「このままずっと引きこもり生活が続くんだろうか」そんな風に私が怯えていたのは金曜日、とうとうスペインの新型コロナウィルス感染者が2万人の大台に迫り、死者も1000人を突破したというニュースを見た時のことでした。いやあ、先週土曜には政府が警戒状態を宣言し、不要不急の外出が禁止された時点ではまだ感染者も3,4000人程だったんじゃないかと思うんですけどね。それがあれよあれよという間に数が増え、この水曜には国家の一大事ということで、スペイン国王フィリペ6世の励ましメッセージがTV生中継されたりしていたんですが、一向に流行のピークが訪れる兆しもなし。

食料品などの供給不足は起きていないため、別段、暮らしていくのに不自由はないものの、薬局へ行ってもマスクやアルコール消毒液などは医療機関などへ優先的に送られるため、まったく売っていませんしね。発熱などがあっても電話相談では自宅待機を言われるだけで、余程の重症患者しか、検査してもらえないとなれば、実際の感染者はもっと沢山いるはずですが、おかげで一説によると、当初、26日に終わるはずだったこの警戒状態はセマナ・サンタ(イースター週間)後の4月12日まで延長される見込みだとか。

え、そんな中、最近はよく、7月の東京オリンピックは延期すべきという声がスペインのスポーツ選手たちから聞こえてこないかって?そうですね、コロナ蔓延の流れで3月上旬には五輪代表選手らが練習するCAR(国営スポーツ施設)が閉鎖となり、いえ、空手の型代表のサンドラ・サンチェスなどは「Tengo tatami y tengo al entrenador/テンゴ・タタミ・イ・テンゴ・アル・エントレナドール(ウチには畳があるし、コーチもいるから)」と、自宅練習になったのもあまり気にならないようだったんですけどね。

やはり大変なのは対戦相手や専用施設の必要な競技の選手たちで、リオ五輪バトミントン女子シングルスの金メダリスト、カロリーナ・マリンは「Ahora mismo no estamos en igualidad de condisiones con el resto del mundo/アオラ・ミスモ・ノー・エスタモス・エン・イグアリダッド・デ・コンディシオネス・コン・エル・レストー・デル・ムンド(今、私たちは世界の他の人たちと同じコンディションじゃない)」と、家ではフィジカルトレしかできないことを嘆き、同じく4年前にバタフライ200mで優勝した女子競泳選手のミレイア・ベルモンテもプールが使用禁止となり、本業の泳ぐ練習ができないことに「Mis rivales en Italia o Hungaria si estan en piscines/ミス・リバレス・エン・イタリア・オ・ウンガリア・シー・エスタン・エン・ピシーナス(イタリやハンガリーの私のライバルたちはプールにいる)」と怒っていましたが、そりゃそうですよねえ。

そこでウィルス陰性を確認された選手だけを集め、CARでおこもり合宿できないかとスペイン・オリンピック委員会に彼らが提案したところ、すでに5万5000台の簡易ベッドを運び込み、軍隊の協力を得て、臨時病院に仕立てる用意が進んでいるIFEMA(イフェマ/マドリッドにある大型国際展示場)のように、CARも病床不足解消のため、使用するかもしれないという返事を政府から受けたとなれば、もう今はスポーツなんて、かなり優先順位が下がっている?

一方、サッカーに関しては火曜に開かれたUEFAの参加55協会によるビデオ会議で6月12日に始まる予定だったユーロ2020が1年延期され、来年の6月11日から開催と決定。現在、16強対決2ndレグ4試合を残した時点でストップしていたCLもイスタンブールでの決勝を5月30日から6月27日に、16強対決1stレグ6試合が終わっただけのELもグダニスクでの決勝を5月27日から6月24日に変更となったため、ユーロと同じ期間にスケジュールされていたコパ・アメリカが1年延期となったことも併せ、前節から中断しているリーガも6月末までに何とか、残り11節を終えればいいことに。

ただねえ、問題はいつ再開できるかで、リーガ協会が見積もっている最短の日付は4月第4週のミッドウィーク。それまでに状況が改善していない場合は5月第1週の週末、もしくは第3週のミッドウィークからと言うんですが、いくらUEFAもCLとELの再開が遅れた場合、準々決勝以降は1試合対決で決勝までというシナリオを用意しているとはいえ、最悪の場合、7月までリーガが長引いてしまう可能性もなきにしろあらず。

