改革開放の「魔」に取り憑かれた男の破滅を描く中国映画『迫り来る嵐』

改革開放の「魔」に取り憑かれた男の破滅を描く中国映画『迫り来る嵐』

 中国人にとって、香港返還があった1997年は、日本人が想像する以上に、特別な意味を持っている。大きな時代のカーブ、ということなのだろう。1997年、そして香港を一つのキーワードにした映画は中国で多い。そうした映画のどれもが、改革開放による急成長から取り残された人々の喪失感をテーマにしている。

「中国人の喪失感」を描き出した物語

 1月5日から全国上映が始まった中国映画『迫り来る嵐』もまた、「失われた90年代と香港」を背景に用いながら、中国人の喪失感を描き出し、同時に、スリリングな社会派クライムサスペンス映画でもあるという特別な一作だ。

 中国は、経済成長で豊かさを手に入れた。しかし、成長に追いつけない人々には、満たされない欲望の空洞が生まれた。映画人たちは、その空洞を、あの手この手で描きだす。本作でも、欲望の空洞に侵された男の破滅が描かれる。時代の変化に乗り遅れる者とそうでない者の違いはどこにあるのか。結末は限りなく切ないもので、鑑賞後はやるせなさに包まれる。

 本作は、一人の男が「魔」に取り憑かれてしまう物語である。その「魔」とは功名心だ。だが、主人公のユイ・グオウェイは鉄工所で働く素人探偵だ。鉄工所では保安担当であり、不正を見つけ出して模範労働者として表彰もされ、警察からも一目置かれる存在だった。そんななか、猟奇的な女性の連続殺人事件が起きる。警察から捜査情報を聞き出し、聞き込みまで行って、怪しい人物の存在に近づきつつあった。だが、ユイはそこから暴走し、仲間や恋人を巻き込みながら、悲劇へと進んでいく。


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