岸田文雄首相が4月8日から14日まで国賓として訪米した。その訪米の評価を冷戦終結に際し、ジョージ・ブッシュ(父)政権の下で副大統領を務めた人物に聞いた。ダン・クエール氏。いまは米投資ファンド、サーベラス・グローバル・インベストメンツの会長である。

 「日本は今や米国のグローバル・パートナーだ」。クエール氏は4月12日、東京でそう語った。「日米関係がこんなに良好・強力なのを見たことがない。日米はお互いを必要とする」

4月10日、岸田首相はホワイトハウスでバイデン大統領から歓迎を受けた。この握手と同様に堅い関係を築けるかは、日本の戦略にかかっている(JACK GRUBER-USA TODAY/SIPA USA/JIJI)

 ベルリンの壁が崩壊したのが1989年11月、東西ドイツが再統一したのが90年10月、そしてソ連共産党に幕が引かれたのが91年12月。米ブッシュ政権は冷戦の終結に臨み、次いでビル・クリントン政権はそれを好機ととらえ、米経済の立て直しを図った。

今、なぜ、平成という時代を振り返る必要があるのか?(前編)
今、なぜ、平成という時代を振り返る必要があるのか?(後編)

 クリントン政権は日本を「経済的な主要ライバル」と見なし、ソ連に代わる標的とした。バブル崩壊で手負いの日本は大打撃を被った。お家芸の家電は円高によりアジア諸国にその座を奪われ、世界の先頭を走っていた半導体は国際舞台から消え去った。日本に代わり台頭したのは中国だ。

 それから30年余り、中国の跳躍を用意した冷戦後の舞台は様変わりになった。2017年に登場した米国のドナルド・トランプ政権は台頭する中国を真正面の脅威と認識した。22年のロシアによるウクライナ侵攻は冷戦後を過去のものとした。

 ヒト、モノ、カネが国境を越えて駆け巡るグローバリゼーションが、冷戦後のキーワードだった。ところが冷戦後の時代が終わり、ポスト冷戦後ともいえる局面に入った今、重視されるのはサプライチェーン(供給網)である。クエール氏も強調するのはこの点だ。

 米中対立の前線は、半導体やAIから資源・エネルギー、宇宙まで広範な分野に及ぶ。なかでもサプライチェーンが途絶すれば、経済活動や社会生活は麻痺する。これらの領域で日米は〝有志同盟〟を組む。