【助産師解説】母乳にいい食べものって?授乳中の食事のウソ・ホント

授乳中はおっぱいの詰まり予防や母乳の質をよくするために食事に注意すべきとの声をよく耳にしますが、これは本当なのでしょうか? 母乳と食事の関係と、食べ方、母乳にいい食べ物のアドバイスや注意点について助産師がお伝えします。

この記事を解説してくれた先生 佐々木美香先生
看護師、助産師、保健師。東京女子医科大学病院母子総合医療センター、産婦人科医院勤務などを経て、東京都杉並区にて出張専門助産院chichiを開業。自宅への出張母乳相談、専門家とコラボした「出産力・母乳力・育児力アップ講座」を開催。助産師向け講座も行う。自身も二人の男の子の子育てに奮闘中。
HP:https://www.chichiso-dan.com/

母乳の質や出方とママがとる食事に関係はある?

母乳の質や分泌をよくするために、授乳中はいつも以上に食事内容に気をつけなければならないとのアドバイスをもらったり、育児書などで目にしたことがあるママも多いと思います。ママが口にする食べ物と母乳には関連があるのでしょうか?また、食べた方がいいものや食べてはいけないものはあるのでしょうか。母乳と食事の関係について解説します。

授乳中に積極的にとりたい食べ物とは

よく、授乳中にはこれを食べておくといい、あの栄養素を意識的に摂らなければいけない…などの声を耳にしますが、実は母乳に良い特定の食べ物や栄養素というものは存在しません。良い母乳は健康な体から産生されるので、授乳中の食事で大切なのは「1日3食摂ること」と、「トータルでバランスの良い食事」です。

特定の食べ物を意識して食べるのではなく、母子手帳にも掲載されている厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考に、栄養素をできるだけまんべんなく摂るよう努めましょう。普段から自身の食事を振り返るようにし、あまり摂れていないと思うものがあればそれを追加していくようにすることが、バランス良く食べるポイントです。

◆妊産婦のための食事バランスガイド

https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf

授乳中にNGな食べ物は?

母乳に良い特定の食べ物がないのと同様に、食べてはいけない食べ物もありません。強いて言うのであれば、授乳中に限らず健康のためには栄養バランスが重要なので、極端に偏りのある食事はNGです。

また、子どものアレルギーを心配して卵や牛乳を制限するママもいますが、これは全く意味がありません。むしろ、厚生労働省では最近、離乳食期に卵を早めに与えることが子供のアレルギー予防につながるとの発表をしています[*1]。つまり、巷に飛び交う噂や昔からの言い伝えのようなものを鵜呑みにせず、健康に良い食事を心がけること。

これがもっとも重要です。

栄養バランスさえ意識すれば、授乳中だけど大丈夫?という心配は不要です。

「母乳は、全身にめぐる血液を材料にして作られます。また、母親が何を食べたかにかかわらず、母乳の成分は一定に保たれるようになっています。ですから母乳がおいしくなる食事、母乳がまずくなる食事というものはありませんが、母乳は全身の血液から作られるということを考えると、健康的な食事と健康的な体作りが、結果としてお母さんのため、赤ちゃんのため、母乳のためとなるのです。」(佐々木先生)

授乳中の摂取カロリーとバランス良く食べるコツ

授乳中はママが摂った栄養を赤ちゃんにも分け与えるため、普段よりもたくさんエネルギーを摂取しなければなりません。しっかり食べているにも関わらず、授乳中はとにかくお腹がすくという先輩ママの経験を聞いたり、まさに今経験中というママも多いでしょう。では、授乳中は具体的にどれぐらいのカロリー摂取が必要なのでしょうか?忙しい育児の合間でも楽に栄養バランスを摂るコツもあわせてお伝えします。

授乳中のカロリー目安は+350kcal

昔は「二人分食べろ」と言われた時代もありましたが、実際には授乳中でも成人女性の推奨摂取エネルギーは+350kcalで十分とされています[*2]。 とはいえ、ミルクと違って母乳は欲しがるだけ与えてもよいので、1日に何回授乳しているか(どれぐらい飲ませているか)によって必要なエネルギーは変わってくると言えます。

母乳だけで育つ赤ちゃんの場合、個人差はありますが1ヶ月の頃には1日に700ml、3〜4ヶ月頃には1000ml近く飲むとされます。授乳することは100mlで70キロカロリー消費すると言われています。

反対に、ミルク育児の場合は付加量は必要ないので、食べすぎには注意が必要です。母乳育児でも母乳のみか混合か、授乳回数や赤ちゃんの飲む量によって与えるエネルギーが変わってくるので、状況に合わせてエネルギー摂取量を調整しましょう。

授乳中は水分補給もしっかりと

授乳すると栄養と一緒に水分も出ていくので、授乳中は食事だけでなく水分をしっかり摂ることも重要です。1日に1〜1.5リットルを目安に、こまめに水分補給を行いましょう。常温か温かいお水、ノンカフェインのお茶が好ましいですね。カフェイン入りの飲料は厳禁ではありませんが、量は控えめにしましょう。妊娠中や授乳中はカフェインの影響がより大きくなるとの見解があるので、多くてもコーヒーでマグカップ2杯程度(カフェイン300mgを超えないくらい)にとどめることがすすめられます[*3]。

忙しい育児の合間でもバランス良く食べるには?

