横浜市戸塚区の団地・ドリームハイツで生まれ育ち、現在も地元を拠点に活躍するヒップホップユニット、サイプレス上野とロベルト吉野(以下、サ上とロ吉)。結成20周年を迎え、7月1日(水)には豪華アーティストを招いたコラボEP「サ上とロ吉と」を発表する2人に話を聞いた。
——ニューコラボEP「サ上とロ吉と」には、横浜をモチーフにした曲もあります。横浜を代表する世界的なレゲエクルーMighty CrownよりSAMI-T(以下、サミー)さんが参加した「YOKOHAMA SKYWALKER feat. SAMI-T from Mighty Crown、AISHA」も収録します。
上野 Mighty Crownとはまだコラボできていなかったんですけど、サミーさんに「せひお願いします」ということになって。
——意外ですけど、初なんですね。
上野 イベントとかでは一緒になったりしたこともあるんですけどね。前にFIRE BALLのリーくん(CHOZEN LEE)が主催する年末のカウントダウンのイベントに出たことがあって、リーくんが「次のやつらは、すげえヤベエから。横浜レゲエ祭(Mighty Crown主催)絶対出られるやつらだし!」っていう振りをするもんだから、フリースタイルで「レゲエ祭に出してくれ!」ってステージ上でやったんですよ。そしたら楽屋でサミーさんに超怒られました。「Mighty Crownの敷居は、そんな甘いもんじゃないんだよ」って。リーくんには「ええ、なんで怒ってるの?絶対出られるよ」って慰められたんですけど。リーくん天然だから(笑)。そのあと、山下公園にみんなで初日の出を見に行って誓いましたよね。「まじで見返してやる!絶対!」って。
——いい話です。そういうエモさが迫ってくる曲ですよね。
上野 ああ、そうエモい。俺のパートが録り終わったあとに、サミーさんがイントロにセリフを追加してくれたんですけど、それも「おお!」ってなりました。でも、録り終わるまではめちゃくちゃ怒られてましたよ。俺とサミーさんの関係性自体、そういうところもあるんですけどね。3回スタジオから帰されましたから。
——帰された?
上野 そう。元町のMighty Crownのスタジオで録ってたんですけど、「まだまだフローいけるだろう」「お前もっとバイブス入れろよ」とかって。ふたりでミーティングして、「やり直します!」ってドリームハイツに帰って歌詞を書き直すみたいな。そして、再びスタジオに行ったら、「まだいける!」って帰されるっていう。何回もやらせてるだけじゃないかって疑惑もあったんですけど(笑)、完成したらやたら感慨深いという。
——追い込んだ成果が出ましたね。
上野 そうですね。レコーディングでストレスたまるじゃないですか。川を見ながらチクショーとか思ったり、そのころ、買物とかは普通にできる状況だったんですけど、「フクゾー」とか行って「やっぱ、横浜はこれだよな」ってすげー高いカーディガン買っちゃうみたいな(笑)。
吉野 「フクゾー」行ったんだ(笑)。
——ストレス買い(笑)。
上野 横浜トラディショナルとして、上島竜兵みたいなハンチングとか買ったりして。自分に言い聞かせる感じはありましたね。「俺は横浜、俺は横浜」みたいな。
——なるほど。ルーツもすごく感じられる曲ですよね。
上野 そこもサミーさんに指摘されて。「お前はいろんなことをやってきて、横浜のすみっこから吉野とやってきてさ、MACCHOの弟子みたいなものだけど肩並べてんじゃん」とか「ラッパーでエフヨコ(Fm yokohama)のレギュラーやってるやつだっていねえじゃん」とかってほめてくれはするんですよ。「でも、そういうことも強気で言わないのもよくない」って言われたりもして。エフヨコの番組やってる休憩中に、サミーさんは収録かなんか来てたみたいで、いきなり肩パンされて「お前歌詞書いたのかよ!」なんてこともあったな(苦笑)。横浜は誰に会うかわかんないから、いつ何時でも気を抜けない街です……。
——参加されているR&BシンガーのAISHAさんも横浜ですよね。
上野 そうですね。シンガーを誰か入れたいってなったときにAISHAいいなって。この曲は横浜出身のシンガーがいいなっていうのがあったし、AISHAのことも昔から知ってるんで。
