吉本興業プロデュースの「少女歌劇団プロジェクト」から誕生したグループ「少女歌劇団ミモザーヌ」が、11月15日、大阪・Yesシアターでお披露目公演を行った。この歌劇団は、舞台にもなった伝説のゲーム『サクラ大戦』で知られるマルチクリエイター広井王子が総合演出を手掛けた、1期生14人、2期生9人総勢23人のレビューカンパニー(お披露目は、研究生を除く22人で実施)だ。年齢制限は11歳から20歳で、20歳になると退団という約束事がある。モットーは、「清く、明るく、麗しく」。グループ名のミモザのように愛らしい姿をお披露目した。

■アクロバットも取り入れた多彩なナンバーに注目
お披露目公演は、5曲のショートバージョンで構成された。音楽監督は私立恵比寿中学など多数のアーティストに楽曲を提供するクボナオキ。

1曲目はビッグバンドの演奏でもおなじみの名曲『Sing Sing Sing』をベースにした『Welcome! Sing Sing Sing』で躍動感いっぱいのダンスを披露。

2曲目はヒップホップ色の強い『扉の向こうへ』。ストリートファッションに身を包んだ5人のメンバーがキレの良いダンスを見せた。

ここでの注目は、アクロバット。総合演出の広井は「新しいレビューが作れないか?と考えついたのがアクロバット。これを取り入れたことで、立体的なステージが作れるようになった」と話す。顧問には、世界的ダンスカンパニー『CONDORS』(コンドルズ)のメンバーである古賀剛、アクロバット指導には、元アスリートの驚異的な身体能力から繰り広げられる「アクロバットダンス」を発信する日本初の女性アクロバットダンス・カンパニー『G-Rockets』(ジー・ロケッツ)のサポートも受けている。

3曲目は、三味線などの和楽器にハードなドラムを組み合わせたアップテンポな『愛の速度』。傷ついたことも失ったものも糧にして、自分を変えて進んでいこうという歌詞もまた彼女達の今を感じさせるせつなさあふれる楽曲だ。

ここで、1期生の「すずきみあいムェンドワ」と「きくたまこと」が、2期生の「ともだりのあ」「みやはらにこ」「ろれあ」の3人を呼び込んでのトークタイムが行われた。

1期生は1年半のレッスン時間があったが、2期生は4月に入団したばかり。対面レッスンは1か月も行えない状況だった。しかし、りのあは「対面したときに1期生の先輩が昔から仲が良い友達のように接してくれてほんまにうれしかった。レッスンも楽しくて、この少女歌劇団に入れて幸せやなぁとしみじみ思ってます」というと、1期生は「小学校6年生で『しみじみ』という言葉が使えるなんて」と驚いていた。

同じく12歳のにこは「自粛中はリモートレッスンだったけど、ほかの人のレッスンも画面で見ることができるので、2倍3倍と吸収することができた。画面越しではみんな同じ大きさに映るから、実際に会うと『大きいなぁ!』とびっくりした」とも話した。

もう1人の2期生、ろれあは、「100%のエネルギーで毎回パフォーマンスをしています。アクロバットも楽しいのでこれからも応援お願いします」と、歌劇団のすばらしさを見事な英語で披露。デジタル公演を主軸に活動をするこの少女歌劇団の視線は日本だけではなく「世界」へも向けられているので、多言語の習得にも励んでいる。「今後はダンスや歌だけでなく、語学ももっと勉強していけたらいいね」と語り合った。

その後、メンバーが集合。ゴスペル調の曲にのせて、英語や中国語、スペイン語やドイツ語、スワヒリ語にタイ語、モンゴル語など19もの言語で「ありがとう」を伝える『ありがとうございます(arigato gozai-masu)』を歌ったのち、最終曲『ミモザのように』へと続いた。

切ないピアノのメロディで始まる『ミモザのように』こそ、小さくて黄色くはかない花のように、けんめいに輝く彼女達の姿を表現した少女歌劇団のテーマソングだ。時間をかけて小さな丸い花を咲かせるミモザと同じく、キラキラとした輝きを増していく彼女たちらしいパフォーマンスで、締めくくった。

