犬や猫を飼う人が増えたことに伴ってペットと一緒に旅行する「ペットツーリズム」の人気が高まり、群馬県内の観光地でもペットを受け入れる動きが活発化している。県も、観光客の増加や県が目指す「ペットとの共生社会」実現につながるとみて、取り組みを後押ししている。(飯田尚人)

 「一緒に観光に来られてうれしい」。4月21日に富岡市の富岡製糸場を夫婦で訪れていた東京都調布市の男性(50)はそう話し、ペットカートの中で元気に動き回る2匹の愛犬に目をやった。

 男性は飼っている中型犬2匹を連れて、これまでも北海道や東京・八丈島を訪れた。製糸場観光を決めたのも、インターネットでペットの入場が可能なことを知ったから。カートの2匹と、夫婦で富岡製糸場の敷地に入り、外観を見学した男性は「ペットは家族だから一緒に出かけたい。もっと入場可能な施設が増えてほしい」と話していた。

 コロナ禍でテレワークなどが普及し、在宅時間が増えたことで、生活に「癒やし」を求めてペットを飼う人は増えている。一般社団法人ペットフード協会(東京)によると、2020年に飼われ始めた犬は41万6000匹で、コロナ禍前の19年(35万匹)から2割近く増えた。21年以降も、40万匹前後が新たな飼い主の元で暮らし始めている。

 ペットがいる家庭が当たり前になりつつある中で、県内の宿泊施設や観光地でもペット連れの観光客の受け入れが進む。富岡製糸場では昨年3月、犬猫を連れての建物の外周の見学が可能となり、富岡市観光協会によると、先月23日時点で計2694人が1099匹を連れて入場した。嬬恋村では、宿泊施設で2年ほど前からペット連れ客の受け入れが始まり、現在は約15施設に広まっているという。昨年7月に一部の部屋で犬と宿泊できるようにした嬬恋プリンスホテルには、年配客を中心に多くの人が足を運ぶ。

 こうした動きを受け、県は今年度、ペット連れに選ばれることを目指して環境を整備する。ペット愛好家に効率的に観光地を見てもらおうと、県公式観光サイト「観光ぐんま」にペット連れが利用可能な宿泊施設や飲食店を紹介する特設ページを設ける。また、温泉や県産食材など県の特色を生かした犬猫向けイベントを企画することや、展望台が人気観光地となっている県庁などの県有施設にペットが入れるようにすることも検討する。

 公益社団法人日本愛玩動物協会(東京)の東海林克彦会長は群馬県の取り組みについて「観光、産業振興の面で期待できる」と評価。そのうえで「飼い主は一緒に宿泊するだけではなく、質の高い体験を求めるようになってきた。動物が苦手な観光客にも配慮しながら、観光地全体での体制整備や受け入れノウハウを構築することが重要だ」と指摘した。県観光魅力創出課は「県全体で受け入れ体制を整え、群馬ならではの体験をペットと楽しめる観光地を目指す」としている。