泣きを見る破目に。

ブタルケを満員にしたその試合、まあ、「コパ2回戦で敗退して、リーガも2連敗中。El equipo está dolido, el orgullo lo tenía tocado/エル・エキポ・エスタ・ドリードー、エル・オルグージョ・ロ・テニアン・トカードー(チームは誇りを傷つけられていた)」(ボルダラス監督)というヘタフェに八つ当たりされたようなところもあったんですけどね。前半12分にはCKから、カブレラのヘッドでここ13失点中9点目となるセットプレーによる先制ゴールを喰らうと、21分にはククレジャのクロスをニヨムにも頭で叩き込まれてしまいます。いやあ、レガネスに所属していた昨季も弟分ダービーで得点していた彼ですが、そのせいもあったんでしょうかね。

スタンドから、盛大なpito(ピト/ブーイング)を序盤から浴びていたのにテンションが上がり、最初はヘタフェのファンが集まっているコーナーとは反対側へ、当てつけのようにゴールを祝いに行っていましたが、そんなニヨンの様子を心配したボルダラス監督は、当人がイエローカードをもらっていたのもあって、30分には先日、ストークシティからレンタルで来たMFエテボと交代させることに。それでもヘタフェのプレーにはまったく影響はなく、その2分後にはエリア内までドリブルで上がったホルヘ・モリーナがゴール前でマタにパスして3点目をプレゼント。さすがに前半だけでここまで差をつけられてしまうと、レガネスもブライトバイテとカリージョだけではどうすることもできず、せっかくセルタ、エスパニョールと続いていたホーム連勝も途切れてしまいましたっけ(最終結果0-3)。

いやあ、アギーレ監督は「Soy el máximo culpable de la derrota/ソイ・エル・マキシモ・クルパブレ・デ・ラ・デロータ(この敗戦の一番の責任は私にある)」と言っていましたが、残留圏まであと勝ち点1と迫っていたこの試合の直前に今季、ようやくゴールづいてきたエン・ネシリを失ったのは士気的にチームに悪影響を及ぼしたのは明らかで、現在、クラブはFWの補強に奔走してはいるんですけどね。前節は18位だったマジョルカもスペイン・スーパーカップ準決勝でレアル・マドリーに手も足も出ず敗退、傷心のバレンシアに4-1と大勝し、差が勝ち点4に開いてしまったため、水曜のコパ32強対決エブロ(2部B)戦はともかく、日曜にワンダ・メトロポリターノを訪ねる兄弟分ダービーまでには何とか、新戦力を迎えられるといいのですが、こればっかりはねえ。

え、最下位のエスパニョールが先日、移籍金2000万ユーロで去年の夏、2部に戻った弟分ラージョからベンフィカに移っていたラウール・デ・トマスを獲得。ビジャレアル戦で早速ゴールを挙げ、2-1と勝利して、同じ勝ち点に並ばれてしまったのもレガネスにはショックだったろうって?そうですね、ただ、7位からEL出場圏内の5位に躍進したお隣さんも翌土曜には同様に電撃移籍の犠牲者になっていて、何とカブレラが契約解除金900万ユーロ(約11億円)を払って、エスパニョールに入団。こちらもまったくボルダラス監督の予定にはなく、いきなりCB兼左SBのレギュラーを失ったため、代役探しが急ピッチで始まっていますが、こうなると早期のコパ敗退により、2月後半のEL32強対決アヤックス戦までミッドウィークの試合がなくなったのが災い転じて福となる?

一方、日曜にサンティアゴ・ベルナベウでセビージャにpasillo de campeones/パシージョ・デ・カンペオネス(チャンピオンの花道)で迎えられ、足首のケガで試合には出ないセルヒオ・ラモスが私服でスペイン・スーパーカップのトロフィーを披露したマドリーはというと、いやあ、選手全員が一流だと、FWのゴール不足があっても問題ないんですかね。その日もサウジアラビアでの大会を欠場する破目になったケガが治ったベンゼマが復帰していながら、スタメンにはヨビッチとロドリゴを使い、ベイルもハメス・ロドリゲスも「Estaban un poco tocados/エスタバン・ウン・ポコ・トカードス(ちょっと不具合があった)」(ジダン監督)という理由で招集外となったにも関わらず、カセミロの2ゴールで勝ってしまうんですから、まったく羨ましい限りじゃないですか。

いえ、前半29分にはバネガのCKをデ・ヨングにヘッドで決められるというドッキリもあったんですけどね。でも大丈夫、すぐにVAR(ビデオ審判)が介入し、「Me he quedado parado y Militao ha chocado conmigo/メ・エ・ケダードー・パラードー・イ・ミリタオ・ア・チョカードー・コンミーゴ(自分が止まっているところにミリタオがぶつかってきた)」というグデリのプレーがファールとされ、ノーゴールとなったとなれば、セビージャ陣営の怒りは推して知るべしだったかと。

でもねえ、後半12分にヨビッチのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)からボールを受けたカセミロがGKバチリクを破って先制ゴールを挙げた後の19分、地面に倒れたムニルの肘がボールに触りながら、こちらはVARがハンドの反則をスルー。そこからデ・ヨングがボールを拾い、シュートを決めたゴールの方はスコアボードに挙がっているんですよね。要はこれでプラマイゼロですから、スポーツディレクターのモンチ氏が「Si anulan ese gol, lo mismo bajo al campo y saco al equipo/シー・アヌラン・エセ・ゴル、ロ・ミスモ・バホ・アル・カンポ・イ・サコ・アル・エキポ(もしあっちのゴールも取り消されていたら、ピッチに下りて、チームを試合から引き上げていた)」と息巻いていたのもどうかと。

ちなみに1-1になる間にマドリーはヨビッチとロドリゴをベンゼマとビニシウスに交代、同点になった後にセビージャはレガネスから移籍ほやほやのエン・ネシリをピッチに入れたりもしたんですが、最後は24分。ルーカス・バスケスのクロスをカセミロがヘッドで決め、チームを2-1での勝利に導くことに。彼が1試合2得点するのは初めてだそうですが、このところのマドリーはモドリッチ、クロース、バルベルデ、イスコとMFがよくゴールを挙げていますからね。

となれば、月曜にはアザールもいよいよ、2月1日のマドリーダービーでの復帰を目指し、バルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドでランニングを始めたようですし、エムバペ(PSG)など、大物FWの補強は夏の楽しみに取っておいて、この冬はフラメンゴから18才になったばかりの将来性有望な攻撃的MF、ヘイニエルをブラジルU23代表オリンピック予選が終了次第、マドリーとしては比較的安い3000万ユーロ(約37億円)でRMカスティージャに迎える程度で全然いい?

そんな彼らは、スペイン・スーパーカップ準決勝でアトレティコに負けた後、バルベルデ監督を解任、セティエン新監督体制で挑んだグラナダにメッシのゴールで1-0と勝ったバルサと同じ勝ち点での2位を維持。水曜午後9時(日本時間翌午前5時)には、コパの2回戦でデポルティーボを破ったウニオニスタス・サラマンカ(2部B)とピスタス・デ・エルマンティカで対戦するんですが、どうやらそこは4000人分しかスタンドがないようで、この一等賞を引いたクラブのソシオ(協賛会員)だけしか、試合のチケットも買えないのだとか。

まさに100メートルも離れていないお隣には1万7000人を収容できるエルマンティカ・スタジアムがあるんですけどね。そちらをホームとする、同じ2部BのサラマンカCFとはあまり仲が良くないため、会場を借りることはせず、マドリー訪問を楽しみにしている現地のファンのほとんどもTVで試合を見るしかないというのはちょっと、可哀そうですよね。

そして最後はエイバル戦でのアトレティコがどうだったかなんですが、いやもう、負傷欠場が事前にわかっていたジエゴ・コスタ、レマル、コケ、ヒメネスだけでなく、トリッピアーまでが恥骨炎で当日移動したチームに入らずち、トップチームのメンバーはどんどん減るばかり。おまけにこんな日に限って、「salir al campo durmiendo/サリール・アル・カンポ・ドゥルミエンドー(ピッチに眠ったまま出る)」という、クラブに染みついた伝統が発動してしまったとなれば、CKから、エンリッチが頭で流したボールをブルゴスに決められて、9分にはもう、1-0にされていたのも当然の報いだったかと。

これに関しては、シメオネ監督も「Tenemos que mejorar y entender que los partidos arrancan desde el inicio/テネモス・ケ・メホラル・イ・エンテンデール・ケ・ロス・パルティードス・アランカン・デスデ・エル・イニシオ(試合はキックオフから始まるということをウチは理解して、改善しないといけない)」、サウールも「Es un problema de los jugadores, individualmente de cada uno/エス・ウン・プロブレマ・デ・ロス・フガドーレス、インディビドゥアルメンテ・デ・カーダ・ウノ(これは選手たち、それぞれの個人的な問題)。試合に入り込めず、相手にチャンスを作られているのにギアを上げられない」と反省していたものの、その類いの言葉はすでに耳タコですからね。

それ以上にどうしてそうなるのか理解不能なのは、この日の彼らはロングボールを前線に放り込むサビッチやフェリペは仕方ないとしても、トマスを筆頭にエレーラ、ビトロ、コレア、左SBで先発したサウールまで酷い頻度でパスミスを連発。ボールが前に進むのはエイバルの選手に当たり、運良く味方の前に転がってきた時のみって、これってホントにサッカー?それともピンボール?

一応、気合を入れ替えた後半はボールポゼッションこそ上がったんですが、モラタにはほとんどチャンスが回らず、ここ数試合、当たっていたコレアも通常運転に戻ってしまってはねえ。必ず記事に名前が出る時には移籍金1憶2700万ユーロ(約156億円)の修飾語がつくジョアン・フェリックスも一向に目覚めることなく、終盤にはカンテラーノのカメージョと交代。ビトロもオスカルと代わり、最後まで点を取れないどころか、44分にはCKクリアから、エクスポシトに2点目を奪われ、これまで12戦10勝2分けだったエイバルに初黒星を喫してしまいましたっけ(最終結果2-0)。

うーん、セビージャもマドリーに負けていたため、順位は3位と変わらなかったものの、これでアトレティコは首位グループと勝ち点差が8。コスタの復帰にはあと1か月程かかるようですし、カバーニ獲得についてもオファーを500万ユーロ(約6億円)から1000万ユーロに上げるなど、まだPSGと交渉はしているようですけどね。とにかく早急にゴールを入れてくれる選手が現れないと、今季はCL出場圏内も危うくなるかも。そんな彼らは日曜にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でコケとコスタが並んで走る姿が目撃されたものの、おそらく同じメンバーで木曜午後9時からクルトゥラル・レオネサ戦に挑む予定。格下相手ですし、スペイン・スーパーカップ準決勝のバルサ戦を少しでも思い出してくれれば、何とかなるはずですが、今季のコパは一発勝負だけにちょっと怖いものがありますね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。