保守的だなんて誰がいった? トヨタが生んだ尖りに尖った「攻めのクルマ」5選

圧倒的なパワーを感じるスリリングな乗り味も!

 トヨタといえば「80点主義」という言葉に代表される優等生ブランドというイメージが強い。80点主義というのは満点を狙わずに手堅い商品開発を行なうという意味ではなく、すべての評価項目において80点以上を狙うというもので、尖ったところがあるからといって、欠点を見逃すわけにはいかないという思想を示している。では、トヨタは尖ったクルマづくりが苦手なのかといえば、そんなことはない。

 時折、「あのトヨタが!」と感嘆してしまうような攻めたクルマを登場させることがある。その象徴といえるのがガルウイングドアを採用したFFハッチバック「セラ」だが、今回はこの手の企画では定番の「セラ」をあえて除いて、トヨタらしからぬ(?)尖ったモデルとして記憶に残る5台を紹介しよう。

1)スターレットGT(EP82)

 まず、ピックアップしたいのは前述のセラと同系統のプラットフォームを持つFFホットハッチ「スターレットGT(EP82)」だ。その心臓部である1.3リッターDOHCターボエンジン「4E-FTE」はレギュラーガソリン仕様ゆえに135馬力と控えめなスペックだったが、いざアクセルを踏み込むと数字以上のパワー感があった。誤解を恐れずにいえば、圧倒的なパワー感はエンジンが優れているからではなかった。標準ではオープンデフで、タイヤサイズは175幅、コーナーの立ち上がりで早めにアクセルを踏み込もうものなら、内側のタイヤはトラクションを失い、一気に空転するのが常だったのだ。

 そのため、1.3リッターターボの実力を引き出すには細心の注意が必要だった。これだけ聞くと、単にシャシーのレベルが低かっただけに見えるが、NAエンジン仕様がサーキットで乗りやすかったことを思うと、スターレットのシャシー性能が根本からプアだったというよりも、過激すぎるエンジンを載せてしまったと理解するほうが妥当だ。スターレットGTは、それだけ尖ったマシンだったのである。

2)MR2

 シャシーに優るパワートレインのトヨタ車といえば、定番的に名前を挙げられることが多いのが「MR2」だろう。量産車の横置きエンジンを利用したミッドシップというコンセプトは、初代(AW11)、2代目(SW20)と共通しているが、初代が1.6リッターエンジン(NA/スーパーチャージャー)だったのに対して、2代目では2リッターエンジン(NA/ターボ)へとスープアップしたことが、2代目の「スリリング」とさえ称される乗り味を生んでいる。

 しかし、初代のスポーツ度も負けず劣らず。とくにNAエンジン仕様では名機「4A-G」エンジンの咆哮が耳にダイレクトに聞こえてきたのが印象的だ。「クヮーン」という高く抜けるような吸気サウンドは、カローラのパワートレインを使ったミッドシップカーとは思えないほど刺激的だった。80点主義的にはMR2の遮音性能はNGだったかもしれないが、吸気音が侵入してくるからこそMR2はNAエンジンでも楽しめた。

パッケージやボディは攻めたつくりのクルマも存在!

3)MR-S

 MR2の後継といえるのが「MR-S」。1.8リッターエンジンのオープン2シーターだった。スタビリティとコーナリング性能を両立させるためのロングホイールベース設計は、それまでMR2での経験(市場の声)を活かしたもので、走りの面では刺激はマイルドになっていたが、そのパッケージはトヨタ車としては攻めに攻めたものだった。

 なにしろ、MR-Sにはトランクがないのだ。シート背面に用意されたリッド付きラゲッジスペースはトランクと呼んで差し支えない程度の積載能力を持っていたが、あのトヨタがトランクのないクルマを量産するというのは、デビュー時にはかなり衝撃的だったのだ。

4)オリジン

 2000年に、トヨタが1000台限定でリリースした「オリジン」は、FR系プラットフォームをベースに、初代クラウンをモチーフにしたボディを与えたというスペシャルなモデルだ。そのボディはじつに「攻めた」ものだった。

 当時のコンパクトFRセダンである「プログレ」をベースとしながら、観音開きドアを実現したことも攻めた設計だったが、なにより驚かされたのはフロントフェンダーが左右でつながっていること。それは「オリジン」のスタイリングを実現するためには不可欠だったというが、それにしてもチリ合わせなどの生産性を考えると、かなりの手間がかかる手法であり、修理性を考えてもかなり攻めたデザインといえるものだ。

5)C-HR

 最後に紹介するのは現行モデルの「C-HR」。ご存じのようにデザインコンシャスなクロスオーバーSUVだが、その後方視界は現代のクルマとしては、さすがにどうかと感じるレベルだ。

 これだけ安全性能が重要視される時代に、視界を犠牲にしてでもデザイン最優先のクルマを生み出すことを認めてしまうのだから、トヨタというのはじつは尖ったマインドを持つブランドなのだ。

 こうして攻めたつくりのクルマを振り返ってみると、そうしたマインドは突然変異的なものではなく、これまでもトヨタが持ち続けてきたキャラクターなのだと、理解することができるのではないだろうか。