◆後世に語り継がれるシーズンに
新型コロナウイルスによる前代未聞の事態に見舞われた今季のサッカー界。プレミアリーグも3カ月の中断を強いられた中、空前絶後の強さを誇ったリバプールが30年ぶりのリーグ優勝を果たした。1993年設立のプレミアリーグにおいては初制覇となり、結果的に様々な意味で歴史に残るシーズンとなった。

リバプールの優勝はシーズン半分が経過した時点で決まったも同然だった。開幕から破竹の勢いで勝ち点を積み重ね、第18節終了時点で2位のレスター・シティとの勝ち点差は「13」。チャンピオンズリーグ(CL)王者であるリバプールはクラブ・ワールドカップ参加による過密日程と長距離移動もあった中で、疲れを感じさせないパフォーマンスで第27節まで無敗を継続。そして、新型コロナによる中断明けの第31節で悠々と優勝を決めた。

一方、今季も優勝最右翼と見られていたマンチェスター・シティは意外にも苦戦。第5節で昇格組のノリッジに敗れるなど、思いがけないところで足踏みしたその原因は一重に守備にあった。センターバックは元々課題とされてきたが、頼みのDFアイメリク・ラポルテがヒザのケガでシーズンの半分を棒に振り、MFフェルナンジーニョを緊急登板する事態に。昨季は23失点に抑えた守備も今季は35失点に増加した。だが、今夏はすでにボーンマスからオランダ代表DFナタン・アケを獲得するなど、復権を目指す来季に向けて補強を進めている。

今季はリバプールの優勝が早々に決まった中、3位以下のCL出場権争いは熾烈を極めた。上述したように2位でシーズンを折り返したレスターをはじめ、チェルシーやマンチェスター・ユナイテッド、ウォルバーハンプトンが鎬を削り、さらには昇格組のシェフィールド・ユナイテッドも予想外の善戦を見せた。

そんな熱戦を3位で勝ち抜いたユナイテッドは、夏にDFハリー・マグワイアやDFアーロン・ワン=ビサカを獲得し守備を改善したが、開幕から不安定な戦いを続け、一時は8位にまで落ち込むなど低迷。スールシャール監督には解任報道も噴出した。しかし、冬の移籍市場で獲得したMFブルーノ・フェルナンデスがチームを一変させた。すぐにトップ下でポジションを掴んだポルトガル代表は加入後14試合で8ゴール7アシストの成績を残し、チームは第25節から無敗を継続。コロナ明けはMFポール・ポグバやFWマーカス・ラッシュフォードらが復帰したことで勢いに拍車がかかり、最後はレスターを直接下して3位の座を射止めた。

そのユナイテッドと同勝ち点で4位に滑り込んだのがチェルシーだ。絶対的エースだったFWエデン・アザールを失った中、補強禁止処分でその穴を埋めることができなかったロンドンの雄は、レジェンドのフランク・ランパードを指揮官に据え新シーズンを迎えた。新監督はアカデミー出身の若手を積極採用し、FWタミー・エイブラハムやMFメイソン・マウントらを次々とトップチームデビューさせたが、指揮官も含めて経験値の低いヤングチームは調子の波が激しく、一度流れを失えば軌道修正出来ない試合が散見。それでも、今季で退団となるMFウィリアンやFWオリヴィエ・ジルーなどベテランの活躍も目立ったチェルシーが、なんとか4位で来季のCL出場権を手にした。

惜しくもCLを逃す結果となったレスターは前半戦は快進撃を見せていたものの、MFウィルフレッド・エンディディが負傷した中盤戦辺りから勢いは急降下。とりわけ再開後は9試合で2勝しか挙げられず、安泰と思われていたCL出場圏内からズルズルと引き摺り落とされていった。そんなレスターだが、歴史的なシーズンの一助になった試合がある。それは昨年10月に行われたサウサンプトン戦。レスターはアウェイながら9得点を挙げる大勝を収め、イングランドの131年のフットボール史において初めて、アウェイで9得点という大記録を打ち立てた。また、今季得点王のFWジェイミー・ヴァーディとFWアジョセ・ペレスがハットトリックを達成しており、1試合で2人が3得点以上したのは2003年5月以来2度目の快挙となった。

台風の目となったウルブズとブレイズはコロナ明けから失速。特にブレイズは3勝しか挙げられず最終的に9位に後退した。そんな2チームを躱して6位でフィニッシュしたのがトッテナムだ。昨年11月に成績不振に陥ったマウリシオ・ポチェッティーノ監督と袂を分かち、後任に選んだのはスペシャル・ワン、ジョゼ・モウリーニョ。しかし、プレミアリーグを熟知する智将もすぐに結果を出すことは出来ず、FWハリー・ケインやFWソン・フンミンの負傷離脱に悩まされ、連勝もままならないまま中断期間へ突入した。だがこれが転機となり、ケインが長期離脱から復帰したチームは、再開後は5勝3分け1敗という好成績で巻き返し6位に浮上。来季のヨーロッパリーグ(EL)の予選参加権を得ることになった。