——横浜ってそういう結束がすごいし、横浜のまま天下とってやるって感じもあって。そのままのスタイルでオーバーグラウンドでも活躍するというか。
上野 すげえ根っこがハードコアな気持ちの人たちが多いのに、キャッチーなのかな。それは横浜の街と同じようなところがありますよね。
——かっこ悪くならないセンスがあるというか。
上野 俺ら、泥臭いけどね。でも、そういうセンスの部分は先輩方からずっと学び続けていることでもありますね。クレイジーケンバンドもなんでもチャレンジするじゃないですか、それがダセエってならない。なんでこんなにずっとかっこよくいられるんだろうって思います。
——続いて、「Uptown Anthem feat. 碧棺左馬刻(from「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」)」は、今、大人気の音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」(以下、ヒプマイ)からヨコハマ・ディビジョンの碧棺左馬刻をフィーチャーしていますね。
上野 ヒプマイは、立ち上げの時から参加しているんですけど、横浜の街のことだったんで、一抹の不安がありつつもやってみたんですよね。これまでもラップっぽいものを作ってやっている企画ものってあったと思うんですけど、ヒプマイの(楽曲)作家陣は仲間ばっかりだし、ここまで本気でヒップホップやるんだったら、俺らもそりゃ負けてられないなってやってきました。
——今回は、初めた当初とも違うと思いますが、ドープな曲になりましたね。テーマのようなものはあったんですか。
上野 俺たち的にも相当ドープな曲になりましたね。左馬刻って、いわゆるキャラだけど、キャラとコラボしてるというより、一緒に生きてるみたいな感じでクロスするっていうか。実際に存在している感じで、ラッパー同士、遠慮なくやったらおもしろいだろうなって。トラックメイカーのHyperJuiceのharaと、左馬刻の声優・浅沼晋太郎さんとは「今度飲み行こう」ってよく言い合うような関係性だったんで、曲はスラスラできましたよね。それに合わせてもらって、吉野のスクラッチを入れてるんですけど、曲がドープだし、わかりやすいけどハードになったよね。
——わかりやすいけどハードって難しくないですか。
吉野 そうですね。スクラッチのやり方って、新旧いろいろあるんですけど、曲にはめる場合やりすぎてもダメだし、曲の感じに沿うようにハードにやるって難しいんですよ。ヒップホップのスクラッチって考えて、90年代のスクラッチのはめ方を前面に出しているんですけど、それプラスで何か自分のやりたいこだわりをミックスさせるのは考えさせられましたね。あまりにわかりやすすぎてもなってところもあるし。
上野 そこは意地だよね。できてからまた変える場面もあったしね。
——気合いの1曲という。「メリゴ feat. SKY-HI」もgrooveman Spotさんのリミックスで、今感のある音になってて楽しめましたが、豪華で最高の1枚でした。
上野 そうですね。今作はお祭り騒ぎのコラボ作品になったので、パーソナルに寄り添ったオリジナル作品も作りたいなと思っています! とりあえず、今はライブができないし、企画してた周年イベントも飛んじゃったんで、そっちは、できるようになったら再構築していこうかなと。
——最後に、毎回お聞きしているのですが、おすすめの神奈川のスポットも伺えますか。
上野 戸塚駅「サクラス戸塚」裏に飲み屋街みたいなのがあるんですけど、そこ、おすすめですね。焼き鳥店とかいろいろあって。そこに「居酒屋 竹」という店があって、そこは酒も豊富だし、ブリがめちゃめちゃ旨い。
吉野 横浜駅西口の町中華「龍王」か「きそば鈴一」ってそば店かな。レコードとか買いにいくときに、必ずどちらかに寄って帰ります。「鈴一」は外でも食べられるので、ソーシャルディスタンスも保ちながら……「龍王」も最高なんですよ。「本日の感謝麺」とかあって。相鉄線沿いの川があるんですけど、休憩できるポイントがあって、そこもおすすめです。

【構成・取材・文=古城久美子/撮影=後藤倫人】