トヨタがNTTと提携して進める「コネクティッド・シティ」構想ってなに?

クルマだけでなく暮らしのすべてをつなげることを目指す

 トヨタ自動車の豊田章男社長は、自動車メーカーのトップとして随一のカーガイ(熱心なクルマ好き)として知られている。「うるさくてガソリン臭いクルマが好き」との公言するほどだ。とはいえ、エンジンにこだわるオールドタイプのクルマ好きというわけではない。パラリンピックのプレーヤーとの交流から誰もが自由に移動できる大事さを確認、ハンディキャップがあっても自在に移動するための自動運転テクノロジーへ注力することも、また豊田章男社長は重要だと語っている。

 あらゆるユーザーが満足できるよう、柔軟性を持ってモビリティを開発していくのがトヨタ自動車というわけだ。そんなトヨタが、「Woven City」と名付けたコネクティッド・シティを2021年東富士に設置することを発表したのは2020年の1月。さらに3月にはNTTとの業務資本提携を発表した。この2つの発表は密接につながっている。

 コネクティッド・シティというのは『あらゆるモノやサービスがつながる街』といえる。それはMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と呼ばれる移動に関するシームレスなつながりだけでなく、AI(人工知能)を利用したスマートホーム技術は、暮らしのすべてをつなげることを目指している。そうして新しいサービスを生み出そうという挑戦だ。

 つまり、トヨタはクルマ単体のビジネスではなく、街や社会といったスケールで考えるフェイズに入っているといえる。また、コネクティッド・シティにおいて欠かせないのは情報通信網の整備であり、その点において日本のトップ企業であるNTTと手を組むことは必然といえる。

トヨタのビジネスは「街のプラットフォームづくり」へシフト

 NTTとの業務資本提携の発表において豊田章男社長は次のように話している。

「人間の体に例えると、クルマや家は『筋肉』『骨』、通信は情報という血液を流す『血管」であり、その中でもNTTは『大動脈』として、毛細血管に至るまでの血液循環を支え、体全体を動かしているのだと思います。言い換えると、NTTは社会システムの根幹を担っているのです」。

 そもそもトヨタは自動車会社として生まれたわけではない。そのルーツが自動織機にあることは知られているだろう。特定のハードウェアにこだわるのではなく、『産業報国』の精神により『社会や国を豊かにすることに貢献したい』というのがトヨタのベースにある。そのために移動の自由度を高める自動車産業へと事業モデルのフルモデルチェンジを果たした。

 豊田章男社長は次のようにも言っている。

「トヨタにとってWoven Cityとは、モノの見方・考え方を180度変えていくことを意味しております」。

 コネクティッド・シティへの挑戦に象徴されるチャレンジはトヨタのビジネスが『街のプラットフォームづくり』へとシフトするという未来を示している。すべての生活がつながる世界、それは移動・サービス・教育・医療……人間が生きていくために必要なすべての社会システムが一体化することを目指しているといえる。

 クルマ単体ではなく、社会システムとしてのプラットフォームを構築することがトヨタの根底にある『社会や国を豊かにすることに貢献したい』という思いを実現するのに必要な時代になっているというわけだ。

 コネクティッド・シティの実証実験、通信最大手NTTとの業務提携は、トヨタとしてのフルモデルチェンジが近いことを意味している。トヨタのブランドを考えると信頼性の高いモビリティサービスを提供するということは軸になるだろうが、いわゆる自動車メーカーから脱却する日はそう遠くないと考えるのが妥当だ。