トッテナムよりさらに厳しいシーズンを過ごすことになったのが、同じノースロンドンのアーセナルだ。トッテナム同様にこちらも成績不振で前任のウナイ・エメリ監督を解任し、クラブOBのミケル・アルテタを招聘。シティでジョゼップ・グアルディオラ監督の右腕を務めていたスペイン人指揮官は、8位で就任初年度を終えたものの、FAカップを制覇するなど来季以降に向けて土台を構築した。

なお残留争いでは、ノリッジの降格が早い段階で決まったが、残り2枠は最終節まで未確定だった。可能性があったのはアストン・ビラ、ボーンマス、ワトフォードの3チーム。17位で最終節に突入したアストン・ビラは、16位のウェストハムとドロー。18位のワトフォードの相手は無情にもアーセナルで、善戦したものの惜敗。そして、19位だったボーンマスはエバートンに勝利したが、アストン・ビラに勝ち点「1」及ばず無念の降格となった。

【最優秀選手&監督】
★最優秀選手
◆ジョーダン・ヘンダーソン(リバプール)
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新王者の主将が今季のMVPだ。2015年にレジェンド、スティーブン・ジェラードから腕章を受け継ぎ、普段は誠実さや勤勉さ、試合中は闘争心をむき出しに周りの選手達の鑑としてチームを統率するヘンダーソン。チームの中では最古参で“クロップ産”の選手ではないが、むしろそんなクロップ監督が信頼するからこそ、全て選手がヘンダーソンの鼓舞に耳を傾けた。2011年の加入から苦節9年、度重なるケガも乗り越え、ようやく念願のタイトルを手にした。

★最優秀監督
◆ユルゲン・クロップ(リバプール)
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最優秀監督はリバプールを30年ぶりの栄光に導いたドイツ人指揮官で間違いないだろう。2015年の就任から一貫したスタイルを浸透させ、チームを土台から作り上げたクロップ監督は、弱点を的確に補強するフロントの協力も得ながら、完全無欠のチームを完成させた。昨季は勝ち点「97」を積み上げながらも1ポイントに涙を飲んだが、今季はそれを上回る勝ち点「99」でライバルのマンチェスター・シティを大きく上回り完全優勝。また、クラブ・ワールドカップも制覇し、5年で名実ともに世界一となった。

【期待以上】
★チーム
◆マンチェスター・ユナイテッド
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シーズン前半に躍進したレスター・シティも見事だったが、より重要な後半戦に目を向けた時、見事にチャンピオンズリーグ出場権を逆転で勝ち取ったマンチェスター・ユナイテッドを選びたい。前述したようにマグワイアやワン=ビサカを獲得しただけに前半戦の成績は期待外れだったが、B・フェルナンデスを獲得した後半戦は目を見張るものがあった。また、今季は若手の成長も目覚しく、スウォンジーから獲得したMFダニエル・ジェームズや生え抜きのFWメイソン・グリーンウッドの活躍は今季のユナイテッドを支えた中心選手だった。

★選手
◆MFブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)
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そして期待以上の選手は間違いなくこの男だろう。トッテナムも獲得に動いたというポルトガル人MFは、誰でも難しいとされるプレミアリーグに難無く適応。チームにスピードと創造性をもたらし、一撃必殺のパスやシュートの飛び道具で攻撃を牽引した。クラブ史上7人目の快挙となった2カ月連続での月間MVP選出は、B・フェルナンデスがいかに優れた選手かの証。涙まで流したというユナイテッド加入初年度はCL出場の大団円となった。

【期待外れ】
★チーム
◆アーセナル
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FAカップを獲ったとはいえ、納得のいくシーズンではなかったというのが正直なところ。統率力の乏しかったウナイ・エメリ監督を解任し、クラブOBのミケル・アルテタにカリスマ性を求めたが、緊急でチームを立て直すには経験がまだ浅かった。試行錯誤をする中で、チームは10月下旬から年末にかけての12試合で1勝しか挙げられない時期も。シーズン前に獲得したFWニコラ・ペペやDFキーラン・ティアニーの覚醒は来季に持ち越しとなった。


★選手
◆ダビド・ルイス(アーセナル)
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そんなアーセナルにおいて、ダビド・ルイスは評価が分かれる存在だ。夏に800万ポンドという手頃な移籍金でチェルシーから加入し、心許ない守備陣の中で最多の32試合に出場した。だが、一定の評価はあるものの、ベテランらしからぬイージーミスが少なくなかった。その実、今季のプレミアリーグにおいてPKを与えたのはなんと5回。リーグ史上ワースト記録で足を引っ張ってしまった印象だ。