歴史ある洋菓子製缶メーカー・大阪製罐(せいかん)株式会社が展開しているブランド「お菓子のミカタ」。60年以上培ってきた製缶技術を活かし、目を引くお菓子缶を洋菓子店に提供している。そんなお菓子缶が、SNSで「かわいい!」と話題に。今回は、ブランドを立ち上げた3代目社長の清水雄一郎さんに話を聞き、唯一無二のかわいさを誇るヒット商品の秘密に迫った!

■全部集めたくなる!かわいいお菓子缶コレクション

"心を動かす缶"をコンセプトにデザインされたお菓子缶は、どれも心踊るかわいさのものばかり。なかでも、累計20万個の注文を受けたという「ビジュー缶」が圧倒的な人気を誇っている。

「『かわいい!』『きれい!』という感情が、人の心を動かすと思っています。ビジュー缶は、本当に宝石が埋め込まれてるんじゃないかと思ってもらえるよう、エンボス加工(絵を浮き彫りにする加工)や色使いを試行錯誤しながら作り込みました。手に取ってもらった方に『え、ウソでしょ、缶なの!?』って思ってもらえるように、常に"遊び心"も忘れないように心がけています」と、清水さん。

ビジュー缶のほかにも、繊細でかわいい白の花がいっぱいにあしらわれた「ブーケ缶」や、おとぎ話のような世界観で作られた「すずらん缶」なども好評だそう。

そのほか、チョコレートをイメージした「ショコラ缶」や「フェアリーテイル缶」などは、モチーフのイメージや質感が見事に表現されている。

数々のお菓子缶を作ってきたなかでも、特に清水さんの思い入れが強いのが「太陽と月缶」だそう。

「ステンドグラスをモチーフに、細かな凹凸のあるサテン材を使って太陽と月のキラキラ感を表現しました。常々、それぞれに照らすべき人や世界があり、互いに影響し合う太陽と月の関係が素敵だと思っていて。遠く離れた大切な人と『お互い頑張ろうね!』と励まし合えるようにと、キラキラした輝きにそんなメッセージを込めて作りました」

■洋菓子店に新たな風を巻き起こした「お菓子のミカタ」

14年に新事業としてスタートした「お菓子のミカタ」。それまでは「大阪製罐株式会社」で商品作りを手伝ってきたが、製造ロットが3000缶以上と在庫リスクを恐れて断念する洋菓子店も少なくなかったそう。そこで清水さんは、在庫リスクを抱えることなく気軽に缶というパッケージを使ってもらえるようにと、個人商店向けに最低注文個数を50にした。さらに"心を動かす缶"というコンセプトのもと、デザイナーに依頼し、デザインにもこだわった。

「最初は、かわいくデザインされた缶が50個から買える、ということを洋菓子店に知ってもらうことに苦労しました。そもそも町の洋菓子店で使われているパッケージに"缶"という選択肢がありませんでしたし、そんなサービスをやっている会社がなかったので。とにかく全国の洋菓子店にダイレクトメールやニュースレター、SNSで発信し続けました。地道な努力を続けた結果、最近ようやく僕らの存在に気づいてもらえるようになって。今はデザインの種類も30種を超えています」と、清水さん。

今では、大阪・天満の「コバトパン工場」や西大橋の「パティスリージャンゴ」など、人気店のクッキー缶に「お菓子のミカタ」の商品が使われている。

「『お菓子のミカタ』の缶にお菓子を詰めて販売したら、売れすぎて製造が追いつきません」や、「缶目当てで買いにこられたお客さまにリピート購入してもらえました」など、商品を使ってくれた洋菓子店からたくさんの反響が届いているのだとか。

なかでも、清水さんが特に印象に残っている出来事があるそう。

「開店から売上が伸びず移転や縮小を考えていた洋菓子店が、試しに僕たちの缶を使ってくれたんです。すると、商品が飛ぶように売れ出したそうで。メディアにも取り上げられ、注文の予約が半年以上先まで入り、店の経営ができるようになったという話を聞いた時はとてもうれしかったですね。僕たちの仕事は、ただ缶を作るだけじゃないんだなと。これからも"お菓子のミカタ"という名前に沿った仕事を続けていきたいです」

■「お菓子屋さんのために」が原動力に

昨年10月には東京・恵比寿に「お菓子のミカタ TOKYO KO BOH!!」をオープンさせた。店内では、「お菓子のミカタ」の缶を使っている全国の店の洋菓子が月替わりで並び、購入できる。

初めて東京を拠点にしたショップを展開するだけでなく、今年9月には、コンペイトウメーカーの大阪糖菓とコラボした、コンペイトウ入りの缶「ボンボニエール缶」を作った。

「いつも洋菓子店の仕事を知れば知るほど、すばらしい仕事の裏には大変な苦労があることに気付かされます。その苦労が少しでも軽くなればと思い、お菓子屋さんに商品を卸せるよう、初めてお菓子からプロデュースし、商品作りにチャレンジしました」

ほかにも、「お菓子の缶工場を眺めながら、コーヒーが飲めるスペースも作りたい」と話す清水さん。「みんなが一緒に楽しめるものを、世の中に投げ込んでいきたいと思っている」という。

「食べる人に喜んでもらいたい」という思いが込めて作られるお菓子を、さらに思い出深いものにするために生まれたお菓子缶。今後も清水さんは、お菓子店のためにチャレンジを続けていく。

取材・文=左近智子(glass)