攻撃の前触れは米市民の避難、米韓軍事演習前に探り合い

 軍事的衝突の懸念が高まっていた米朝対立は北朝鮮の金正恩労働党委員長が米領グアム沖へのミサイル発射について軟化の姿勢を見せ、米国からも対話を探る動きが出たことから”鎮静化もよう”になった。しかし米国は韓国との合同軍事演習を21日から予定通り行うとしており、緊張がすぐにも激化する懸念がある。

裏交渉が加速か

 金委員長の強気姿勢の軟化は唐突だった。14日の朝鮮人民軍戦略軍司令部を視察して、ミサイル発射準備が完了したとの報告を受けた後、「愚かな米国の行動をもう少し見守る」と述べ、それまでの強硬路線のトーンを下げた。今回の対立が先鋭化してから初めての軟化である。トランプ大統領は16日、「非常に賢い選択」と金委員長の軟化姿勢を評価した。

 なぜ、金委員長は態度を変えたのか。その一番の理由はティラーソン国務長官とマティス国防長官が14日付の米経済紙に連盟で寄稿し、米国には「対話の意思がある」とあらためて強調したことだろう。米国の目標が「金正恩体制の転覆」ではない、という点も金委員長を安堵させたのかもしれない。

 北朝鮮はトランプ大統領の挑発的な言動に反発して「グアム近海に4発の弾道ミサイルを撃ち込む」とぶち上げた。しかし、この恫喝はあくまでも米側に譲歩を強いるための交渉カードという見方が強い。本当にミサイルを発射してしまえば、カードとして使えなくなってしまう。このため、21日からの米韓合同演習の前に、振り上げた拳の落としどころを探っていた可能性がある。
 
 加えてミサイルをグアム海域に向けて発射すれば、「一気に戦争に発展しかねない」(マティス国防長官)という恐れも強まった。中国が国連の新しい制裁決議に従って石炭や海産物の全面輸入禁止などに踏み切り、国際的孤立が一段と深まったことも金委員長の危機感に拍車を掛けたのかもしれない。

 いずれにせよ、北朝鮮危機は米韓合同演習までが1つのヤマだ。合同演習の規模や日程を縮小したりすれば、北朝鮮に対する対話の重大なメッセージになる。「ミサイル発射の停止だけでは直接対話の開始には足りない」(国務省報道官)というのが米側の公式な立場だが、腹の探り合いに拍車が掛かるだろう。

 伝えられるところでは、両国はすでに公式対話の地ならしである水面下の裏交渉を行っている。それは北朝鮮に拘束されている米市民の解放交渉という形で進められており、6月には米国のジョセフ・ユン対北特別代表がピョンヤンを極秘訪問し、米国人1人を解放させた。

 この裏交渉は欧州やニューヨークを舞台に行われており、ニューヨークでは北朝鮮国連代表部の当局者が米側と接触したとされる。しかし、7月に予定されていたハイレベル協議は米韓合同軍事演習の中止をめぐって対立、中止になった。軍事演習前に裏交渉が加速すると見られている。

 両者の公式な直接対話が実現するかどうかは全く不明だが、最終形として「北朝鮮の核・ミサイル計画の停止」と引き換えに「米側が体制転換を求めないことを確約」する合意などが早くも取り沙汰されている。

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