新型コロナウイルス(COVID-19)による中断期間を経て、再開するJリーグ。Jリーグ全試合を配信する「DAZN」と18のスポーツメディアがタッグを組んだ「DAZN Jリーグ推進委員会」では、「THIS IS MY CLUB -FOR RESTART WITH LOVE- Supported by DAZN Jリーグ推進委員会」の企画をスタートさせた。

超ワールドサッカーでは、大宮アルディージャのクラブアンバサダーを務めている塚本泰史さんにインタビューを実施。選手として、そしてアンバサダーとして在籍しているクラブについて、そして自身が病気を克服することに大きな力を与えたファン・サポーターへの想いを伺った。

取材・文:菅野剛史
写真提供:大宮アルディージャ

◆「今でもあの日の光景は鮮明に覚えています」

──アンバサダーという立場で、今回の新型コロナウイルスでのリーグ戦中断はどう受け止めましたか

「一言で言うと、まさかこんな風になるとは思ってもいなかった。サッカーは当たり前のようにある日常だと思っていたので、こんなにも試合がない毎日がすごくつまらないと言うか、刺激のない日常なのかなと感じています」

──約3カ月、試合が全くない状況を受けて、サッカーへの想いが強まったことはありますか?

「病気をして約1年間離れていた時期もあったんですけど、治療とかも当時は辛かったですが、乗り越えられたのはサッカーがあったからです。あの時はもうプレーはできませんでしたが、毎週ある大宮アルディージャの試合が凄く楽しみで、それに向けて頑張っていたというのもありました」

「今こんな状況になってしまって、サッカーを全然身近に感じられない状況になって、やっぱり生活の一部じゃないですけど、サッカーと共にずっと歩んで来たんだなという思いがあります」

──2010年に骨肉腫を公表された直後の開幕戦ではファン・サポーターからの大きな応援がパワーになったと思います

「全然公表せずにシーズンが始まり、クラブでも一部のスタッフしか知らないような状況でシーズンがスタートしてしまいました。選手も知らないですし、クラブスタッフも知らない。ましてや、サポーターの方も知らない状態でシーズンがスタートしてしまいました。迷惑をかけたというのではないですが、「泰史どうしたんだ」「なんでいないんだ」と言う声が挙がっていたので、自分の口から皆さんにお伝えしたくて、記者会見を開きました」

「その後、シーズン開幕を迎えて、まさかあんな風にスタジアムでサポーターの方が迎えてくれるとは想像もしていなかったです。3日後が手術の日だったんですが、あの日サポーターの方の声援がなかったら、前向きに強く立ち向かえていなかったのかなと思います」

「今でもあの日の光景は鮮明に覚えていますし、何か辛くなったり苦しくなったりした時には、いつもあの日のことを思い出して、「頑張らなくちゃな」と気持ちを奮い立たせています」

──当時は、他クラブのサポーターの方も横断幕を出したりと応援されていました。普通ではなかなか起こらない経験ですよね

「言葉では上手く表せないですが、本当に嬉しかったですし、不思議な気持ちじゃないですけど、他会場でアルディージャとは全く関係ない試合で、全く知らない選手のことを応援する、行動するというのは、ありえないですし、普通じゃ考えられないことでした」

「本当に嬉しかったですし、感謝してもしきれないくらい、あの日はNACK5スタジアム大宮以外のことを含めて、忘れられない1日になりました」

「病気した後もアウェイの試合にたくさん行かせてもらいましたが、どこの会場でもサポーターの方が声を掛けてくれて、あの時も、今も本当に力をもらっています」

◆「サポーターというよりは、ファミリーというか…家族みたいな存在」

──今も背番号「2」のユニフォームを着ている方がいたり、応援してくれる人も多いと思います。現在も力をもらっているということですね

「ホームゲームの時はいつもゲートに立たせて頂いて、ファン・サポーターの方をお出迎えさせて頂いているんですが、未だに2番のユニフォームを着てくださっているサポーターの方とか、当時僕の直筆の文字が入っているシリコンバンドを発売させていただいたんですけれども、そのバンドをまだつけて頂いているサポーターとか、たくさんの方に声を掛けて頂いています」

「今も本当に元気をもらっていますし、きっと多分言葉には出さないですけど、「応援しているよ」、「もう1回絶対ピッチに立ってね」という思いで、そういったグッズを身につけていると思うので、見るたびにもっと頑張らなくちゃなと思っています」

──2018年の浦和レッズとのOBマッチではNACK5スタジアム大宮のピッチに立たれました。当時の心境はいかがでしたか

「正直、僕が思い描いていたピッチとはちょっと違いましたけど、あの試合があると聞いた時から、それに向けて良いトレーニングができました。色々チャレンジしてきましたけど、その試合に向けてトレーニングを努力してきたというのは、今まで以上にありました。そういった面でも凄く良かったと思います」

