11月6日(金)から放送を開始する新番組『片っ端から喫茶店』(24時46分〜、テレビ大阪)。喫茶店の数が日本一という大阪で、番組名のとおり"片っ端"から街中の喫茶店を紹介していく番組だ。出演者は、2017年に社会現象となった映画「カメラを止めるな」で快演を披露した女優のどんぐりさん。

本番組では、どんぐりさんが各店の名物を味わいつつその歴史に触れ、最後に店で読むのにおすすめの文庫本を紹介してくれる。そんなニッチだけどユニークな番組が始まると聞きつけ、今回、同番組のロケに密着。どんぐりさんやプロデューサーがこの番組に懸ける思いも含め、裏側をレポート!

■歴史を感じさせるコーヒーにどんぐりも「初めての味!」

記念すべき第1回目のロケで訪れたのは、大阪・本町にある「平岡珈琲店」。大正10年に創業し、約100年続く歴史ある珈琲店だ。「千葉の木更津で家業の醤油醸造所を継いだ祖父が、東京で出会ったコーヒーに魅せられ、大阪の北船場でコーヒー店を開くこととなったのが始まりです」と、オーナーの小川流水さん。今はこの店の味に惚れ込んだという、アメリカ生まれの旭堂南春さんもカウンターに立ち、2人で店の歴史を紡いでいる。

名物は、焙煎度合いの異なる4種の豆をブレンドした「百年珈琲」。コーヒー豆を鍋で沸騰させてから天竺木綿で漉す「ボイリング」という、創業時から変わらぬ製法で淹れられている。普段からコーヒーが大好きというどんぐりさん。店主自慢の一杯を飲み、「最初は苦味もあるんですけど、口の中に入れると苦味が消えて、フルーティーな香りが追いかけてきます。こんなコーヒー初めて!」と、今までに出会ったことのないコーヒーの味わいに大興奮の様子。

続いて、店主おすすめの「自家製ドーナツ」もいただくことに。ひと口食べたどんぐりさんは、「歯ごたえはしっかりしているのに、噛む度に柔らかくほどけていく」と、またもや大絶賛。国産小麦粉にこだわり、綿実油でさっくりと揚げたドーナツはすべて手作りされているため、1日70個限定なんだとか。「祖父が銀座の『カフェ・パウリスタ』のドーナツの味に感動して、出来上がったと聞いています」と、小川さん。百年珈琲との相性もピッタリなんだそう。

最後に、どんぐりさんが推薦した文庫本は「なんたってドーナツ 美味しくて不思議な41の話」。村上春樹や江國香織など、名作家が文章を寄せたアンソロジーだ。

作中には、平岡珈琲店のドーナツの原点となった「カフェ・パウリスタ」も登場する。本を片手に、店の歴史に思いを馳せながら、百年珈琲の深い味わいに浸ってみたいものだ。

■「喫茶店はホッとできて、癒される場所」

今回、新番組がスタートするにあたって、どんぐりさんが番組に寄せる思いを聞いた。まず、初めてのロケを終えた感想を聞くと「楽しい!」と、目を輝かせながらひと言。

「番組のオファーをもらった時も二つ返事でした。コーヒーが大好きで、よく喫茶店を巡るんです。雰囲気を見てふらっと入ることもあれば、看板に書かれた"限定"や"特製"の文字に引き寄せられることもあります(笑)。最近はセリフを吹き込んだ音源を聞きたい時や、やりたいことを整理したい時に喫茶店を利用しますね」

仕事ややるべきことに没頭したい時はもちろん、自分の時間を持つために喫茶店でまったりと過ごすこともあると言う。

「喫茶店はホッとする場所。コーヒーには、飲むだけでリラックスさせてくれる、不思議な力があると思うんです。平岡珈琲店さんもですが、どのお店も"儲かったらいいわ"っていう気持ちで始めてるんじゃなくて、すべてこだわって作られますよね。そんな店主の思いが今に繋がっている。喫茶店は、そういう店主のこだわりや思いが伝わってくるので、暖かい気持ちにさせてくれるんです」と、喫茶店の魅力を語ってくれた。

