水虫には「大人がかかる病気」というイメージがあるかもしれませんが、小さい子供や赤ちゃんがまったくかからないというわけではありません。赤ちゃんが水虫になるとどうなるのか、予防するにはどうしたらよいのかを知っておきましょう。

この記事の監修ドクター 梁 尚弘先生
りょうキッズクリニック(埼玉県所沢市)院長。平成10年順天堂大学卒業後、日本大学小児科研修医、沼津市立病院小児科、横須賀市立市民病院小児科、日本大学小児科助教、瀬戸病院小児科医長を経て現在に至る。小児科専門医。

水虫ってどんな病気?

まずは水虫がどんな病気なのか、確認しておきましょう。

白癬菌というカビにより起こる病気

水虫は、白癬(はくせん)菌というカビの一種が足の皮膚に感染することで生じる病気「足白癬」の俗称です。白癬はできる場所によって名前が異なり、足に生じると「足白癬」、手に生じると「手白癬」、爪の場合は「爪白癬」と呼ばれます。

先ほど白癬菌のことを「カビの一種」と言いましたが、正確には「皮膚糸状(ひふしじょう)菌」という真菌類に分類されます。皮膚糸状菌は白癬菌以外にもさまざまあり、ヒトからヒトへ、動物からヒトへ、土壌からヒトへと感染します。

暖かくなると症状が現われ、冬になると収まる

水虫の主な症状には以下のようなものがあります。

● 足の裏に小さい水疱(すいほう)ができている

● 足の指の間や、足の裏の皮が剥けている

● 足の指の間がふやけて白くなったり、ジュクジュクしたりしている

● 足の指の間や足の裏がかゆい

さらにこれらの症状が「初夏や夏など暖かい季節になると生じ、秋や冬のよう涼しくなるとおさまる」という場合は、足白癬(水虫)である可能性が高いといえます。

白癬菌には春〜夏の高温多湿の環境で増殖し、秋〜冬になると増殖が止まってその数が減るという特徴があります。白癬菌の数が減ると症状も落ち着くため、一見治ったように見えますが、それはただ「症状が出なくなっているだけ」で、治っているわけではないケースも多々あります。

無症状のことも多い

意外かもしれませんが水虫になっても、特に目立った症状が現れない場合も多いのです。

白癬菌に感染しても、皮膚表面にある角層(角質層)の下の方まで菌が増殖しないと、かゆみなどの症状は現われてきません。そのため、水虫になっていることに気付かず、誰かにうつしてしまうことも。じつは、水虫になっているうち、かゆみの症状が現われるのは10%程度しかいないといわれています[*1]。

かゆみがなくても、皮がむけたり小さな水疱ができたりしていれば、水虫になっている可能性も考えられます。一方で、足に痒みが出る病気は水虫だけではありません。さきほど紹介した症状に心当たりがある人は、一度皮膚科で診てもらいましょう。

赤ちゃんも水虫になる?

赤ちゃんが水虫になるのは、どんな場合が考えられるのでしょう。また、なった時の治療法はどのようにするのがよいのでしょうか。

赤ちゃんの場合、心配なのは足よりも頭部や身体

赤ちゃんも白癬菌に感染することはあります。ただし、足白癬(水虫)というよりも、頭皮に生じる「頭部白癬」や体部に生じる「体部白癬」が多い傾向にあるようです。

頭部白癬は帽子、くしやブラシなどを介して、広がることがあります。また体部白癬は、手や足の甲、顔面を含め、うぶ毛が生えている露出している箇所にできることが多く、白癬に感染した犬や猫などの動物から感染することもあります。

頭部白癬は頻度が足白癬の1%未満と比較的まれな病気ですが[*2]、日本で報告された症例の半数以上が10歳未満の幼小児だったとする研究もあり、赤ちゃんを含む子供に多いことがわかっています[*3]。

頭や体にできる水虫の症状

頭部や体にできる白癬の主な症状は以下の通りです。

頭部白癬(シラクモ)

頭部白癬は白癬菌が髪の毛に寄生することで起こります。白癬菌はケラチンというタンパク質の一種を栄養源にしており、ケラチンが存在する場所であれば、どこにでも感染するといわれています。ケラチンは髪の毛の主成分ですから、場合によっては白癬菌が感染してしまうこともあります。