「クラブも他のOBの方も僕に気を使って頂いて、先輩方が多くいる中で自分一人だけ後半2分からピッチに立たせて頂いて、本当に感謝していますし、あのピッチに立った時には、初めて公式戦でNACK5スタジアム大宮のピッチに立った時のような感覚でした。今まで辛いこととか苦しいこととかたくさんありましたけど、本当に頑張ってきてよかったなと思いました」

──チャレンジという点では、フルマラソンや自転車でのアウェイ遠征などがされていました。その際もサポーターが応援してくれていたと思いますが、大宮アルディージャのサポーターはどういった存在でしょうか

「僕はサポーターというよりは…仲間ともちょっと違いますね。アルディージャのサポーターというよりは、ファミリーというか…家族みたいな存在です。そばでいつも支えてくれているような感じです」

──選手にとってもファン・サポーターの存在は大きいと思いますが、今シーズンはリモートマッチや制限された中で試合が行われます。その影響は大きいと感じますか

「公式戦での無観客は経験したことがないのでイメージがあまり湧かないですが、閑散としているスタジアムというのはやってみないとわからないですけど、メンタルの部分やモチベーションの部分は難しいんじゃないかなというのは正直感じています」

「バスに乗ってスタジアムに近づくと、鼓動が高鳴るというか、段々と雰囲気が出てきて、サポーターの方も出迎えてくれて、気持ちが上がっていく部分があります。そういった面では難しいのかなと思いますね」

──アンバサダーという立場でも、普段入場ゲートで触れ合っている部分が無くなります。今シーズンはその辺りの接し方も難しいと思いますが

「言われてみれば確かにそうですね。ただ、今までと変わらず、笑顔で元気に明るく迎えたいなと思いますし、今まで会えなかった分、たくさん楽しんでもらって、サッカーのある日常というのを楽しんでもらいたいと思います。僕もそうですけど、クラブとしてもお客様に楽しんでいただけるようなスタジアム作りをしたいと思います」

──手話応援デーが「2020Jリーグシャレン!アウォーズ」で「ソーシャルチャレンジャー賞」を受賞しました。ピッチ外の活動が表彰されることはどう感じていますか

「クラブとしてはビジョンがあって、地域と共にというのも一つ掲げているので、そういった意味では凄く栄誉ある賞だと思いますし、地道に積み上げてきたものが結果となって表れたかなと思います。継続は力なりという言葉がありますが、小さな積み重ねが大切なんだなと改めて感じられました」

◆「必ず優勝して、J1に上がりたい」

──埼玉県出身で地元のクラブに入り、今はアンバサダーとして活躍しています。難しい状況は続きますが、今後地域とはどう関わっていきたいでしょうか

「2010年にアルディージャビジョン2020というのを立ち上げて、今年2020年を迎え、さらなる10年に向かっていきます。僕個人としては、チームが強くならないと全てが始まらないというか、チームが強くなることが何をするにも一番大事なことかなと思います。アルディージャがもっともっとビッグクラブになるには必要なことだと思います」

「選手にはただ戦うのではなく、プロの選手なので入れ替わりはあるのでしょうがない部分はありますが、チームのために、アルディージャのために、アルディージャの未来、将来を一緒に見据えながら、本気で戦ってもらいたいと思います」

「仕事柄、僕は子供たちと接する機会が本当に多いですが、子供たちにも「アルディージャを応援している」、「アルディージャのスクール入っているよ」、「アカデミーに行ってるんだ」と、胸を張って言ってもらえるようなクラブになっていきたいなと思います」

──近年は下部組織の選手が多く昇格し、他クラブからも元下部組織の選手が移籍してくるなど、クラブのアイデンティティという意味では非常に大きな動きを見せていると思います

「チームとしても地元出身の選手というのに力を入れている部分があります。大宮アルディージャに限っては、サポーターの層も地元の方が非常に多いクラブなので、地元の選手がいるというのは非常に応援しがいがあると思います。個人的にも地元埼玉県出身なので、もっともっとそういった選手が増えて、地元のために力を集結させて戦っていけたらなと思っています」

──今シーズンはJ1昇格というものを目指すシーズンです。改めて再開に向けた想いをお願いします

「このような状況になってしまって、みなさんストレスが溜まっているような日々が続いていると思います。再開して、スタジアムに来られるようになったら、溜まっていた力を思う存分ぶつけてもらいたいです」

「今までとは違うシーズンで難しいところはあると思いますが、必ず優勝して、J1に上がりたいなと思います。天皇杯もJ2で1位になれば出られるという方式に決まったみたいなので、色々苦しい辛い時期を過ごしている方もいらっしゃると思いますけど、今年一年良いシーズンだったなと思えるように、頑張っていきましょう」