というのもそうなると、レンタルを含め、6月末で所属クラブとの契約が終わる選手も多く、まあその辺はFIFAが特例を考えてくれているようなんですけどね。それ以外の選手たちにも1カ月のバケーションの権利があり、通常だとプレシーズン練習も1カ月ぐらいは必要なため、とてもじゃないですが、例年のように8月中旬に2020-21シーズンを開幕するなんてできないじゃないですか。

実際、来月末に試合が再開されるとしてもかなり期間が開くため、今は自宅で体を鍛えるぐらいしかできない選手たちにはミニプレシーズン練習が必要となるんですが、先週水曜のCL16強対決リバプール戦2ndレグ以来、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に足を踏み入れていないアトレティコでは各選手に毎日、家でこなすフィジカルメニューをビデオとメモで指示。手持ちのエクササイズマシーンに不足がある選手には機器の貸し出しも行っており、更にクラブの栄養士の作ったメニューによる、お昼と夜の2食を宅配しているのだとか。

丁度、水曜はスペインの父の日だったため、子供時代、ビセンテ・カルデロンに父親と一緒にアトレティコの応援に行った写真をインスタで公開していたモラタなど、アンフィールドで負ったハムストリングス肉離れのリハビリのため、電気治療器まで届けてもらったそうですが、感染の危険を避けるため、トレーナーがマッサージなどに訪れることはできず、全部自分でやらないといけないのは結構、大変かも。まあ、時間は十分ありますからね。全治1カ月と聞きましたが、この調子だと、リーガ再開までには十分、間に合うんじゃないでしょうか。

え、それよりバスケットボールチームに陽性の選手が出たため、政府の警戒事態宣言より早く、自宅待機に入っていたお隣さんではいきなり、ヨビッチが注目を浴びていなかったかって?その通りで、クラブの許可を得て今週は母国セルビアに戻っていた彼なんですが、外出を現地の警察に見つかり、告発されてしまったから、さあ大変!当人が言うには、「マドリッドでも、入国した時に受けた検査でも陰性だったし、スペインでは食料品の買い出しとかは行って良かった。だから、ちゃんと説明しなかった方が悪い」そうですが、モデルの彼女のバースデーパーティのために帰国したという噂もあり、最後はセルビアの首相にまでマイクの前で批判されているとは、まったく情けない。

そんなレアル・マドリーを含め、現在、ウィルス感染の恐れによる自宅隔離状態にあるチームはゼネラルディレクターの感染が判明した弟分のレガネス、3人の選手を含むクラブ職員15名が陽性だったアラベス、リーガが中断する直前にジローナまで、最下位脱出を期して合宿に行き、結局、1日で戻って来たところ、選手とスタッフに6人の感染者がいたというエスパニョール、そしてクラブ関係者の35%に被害が出ているバレンシアの5チーム。

いやあ、そのバレンシアは2月19日にCL16強対決アタランタ戦1stレグですでにコロナ禍の広まっていたイタリア北部ミラノにあるサン・シーロを訪れたため、そこから感染が始まったんじゃないかと言われているんですけどね。それを思うと、先週、まだUEFA判断の出る前、同スタジアムでのEL16強対決インテル戦1stレグのアウェイ遠征を断固として拒否したヘタフェのアンヘル・トーレス会長は本当に先見の明があったかと。

おかげで感染者の出ていないヘタフェは他の14チーム同様、政府の警戒事態宣言に従っての自宅待機で練習を中止しているんですが、リーガ協会が1部と2部の全チームに手配すると申し出たウィルス検査も「もっと必要としている人々がいる」という理由で、エイバル、オサスナ、バジャドリー、セルタなどは遠慮。そのため、実際、各チームにどれ程、感染者がいるのかも今は定かではありませんが…。

スペイン全土が#YoMeQuedoEnCasa(ジョ・メ・ケド・エン・カサ/私は家に留まる)のハッシュタグの下、飲食店や普通のお店が全てクローズして、皆が自宅に籠るようになってから、早1週間。相変わらず夜の8時には各地で人々がバルコニーに出て、医療関係者に感謝の拍手を贈るという習慣も続いていますが、早くも辛抱できず、不要な外出を見つかっての逮捕者は350人。罰金刑も3万1000件に上るようですし、いつまでもこんな状態が続くと、スペイン人の辛抱が切れてしまいそうなのは怖いですね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。