頭部白癬は通称「シラクモ」と呼ばれ、戦前はよく見られたようですが、現在はほとんど見られなくなっているようです。ただ、最近、柔道、レスリング、すもうなどの格闘技選手の間で、トリコフィトン・トンズランスという新しい水虫菌に感染する人が増えています。外国から持ち込まれたこの菌は感染力が強く、頭部白癬や体部白癬を引き起こしますが、一度感染すると治りにくく、また家族や友人にうつることも多いので注意が必要です。

頭部白癬の症状

最初は赤い斑点から始まって徐々に拡大し、円形または楕円形に脱毛します。脱毛部の皮膚にはフケがうろこ状についているのが主な症状です。症状の見られる部位が直径2.5cmほどになると、それ以上はあまり大きくなりません[*4]。

症状が出る箇所はひとつだけのこともあれば、複数になることもあります。軽いかゆみと不快感があり、はがれ落ちた皮膚がフケのように散らばっていることから、フケ症や赤ちゃんの場合は乳児脂漏性皮膚炎と間違われることもあります。ただ、乳児脂漏性皮膚炎は普通生後6ヶ月くらいまでに起こるものなので[*5]、子供の年齢が1歳以上になっている場合は、頭部白癬の疑いがあるかもしれません。かかりつけの小児科を受診するとよいでしょう。

体部白癬(ゼニタムシ)

体部白癬は身体にできた白癬の総称ですが、手足、爪、顔、髪の毛、外陰部(股)については個別の呼び名があることから、それ以外の体部にできた白癬のことを体部白癬と呼んでいます。「ゼニタムシ」という俗称を聞いたことがある人もいるでしょう。

体部白癬の症状

白癬菌に感染した部分の皮膚が環状に赤くなり、表皮が細かくはがれます。かゆみが強いことが多く、治っても皮膚に色素沈着が残ることもあります。

赤ちゃんが水虫になった場合の治療法は?

赤ちゃんが水虫を含む白癬にかかった場合、治療は基本的に塗り薬で行います。赤ちゃんや子供に多いとされる頭部白癬の治療では、内服薬や抗真菌薬の入ったシャンプーが処方されることもあります。

赤ちゃんが水虫の足をなめてしまった!

赤ちゃんと水虫については、赤ちゃんがかかる可能性以外に「大人の水虫をなめる」という不安もあるのではないでしょうか。赤ちゃんが水虫に感染している部位をなめてしまったら「口の中が水虫になってしまう!」と心配になるかもしれませんね。

でも口の中が水虫になることは、基本的にはありません。口の中を覆っているのは、皮膚ではなく「粘膜」ですが、粘膜にはケラチンがあまりないため白癬菌は生存することができないのです。したがって赤ちゃんが誤って水虫に感染した足をなめてしまっても、口の中が水虫になることはないので安心してください。

しかし水虫にはならなくても、塗布した水虫の治療薬の成分が健康に悪影響を与える可能性は考えられます。患部をむやみに赤ちゃんがなめないよう、注意しておきましょう。

家庭内感染の防止が重要

白癬の中でも最も頻度が高いとされる水虫は、家庭内での感染が大部分を占めるといわれます。白癬菌への感染から赤ちゃんを守るために注意しておきたいことをまとめました。

白癬菌を家庭に持ち込まないよう気をつける

まずは白癬菌を家庭内に持ち込まないことが大切です。白癬菌が皮膚に付着しても、感染が成立するまでには少なくとも24時間かかるといわれています[*6]。ですから、家の外で白癬菌が皮膚に付くことがあっても、24時間以内にきれいに洗い流せば感染を防ぐことができます。よく泡立てたせっけんやボディーソープで、やさしくなでるように洗いましょう。

しっかり洗おうとするあまり、ゴシゴシと強くこすってしまうことがあるかもしれませんが、それによって皮膚が傷つくと白癬菌への感染リスクが高まります。皮膚に傷があると、感染が成立するまでの時間が12時間に短縮されるというデータがあるため、力の入れすぎには注意してください[*6]。