番組最後には文庫本を紹介してくれる本番組。特にエッセイが好きだというどんぐりさんに、心に残っている本についても聞いてみた。

「とあるお坊さんが書かれた本をたまたま手に取ったんです。そこに書いてあった"人生に無駄な時間は何ひとつない"という一文がとても心に響いて。一日中寝て、起きたら晩になっていたようなときもあるけど、そんな日も後悔しなくていい。自分が無駄と思ったことも無駄じゃないと思えるようになりました。本ってすごいですよね、何万冊とあるなかからたまたま出会って、さらに読むタイミングによって感じ方も違う。本も出会いですよね」

喫茶店にも、その日の気分でふらりと入るというどんぐりさん。喫茶店でも本でも、どんぐりさんは人生において"出会い"を大切しているのだろう。

どんぐりさんは最後に、「中高年の方はもちろん、若い方にも見ていただいて喫茶店に癒されて欲しい。歴史や伝統ある店の雰囲気と味を楽しんでもらいたいですね。そこで本を読むことで、たくさん自分の時間を見付けるきっかけになれば」と、視聴者へメッセージを送ってくれた。

■大阪の喫茶文化を地上波放送×YouTubeで発信!

同番組ではどんぐりさんのほか、事故物件に住み続ける芸人の松原タニシさん、インフルエンサーの華さんが出演する。2人に関しては、地上波ではなくYouTubeで限定配信される予定だ。本番組では、地上波と動画配信という両方向から切り込む。

本番組のプロデューサーである茂野悠介さんは、自身が喫茶店好きということもあり、本テーマでの番組製作に挑戦したいとずっと胸に秘めていたそう。

「私の場合、小さい頃に親に連れられて行った喫茶店はどこか古くさいという印象でしたが、20代になるとそれが逆におしゃれなのでは?と思うようになりました。前職は東京に勤務していて、そこで"喫茶店王国 東京"と題して番組をやりたいって思っていたんです。ところが、よくよく調べてみると、喫茶店の数が日本一だったのは大阪で。地元やん!って(笑)。じゃあ東京じゃなくて、地元の大阪でやらないと損だなと思い、そのタイミングで転職で大阪に戻り、2年越しの思いが今回叶いました」

だが、喫茶店という万人に受け入れられるテーマではありきたりになってしまう。

「ニッチなところを攻めたいと思っていたので、少しクセのあるタレントさんをキャスティングしました。どんぐりさんは本を紹介、松原タニシさんは怪談話を披露、華さんはひたすらかわいい写真を撮るという、喫茶店とタレントさんの個性を掛け合わせることで、異彩を放つ番組になればと。その意外性を楽しんでもらいたいですね」

また、撮影前にはタレントに店の情報を伏せて、ロケに行ってもらう工夫をしているそう。

「タレントさんは店の情報を知らないからこそ、店主から語られる言葉にストレートに反応してもらえる。それがきっと、お客さんの素直な反応だと思うので、視聴者の方にもお客さん目線で楽しんでもらえると思います。今後はもっと下町感のある、蒲生四丁目や空堀商店街あたりを攻めていきたいですね」と、茂野プロデューサー。

今回ロケに同行し、心から楽しんでいるどんぐりさんを見て、店主が笑顔をこぼしながら店のこだわりや思いを語っていた姿が印象的だった。今放送の喫茶店も歴史がある人気店だが、改めてどんぐりさんが店の魅力を再発掘していたように思う。

店主とのおしゃべりを楽しむもよし、本を読んでひとりの時間を楽しむもよし、どんな過ごし方でも受け入れてくれる喫茶店の懐の深さを改めて感じた。この番組をきっかけに喫茶店へと足を運ぶ人が増え、大阪の古きよき喫茶店文化を知るきっかけになって欲しい。

『片っ端から喫茶店』は、11月6日(金)24時46分から放送される。

取材・文=左近智子(glass)