まもなく4月。不安な中で、進級や進学を意識し始めた人も多いかもしれません。3週間前に、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で、安倍晋三首相が全国の小中学校に一斉休校を要請しました。友達と離ればなれになったまま卒業したり、家で心細く過ごしたり……、多くの子どもたちが、当たり前に続くと思っていた「日常」を失った3週間だったと思います。子どもたちへ今伝えたいことを、野球少年を描いた小説「バッテリー」で知られる作家のあさのあつこさん(65)に聞くと、「今感じていることを忘れないで」と話しました。「未来に『あやまち』を起こさない手助けになるから」と語った思いを聞きました。(朝日新聞岡山総局記者・華野優気)

思いを言葉にしてみて

今回の誰も経験したことのない出来事を忘れないでほしい。

友達と離ればなれになってそのまま卒業して、会えなくなった寂しさ。家で子どもだけで過ごす心細さ。イライラとか、学校に行かなくてホッとしたなんて気持ちもあるかもしれない。それをなんでも言葉にしてみてほしい。言っても書いてもいい。「すごくさみしかったよ」とか「お母さんが大変そうでかわいそう」とか。思いをちゃんととどめておいてほしいです。

今起きている事は、私は「あやまち」だと思います。それは、二度と起こしてはいけないことです。あなたたちは大変な経験をしてしまったけれど、今感じたことは、未来に「あやまち」を起こさない手助けになるということを覚えておいてください。

たとえば、戦争を経験している人とそうでない人とでは、平和についての考え方が少し違ってきますよね。それと同じで、今の混乱を経験したあなたたちにしか言えない言葉があるはずなんです。この先の未来のためにも、このことは忘れないでほしい。

心の内をのぞいてみる

ずっと家にいて、本を読もうと言われても何から読めばいいか分からない子も多いでしょう。まんがでも絵本でもいいので、読みやすい本から読んでみましょう。「まんがばっかり読んで」「6年生なのに絵本を読んでいるの」とか言う大人がいますが、心にひびく本って、漫画か絵本かなんて関係ないんです。

「どんな本をえらぶか」は、いま自分がどんな気持ちでいるのかという気づきにすごくつながる。「自分には何が向いているんだろう」「自分は今どんな流れの中にいるんだろう」と心の内をのぞけるんです。

音楽をきいたり絵を描いたりすることも同じことなのかも知れません。必ずしも本でなくていい。自分がやりたいこと、やりたかったけどやれなかったことを思い出してみて。

まわりの大人たちが当てにならないなら自分たちがしっかりしなきゃ。


<あさのあつこ>

大学在学中から児童文学を書き、岡山県内の小学校講師を3年務め、1991年にデビュー。少年野球を題材にした著作「バッテリー」シリーズで野間児童文芸賞。1千万部を超えるベストセラーになった。3児を育て、今は2歳から小6までの10人の孫がいる。