全国各地で展覧会などが定期的に開催され、大人のコレクターズアイテムとして人気を集めるミニチュアアート。昨今、おうち時間が増えた影響もあり、見るだけでなく、作ることに興味を持っている人も増えている。今回は、フード系を中心に幅広いミニチュア作品を制作するしろくまパンさんにインタビューを実施。ミニチュアの魅力や、「おいしそう」と思わせるミニチュア制作の極意について語ってもらった。

■フード系ミニチュア制作のポイントは「おいしさの因数分解」

――しろくまパンさんの作品といえば、架空のパン屋さん「シロクマベーカリー」シリーズを始め、どれもおいしそうですよね。「おいしそう」と思わせるために工夫していることがあれば教えてください!

【しろくまパン】お料理系の作品に関しては、制作前に対象物の「おいしそうさの因数分解」をするよう心がけています。

【しろくまパン】例えば、からあげなら衣がやや発泡したようなカラッと感、赤味をおびた茶色の揚げ色、揚げ物独特の表面のわずかな油分感…などが「おいしそうに見せる構成要素」だと思っています。この一つひとつをどの素材でどのように表現するかということを、ある程度練り上げてから、制作に取り掛かるようにしているんです。

――かなりロジカルにおいしさを表現しているのですね。1つの作品を作るのにどのくらいの時間がかかっているのでしょうか?

【しろくまパン】何を作るかでかなり異なりますが、例えば、じゃがいもやにんじんなどは20〜30分程度でできます。でも、お茶碗1杯分のご飯の場合は、お米を1粒1粒作ることもあって、キレイに完成させるまで約1週間程度かかりますね。

――ミニチュア制作において難しい部分ってどんなところでしょうか?

【しろくまパン】1つのものを作り上げる時に、素材の組み合わせがかなり多いことです。
私の場合は、15種類ほどの粘土を使い分けているので、それぞれの長所と短所を理解した上で、どのように組み合わせたら「おいしそうな」1品に仕上げるかに毎回頭を悩ませています(笑)。

――粘土だけで15種類…。かなりのこだわりを感じます。これまで制作したご自身の作品の中で、一番のお気に入りはどれでしょう?

【しろくまパン】「昭和風の懐かしいお弁当」という作品です。オーソドックスなお弁当で、おかずもとてもシンプルなのですが、モチーフがシンプルであればあるほど「粘土感」が出てしまいやすいので、かなり苦戦しました。だから、無事完成したときの喜びはひとしおでしたね。

■ミニチュアの魅力は「こんなのがあったらいいな」を実現できること

――しろくまパンさんは、2017年からミニチュア作品を作り始めたとのことですが、ミニチュア制作を始めたきっかけは、なんだったんですか?

【しろくまパン】チェコ、ロシアなどで作られているストップモーションアニメの造形と出会ったことがミニチュア作りのきっかけです。当時、その独特の世界観があまりにも強烈で、すっかりはまっていました。特に物語を色や造形で表現したミニチュアのセットが強く印象に残り、「素敵だな、自分もこういうのをつくってみたいな」と手探りでスタートしたのが制作のはじまりです。

――作り始めて、早3年が経ちますが、しろくまパンさんにとってミニチュアの魅力とはなんでしょう?
【しろくまパン】自分の頭の中で思い描いた世界を現実に作りだせるということが魅力の一つだと思います。「こんなのがあったらいいな」という気持ちを、実際に形にしていく面白さは、一度はまると沼のように抜け出られなくなります(笑)。

■ミニチュアは“プチおでかけ気分”、「将来的には1つの街を作り上げたい」

――SNSを見るといろんなミニチュア作品がありますが、しろくまパンさんの題材選びの基準を教えてください。

【しろくまパン】実は今、ミニチュアで架空の街をまるごと1つ作っている最中なんです。その中に登場させるため、食品・雑貨・家具などのジャンルを問わず制作しております。

――そうなんですね!今後の目標や活動予定について教えてください。

【しろくまパン】現在進行中なのですが、1つの街をミニチュアでまるごと再現し、その暮らしの息遣いを写真で絵本のようにつづるのが目標です。例えば、駅前には商店街があって、揚げたてのおいしそうなコロッケやメンチカツを売るお惣菜屋さんから始まり、その先には老舗のパン屋さん、かわいい花屋さん、小さな不動産屋さん、路地裏のちょっと怪しげなバーまであるような。見ていただく方が思わず微笑んで、そこに住んでいる人たちの暮らしを想像してしまうような作品を目指したいと思います!


――最後に読者に一言お願いします!

【しろくまパン】ミニチュアはいろんな世界の一角を切り取っているので、見ているとまるで自分がそこにいるかのような楽しい気持ちになれます。お家にいる時間が増えた今、ミニチュア好きの方はもちろん、今までミニチュアを見たことなかったという方も、この「手軽にできるプチおでかけ気分」をぜひ楽しんでみてくださいね。

(文・於ありさ)