■広井王子の想い
歌のお披露目が終わった後、総合プロデューサーの広井王子が登場。

「2年前にプロジェクトを発表したときはコンセプトがぼんやりしていましたが、彼女たちとレッスンをしながら、レビューって何?歌劇団ってなんだろう、なんで少女なんだろう、を彼女たちと向き合いながら考え続けてきた」と広井。

体幹トレーニングとストレッチを組み合わせた新しいレッスン方法を講師に考えてもらい「最初はやっている意味が分からない子もいたかもしれないが、肉体ができてくると言われたこともできるようになるのだと、彼女たち自身が発見したんです。舞台が楽しくなければ絶対に笑顔にもなれない。彼女たちが自分で舞台の楽しさを作り、達成感を見出して、今ここに立っています」とこれまでの道のりを振り返った。

「僕は頭でっかちで、古い常識でレビューを作ろうとしていたけれど、彼女たちには通用しない。だから、コミュニケーションを取るためにノートを書いてもらったんです。課題や反省点、質問が書かれた全員のノートをチェックして返事を書きました」と広井。

そこには「なんで学校に行くんですか?なぜ勉強は必要ですか?というような大人が答えられない質問も多くて。それらをすべてかみ砕いて、週末のレッスンが終わった後の全員ミーティングで、40分も話しあった。その答えこそ、この舞台に生かせることがたくさんあるんだということを、僕自身が教えられました」とも。

そこで舞台に呼び出されたのが、ノートを手にした1期生の「いわなみゆうか」だ。「彼女が一番質問が多かったんですよ。これは何冊目?」と聞くと「2冊目です。今日は楽しかったです」と答えた。

レッスンを始めたとき、みんなカラオケでクセがついたいわゆる「のど歌い」で、このままだと全員がのどをつぶしてしまう。「これではダメだ、不安になって、もうやめようかと思った」という広井だったが『ダンスを躍らせたら、こんなに楽しい表情をするんだ!』と思わせてくれるメンバーがいた。しっかり基礎を行い、ひとりひとりの個性を引き出していくことが大事なんだ、そうすればいいんだ、と気付かせてくれたのが「いわなみゆうか」だったという。

続いて呼ばれたのが、「すずきみあいムェンドワ」。「彼女はすごいエンジンを積んでいるのに、のど歌いで、ガラスの心臓。本番になると声が小さくなっちゃって。でも腹式呼吸の基礎を徹底的にやったらすごく変わった。もうエースクラスです!」と成長ぶりを絶賛。

舞台はすべて生歌にこだわる広井の希望で、マイクなし、アカペラで『Amazing Grace』を歌い切ったみあい。その声量と歌声に会場からは惜しみない拍手が送られた。

アクロバットについても「2期生でアクロバットができるメンバーが3人も入ってきました」という広井に呼ばれたのが、小学1年生からアクロバットをやっている「みやはらにこ」。

「歌劇団に受かるまでは、週に6、7回、3時間から6時間も練習をしていました」という彼女。「もっと練習して違うワザを舞台でやろうね」と広井に声をかけられ、うれしそうに笑った。

■居場所を作ってくれてありがとう
「先日、にこから手紙をもらいました」と言ったとたん、広井は胸を詰まらせて言葉が出なくなってしまった。目には涙をにじませている。「私の居場所を作ってくれてありがとうございますと書いてあったんです。ここには、そういう子がいっぱいいる。そんな子たちの居場所を作れたら、僕もどんどん幸せになれると思います」。

世界での活躍を掲げた彼女たちの成長を、皆で応戦していく新しいライブ・エンターテインメントを目指す「少女歌劇団ミモザーヌ」。今後は、通常のレッスンに加え、日舞や茶道などの日本の文化もどんどん身に付けていくそうだ。

最後に広井は「吉本興業の大崎会長、スタッフのみなさん、僕の居場所を作ってくれてありがとうございました」とかみしめるように語り、舞台をしめくくった。

今後の活動として、12月30日(水)に第一回公演「Begin〜始まりの歌〜」の配信公演が決定している。最新情報は、少女歌劇団ミモザーヌ(Mimosane)の公式サイトでぜひチェックを。

取材・文=田村のりこ