家庭の外で白癬菌に感染するリスクが高いのは、銭湯やサウナなどの温浴施設にある足拭きマットです。大勢の人が利用するこうした場所には、間違いなく白癬菌がいると考えられます。こういった場所を訪れたら、きちんと水気をふき取り、十分足を乾かしてから、靴や靴下を履き、自宅についてからすぐに足を洗うようにすれば、感染リスクはかなり抑えられます。

また赤ちゃんや子供に多いとされる頭部白癬は、ペットから感染する可能性があります。ペットの皮膚にフケや脱毛している箇所があったり、またかゆがっている様子が見られたら、動物病院で治療してもらいましょう。

家庭内で注意が必要な場所

神経質になりすぎる必要はありませんが、家庭内に水虫の保菌者がいる場合は、以下のことに気を付けておくとよいでしょう。

バスマット

足拭きマット(バスマット)は家庭内感染の大きな感染源といわれています。可能であればバスマットの家族での共有をやめるのが最も効果的ですが、バスマットに触れた後は清潔なタオルで足の水分をきれいに拭き取るなど、白癬菌が皮膚に長時間付着しないようにすれば感染のリスクは減らせます。

なおバスマットはこまめに洗濯し、洗濯できないものは水拭きした上で、しっかりと乾燥させてから使いましょう。

水虫の保菌者が裸足で歩くことは、家の中に白癬菌をばらまいているのと同じこと。同じ場所を非感染者が裸足で歩くと、白癬になるリスクが高まります。掃除機をかけたり、水拭きしたりする頻度を増やすなどして、白癬菌をできるだけ取り除きましょう。

また白癬菌は髪の毛や垢(あか)などと一緒に部屋の隅にたまっていることもあります。髪の毛や垢には白癬菌の栄養となるケラチンがあるため、1年以上菌が生き続けることもあるようです。

家族に白癬菌の保菌者がいる場合はできるだけ隅々まで掃除をする、スリッパを使い、裸足で歩かないよう心掛けるなど、工夫するとよいでしょう。

スリッパ

スリッパは白癬菌への感染予防になりますが、共用してしまうと、そこから感染が拡大してしまう可能性もあります。スリッパを使用しても、共用は避けましょう。

使用するスリッパの形状は、ルームシューズのような乾燥しにくいものより、通気性の良いサンダルタイプがおすすめです。

靴を長時間履き続けると、白癬菌が増殖しやすくなります。可能であれば時々靴を脱いで風通しをよくしたり、会社に着いたらサンダルに履き替えたりなど、できるだけ長時間靴を履いたままにしない工夫をするようにしましょう。

また同じ靴をはき続けるのは避け、2〜3足をローテーションしつつ、可能なものはできるだけ洗って清潔に保つのも効果的です。

その他

頭部白癬の予防には、くし、ブラシ、髪留めなどのヘアアクセサリーや帽子を共有しないことが大切です。

そのほか「白癬菌を家庭内に持ち込まないよう気をつける」でもお伝えしましたが、ペットがいる場合は、普段からペットの皮膚の状態をチェックし、異常を見つけたらすぐに治療しましょう。もしもお子さんに白癬の症状が見られたら、家族や友だちなど周囲の人も同時に治療してください。

まとめ

赤ちゃんが水虫になることは大人ほど多くはありません。しかし、取り巻く環境によって感染のリスクは異なります。白癬菌は家庭内で感染することが多いので、普段から気をつけておくことで予防に役立ちます。神経質になりすぎる必要はありませんが、できる範囲で対策をしておけるとよいですね。

(文:山本尚恵/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)「Q12 足白癬は痒いのですか?また痒ければ足白癬ですか?」
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q12.html
[*2]日本皮膚科学会:皮膚真菌症診療ガイドライン 2019
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/shinkin_GL2019.pdf
[*3]福田知雄:頭部白癬, Med. Mycol. J., Vol. 52 7-13, 2011
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mmj/52/1/52_1_7/_pdf
[*4]アメリカ小児科学会:Ringworm - HealthyChildren.org
https://www.healthychildren.org/English/health-issues/conditions/skin/Pages/Ringworm.aspx
[*5]五十嵐隆・馬場直子:小児科臨床ピクシス17年代別子どもの皮膚疾患, p68, 中山書店, 2010.
[*6]皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)「Q26 足白癬にならないための足のケアは?」
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q26.html

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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