このコラムでも何回か紹介してきましたが、「働く」という行為が、概念的なレベルで日本と欧州ではかなり違います。

欧州では、お金を稼ぐために働くという感覚の人も多く、日本に比べると特に北部の方は仕事のやり方が非常にドライで、飲み会の回数は恐ろしく少ないですし、ミーティングも短めで要点だけを決めて終わりということが多いです。

さらに、在宅勤務も日本よりも広まっていたので、働き方の概念に関しては日本より先行しているところがありました。

ところがその一方で、特にIT系では日本よりも企業の垣根を越えたカンファレンスや技術系の勉強会ネットワーキングの会などが大変盛んで、そういう時はオンラインではなくイベント会場に行ったり、数日間のキャンプをしたりします。

かなり濃密なコミュニケーションにより、人的なネットワークを広げ、新たなビジネスチャンスを探す、ということが少なくありませんでした。

つまり日本に比べると、普段オフィスで長々とミーティングをする代わりに、こういうイベントには積極的に行っていたということです。

さらにここ20年ばかりは、デジタル化が進んでどこでも働けるようになったのに、高い教育を受けたIT業界の人々というのは、北米でも欧州でも特定の都市に住んでいます。

これも、好きな時に対面で様々な人に会って刺激を得るためです。

ところが新型肺炎の騒ぎで、欧州のほとんどの地域ではこういったカンファレンスがキャンセルされており、勉強会などもなくなってしまいました。

IT業界では、もともとオンライン上でコミュニケーションをとりながら仕事を進める人も多いので何とか乗り切っている場合も多いのですが、普段在宅で働いているので、様々な地域に散らばっているメンバーや顔見知りの人と数か月に1回会うことができるカンファレンスや勉強会を楽しみにしている人が多かったのです。たまに人に会うことができる貴重な機会なのです。

また、働き方が日本よりはるかに柔軟ですから、在宅で働いておいて、 たまにはコワーキングスペースで仕事をして知らない人と立ち話をしたり、ビリヤードをやったりするのが息抜きになってる人も多かったのです。

つまり、在宅勤務が増えて働き方が柔軟になればなるほど、こういう対面のコミュニケーションの機会の希少性が非常に高くなっていたということです。

やはり対面で人と会うことで、新たなことを学んだり、刺激を受けて新しいアイデアが浮かんだりすることも多いですから、これは大変重要なことでした。

この対面で人と会うという機会が失われてしまった今、デジタルワーカーは従来のような創造性やチームワークを発揮し続けることができるのでしょうか?

仕事はデジタル化でスムーズにできるようになりましたが、やはり新たなサービスの立ち上げや画期的な製品の開発には、対面でのコミュニケーションが不可欠です。

新型肺炎によって働き方が完全にデジタル化されてしまうことで、業界の創造性というものが停滞するかもしれません。