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 イスラム過激派によるテロの行為はなくなっておらず、世界はISのイスラム聖戦士による新しい世界的活動を無視すべきでない。昨年3月23日、米軍などが支援したシリアのクルド人勢力主体の民兵組織がシリア東部に残っていたISの最後の拠点を制圧し、トランプ大統領が「ISは100パーセント敗北した」と勝利宣言をしたが、ISの残党は各地に潜伏し活動を活発化している。ISの残党や関連組織は、特に、アジア、中東、アフリカの各地で活動を強めていると見られる。

 英王立防衛安全保障研究所のラファエロ・パントゥッチ上級準フェローはForeign Policy誌(電子版)に10月8日付けで掲載された解説記事‘Indians and Central Asians Are the New Face of the Islamic State’で、インドと中央アジアがISの新しい拠点になりつつある、と指摘する。8月初めアフガニスタンの都市ジャララバードの刑務所がISにより襲撃された事件では、参加したのはアフガン人、インド人、タジク人、パキスタン人であった。このように国境を超える攻撃がインド人と中央アジア人のイスラム過激派によって行われたのは比較的新しい現象で、IS関連の聖戦主義の新しい姿を示しているという。

 上記記事によれば、聖戦主義の考えは中央アジアとインドにとって目新しいものであるというわけではない。すなわち、ソ連邦から解放されたタジキスタンでの1990年代の内戦には聖戦主義の要素が含まれており、さらに、インドはタリバンの発生の元となった Deobandi運動が生まれた地であり、そしてカシミール紛争はイスラム教徒の虐待についての過激主義者のスローガンとなった。こうした伝統にもにもかかわらず、インドも中央アジアも世界的聖戦運動の中心にはならなかったが、それが今変わりつつあるのだという。

 パントゥッチが指摘するインドと中央アジア以外では、フィリピン、インドネシア、バングラデッシュ、イエメン、エジプト、ナイジェリア、モザンビークなどの国でISを支持する組織が活動している。また、ISが打倒されたはずのイラクでも今年に入ってテロ事件が増加、ISと戦ったイラクのクルド自治政府のバルザニ首相は、2月米メディアに対し「ISが復活する恐れがある」と警告したと報じられている。

 こうしたISの復活は、ISの台頭を許した中東やアフリカ、アジアの基本的問題、すなわち政府で横行する汚職、若者の就職難、貧富の格差などが引き続き根強く、このような社会の閉塞感が若者の社会への怒りや不満を生んでいる状況があることを示している。このような状況は直ちに改善されるとは思われない。さらに、湾岸諸国などへ出稼ぎに出かける若者たちが出稼ぎ先で先鋭化する例があるという。その上、新型コロナで海外での仕事が減り、若者の失業が増え、若者たちの先鋭化に拍車をかけている恐れがある。同時に各国政府は新型コロナの感染拡大防止に忙殺され、治安対策が後手に回っていることが考えられる。このような状況の下で、ISの活動を抑止することは容易でないと思われる。

  
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