カープ優勝を支える2人の“鬼”

カープ優勝を支える2人の“鬼”

 1979〜80年以来、37年ぶりの連覇が目前に迫っている広島カープ、逆転に次ぐ逆転の試合の面白さもさりながら、実は練習も非常に面白い。ブルペンの投球練習は球場の構造上なかなか見られないが、グラウンドで行われる打撃と守備の練習は一見の価値がある。観戦する際はぜひ早めに球場へ行き、試合前にじっくりご覧になることを勧めたい。

 まずバックネット前のティー打撃である。球出しをするコーチがボールを選手に素手で捕らせたり、足下にボールを置いてゴルフのティーショットのように打たせたりと、実にユニークなアイデアを採り入れている。

 2月にキャンプが行われた宮崎県日南市の天福球場では、全11カ所のティーやフリー打撃に加え、今年から物干し竿のように長い棒を振り回すメニューも導入された。新4番の鈴木誠也を筆頭に、安部友裕、西川龍馬、野間峻祥、堂林翔太ら、強化指定選手たちが汗だくになってこの棒を振っていたものだ。

 こうした風変わりな練習メニューの発案者が、優勝した昨年から打撃担当となった石井琢朗コーチである。ただ、打ったり振ったりするだけの練習では、どうしても単調になりやすい。工夫して目的をはっきりさせれば、選手たちもより意欲的に取り組めるからと、常に知恵を絞っているのだ。

 現役時代には橫浜(現DeNA)の1番・ショートとして1998年の優勝と日本一に貢献し、歴代11位の2432安打を記録。2009年に広島に移籍し、12年に引退して指導者に転身した。もともと球界屈指の巧打者だけに、一見奇抜な指導にも明確な根拠がある。キャンプ中もこう語っていた。

 「例えば、バットよりも長い棒を振るには、身体全体をきちんと使わないといけない。常に体幹を意識し、関節の可動域を広げていかないと、あんなに長い棒はしっかり振り切れません。そうやって全身を隈無く使ってスイングするという意識を覚え込ませるんです」

 自ら打撃投手を務めることもたびたびだ。同じ打撃コーチの東出輝裕、迎祐一郎と交代で数十球を投げ込む。今季終盤のヤクルト戦では、予告先発がアンダスローの山中浩史だからと、試合前のフリー打撃に不慣れな下手投げで登板した。選手が「ありがとうございました!」と頭を下げるたび、「はい、頑張って!」と励ましの声で応える。主力だけではなく、代打、代走、守備固め要員、さらには時々一軍に〝体験参加〟するドミニカ人選手にも助言を怠らない。

 前年に続いてリーグ一のチーム打率と破壊力を誇るカープ打線は、そんな打撃コーチ陣の細かな指導と気配りの賜物だ。とくに名球会入りした実績を持つ石井の教育が、「逆転の赤ヘル打線」をつくるのに最も貢献していることは疑いの余地がない。が、石井自身はこう言っている。

 「2432安打したことだけがぼくの財産じゃありません。そこへ辿り着くまでに、6000打数以上も失敗したこともまた大きな財産。それほど凡打の山を積み重ねたことが、いまの指導に生きている」

 そして、コーチはあくまでも黒子であり、選手の手伝いができるのは、ベンチから打席に送り出すまで。打席に立ったら、あくまでも選手個人の感性で打つべきだ、という信念を持っている。

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