栄養をバランスよく摂ることが重要とは言っても、毎食バランスを考えながら食事を作るのはとてもじゃないけど無理ですよね。慣れない育児に奮闘する毎日ではなおさらです。健康のための食事なのに、それでストレスがたまってしまっては本末転倒。大切なのは無理のない範囲で体を気遣うことなので、「バランスよく食べなければ!」「体に良いものを!」と神経質にならず、スーパーの惣菜や宅食なども活用しながら負担のない食生活を送りましょう。たまには外食で息抜きもいいですね。

料理も1から10まで全て手作りするのではなく、缶詰や出来合いのものを組み合わせながら作ると楽にバランスを整えることができます。たとえば、煮物にひじきを入れれば肉や野菜とともに海藻も一緒に摂れるので、特に不足しやすい副菜の栄養素をしっかり摂ることができます。缶詰や生ひじきならそのまま投入して煮ればいいだけなので手間もありません。

また、茹でたささみにお惣菜のほうれん草のごまあえを合わせれば、簡単にタンパク質と鉄分などのミネラル、カロテンを摂ることができます。ささみをレンジで加熱してしまえば、ほとんど手間をかけずに一品を完成させることができますね。他の料理の合間にも作れる栄養価の高いおすすめレシピです。

この他、いろんな食材を使う簡単料理として、味噌汁やスープ、鍋などの汁物や混ぜご飯もおすすめ。特に汁物は、野菜や海藻、魚、お肉、卵と、組み合わせ次第でさまざまな食材を一緒に食べることができます。水に溶けてしまう水溶性の栄養素でも汁物なら溶け出たスープごと食べることができるので、摂取する栄養素のロスが少ないという点もいいですね。なにより、入れて煮込むだけなので調理が簡単というのが嬉しいポイント。忙しいママでも楽に作ることができます。炊き込みご飯も、たくさんの食材を同時に食べられる簡単料理の代表ですよね。おにぎりにして冷凍しておけば、小腹がすきやすい授乳中の間食にもぴったりです。

「『育児が忙しくて食事を3食摂れない』という方が、時々、いらっしゃいます。1日1、2食では、栄養バランスどころか基礎代謝分も足りません。これでは、お母さんの体がもちません。簡単なものをさっと作って用意しても良いし、宅食、冷凍食品、お惣菜、外食等を利用しても構いません。1日3食、しっかりと食べましょうね。」(佐々木先生)

これって本当?授乳中の食事にまつわる勘違い&疑問

授乳中の食事では、これって本当なのかな?という、ウソか本当かわからない説も多いですよね。母乳は赤ちゃんが飲むものなので、もし本当だったら……と心配になるママもいると思います。そこで、耳にすることの多い食事と母乳にまつわる説の真偽についてお伝えしようと思います。

脂っこいものを食べるとおっぱいが詰まるって本当?

脂っこいものを食べてもおっぱいが詰まることはありません。母乳の詰まり(=乳汁うっ滞)の主な要因は、母乳の分泌が多すぎる、授乳ポジションや吸着が不適切、授乳回数が少ない、授乳の間隔が開きすぎる、急な断乳などで、食事との関係はないと考えられています。

からいものを食べたらおっぱいがからくなるって本当?

このような説も聞かれることが多いですが、からいものを食べたからと言って母乳までからくなることはないです。からいものに限らず、「これを食べたらこうなる」というような医学的根拠は今のところありません。

1日3食魚を食べるよう言われたけれど……

このような食事のアドバイスを受けることもあるようですね。もちろん、魚は栄養価が高くヘルシーな良い食材ですが、毎食である必要はありません。近年では昔ほど頻繁に魚を食べなくなってきたので、意識して食べようというメッセージでしょう。動物性食品もしっかりとってね、という意味でとらえればいいと思います。

和の粗食を心がけるべき?

こちらも、医療機関ですすめられたり、育児書にも書かれていることが多い食事のアドバイスですね。和定食は出汁をうまく使っているので基本的に薄味で、不足しがちな副菜もしっかりあるので、健康のために参考にしたい食事内容と言えます。このような理由から、和食を心がけてというアドバイスが多くされるようになったのでしょう。主食、主菜、副菜、乳製品、果物をバランスよくとり、あまり濃い味付けにしないよう努めれば、必ずしも和食である必要はありません。

「母乳と食事に関しては、都市伝説のようなものや、国や地域の食文化によってもことなった意見があったりするため、本当にいろいろな情報が飛び交っています。けれど、哺乳動物である母体には、何をたべても母乳の成分や量を一定に保つ機能があるのです。母乳のために食生活に気をつけるのではなく、お母さんが健康的に育児できるようにしっかり食べ、飲もう、と考えてくださいね。」(佐々木先生)

まとめ

母乳に良い食べ物、悪い食べ物というものはありません。質の良い母乳は健康な体から作られるので、大切なのはバランスよく食べること。特定の食べ物を意識的に食べるのではなく、栄養をまんべんなく摂るよう心がけましょう。とはいえ、育児に追われる中で毎食栄養バランスを考えて作るのは大変ですよね。いろんな食材を使った簡単レシピの工夫や、惣菜、宅食なども活用しながら、できる範囲で栄養バランスを整えましょう。たまには外食でストレスを発散しつつ、楽しみながら食事の管理をしていければいいですね。

(文・構成:マイナビウーマン編集部、監修・解説:佐々木美香先生)

参考文献
[*1]厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf
[*2]厚生労働省「本人の食事摂取基準(2015 年版)」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
[*3]内閣府 食品安全委員会「食品中のカフェイン」
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/caffeine.pdf

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます


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