下痢とは、なんらかの問題で便に含まれる水分が多くなり、泥や水のようなの状態で出ることです。産後、体の変化を感じると「出産の影響かな?」と思うものですが、下痢も出産と関係があるのでしょうか? 産後のお通じの悩みについてまとめます。

産後ママに起こりやすいお通じの問題は?

出産後の女性に起こりやすい排泄関連のトラブルは「便秘」や「痔」です。

これは妊娠・出産に伴う体の変化から生じるトラブルで、そもそも妊娠中から起こりやすく、出産後も引き続き悩まされるママも少なくありません。

では下痢はどうでしょうか。

産後は下痢しやすい?

下痢については、便秘や痔のように体の変化によって生じる「出産後だから起こりやすい」という強い関連性はありません。

たとえば、生理中には生理の仕組みに関係して分泌量が増える「プロスタグランジン」というホルモンの影響で腸が収縮し、下痢しやすくなることが分かっていますが、そのような特定のメカニズムはないのです。

松峯先生:
「産後に下痢が続く場合は、産後のライフスタイルの変化の影響か、感染症などの病気が原因で症状が出ている可能性が高いでしょう。下痢が続いているとしたら、生活が落ち着かず、脱水も心配ですから、早めに対処が必要ですね」

産後の下痢、原因は?

産後の下痢の主な原因としては、次のようなものが考えられます。

ライフスタイルの影響

そもそも産後のママの体は非妊娠時の状態への回復過程にあり、体調万全とは言えない状態です。十分な休養と栄養、睡眠が必要な時期で、特に産褥期(出産後約6〜8週間)は滋養が必要です。

しかし、ゆっくり休んでばかりもいられないママも多いでしょう。家事と育児で無理をしたり、自分自身の食生活がおろそかになったりしていませんか。

睡眠不足が続いたり、不慣れな育児や、生活のリズムの変化などがストレスになっている場合もあるでしょうか。すると自律神経のはたらきが弱り、自律神経失調症状の1つとして下痢や腹部不快感、また便秘も起こりやすくなります[*1]。

下痢の原因が病気の場合も

病気が原因で下痢が起こることもあります。代表的なものは感染症(ノロウイルスなど)による胃腸炎や「過敏性大腸症候群(かびんせいだいちょうしょうこうぐん)」です。

嘔吐や発熱なども伴う場合は感染症による胃腸炎の可能性もあるので、かかりつけの内科に連絡し、指示に従って受診しましょう。

過敏性大腸症候群は先にも述べた自律神経が関係していて、腸のぜん動運動が激しくなったり、お腹の痛みを感じやすくなったりして、腹痛や不快感、排便トラブルを繰り返す病気です。

最近3ヶ月の間に、月に3日以上連続でお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、次の2項目以上当てはまるときは内科を受診しましょう[*2]。

・排便によって症状がやわらぐ
・症状とともに排便の回数が変わる
・症状とともに便の状態が変化する(下痢と便秘を繰り返す)

また、上記に当てはまらなくても、下痢が続いて生活に支障があるときや、不安なときは内科を受診し、原因を確かめましょう。

セルフケアでできること

特別な病気が原因ではないなら、生活の中で排泄リズムを整えるセルフケアに取り組んでみましょう。

下痢のときも水分を控えず、過不足なくとる

水様便が出ているときは脱水ぎみになりやすく、水分を控えると消化を担う内臓に負担がかかります。経口補水液やスポーツドリンク、白湯などをこまめに飲みましょう。

なお、授乳中は母乳で水分が出る分、普段以上に水分補給が必要です。特に注意しましょう。

消化のよいものを食べる

消化や吸収のはたらきが弱っているので、それを助ける意味で消化のよいものを食べてください。

また、上の子の世話をしながら、スマホを見ながら、といった「ながら食べ」を控え、なるべく食事に集中して、ゆっくり、よく噛んで食べましょう。

消化の悪い食べ物って?

・脂肪分の多い食品(脂肪の多い肉や魚、生クリームなど)

・人工甘味料

・生野菜

・雑穀

・海藻類 など[*3]

刺激物を避ける

コーヒーや炭酸飲料、アルコール、過度な香辛料などは症状が出ている間はなるべく控えましょう。

休む時間を意識的にとる

睡眠不足は自律神経に悪い影響を与えます。赤ちゃんの生活リズムが整っていない間は、理想的な睡眠時間(25〜45歳の場合、夜間に連続して約7時間[*4])をとるのは難しい場合が多いでしょう。その間は昼夜の区別なく、眠れるときに、眠りましょう。

そして、産褥期は特に利用できるサポートはすべて活用して、思い切って休み、自分の時間をもってください。

松峯先生:
「たとえ2人目、3人目のお子さんの出産でも、戸惑いや不安が生じることがあるもので、赤ちゃんとの新生活を最初は“非日常”の連続に感じるかもしれません。いい意味で“普通の日常”を取り戻すために、まずママが速やかに体力・気力を回復させ、余裕をもつことが大切です。
少し時間の使い方を見直してみましょう。たとえば赤ちゃんや上のお子さんが寝ているタイミングで家事や仕事をこなそうとしていませんか? いまは無理をせず、子供が寝ている時間は『自由な時間』と考えて、ぜひ自分のために使ってください。
育児や家事などに関して利用できるサポートを活用すれば、医療機関の受診など、自身の体調管理もできます」

授乳中、市販の下痢どめ(止瀉薬)は使える?

下痢止めの薬の中には授乳中に使わない方がいいものもあります。市販薬を使う場合は、ドラッグストアで薬剤師または登録販売者に授乳中であることを伝えた上で選びましょう。

まとめ

下痢については出産との直接の関連性はないようですが、赤ちゃんを迎えて生活が慌ただしく、忙しくなるなど、ライフスタイルの変化は便通にも影響があると考えられます。脱水に気をつけ、胃腸を休めたり、なるべく睡眠をとったりするなど、セルフケアを試みてみましょう。

一方、下痢の背景になんらかの病気があることも。嘔吐のため水分補給ができない、下痢が頻回で水分補給が追いつかない、症状が数日続く、ほかにも持病があるなどの場合は、早めに内科を受診しましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 日本臨床内科医会「わかりやすい病気の話シリーズ19 自律神経失調症」
https://www.japha.jp/doc/byoki/019.pdf
[*2] 日本消化器病学会「過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&A」過敏性大腸症候群の診断基準(ローマⅢ基準)
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html
[*3] 日本臨床内科医会「わかりやすい病気の話シリーズ42 下痢の正しい対処法」
https://www.japha.jp/doc/byoki/042.pdf
[*4] 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

この記事の監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、東峯ラウンジクリニック副所長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(いずれも東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします! どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます