安倍首相が、中東のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンを歴訪した。

 イスラム教スンニ派のサウジとUAEは、シーア派のイランと対立している。首相は昨年6月、イランを訪問しており、今回の歴訪で外交的なバランスを取る狙いがある。

 日本は米国と堅固な同盟を築く一方、イランとも友好関係にある。米・イランの橋渡し役を果たすことはもとより、関係国間の冷静な対話を促し、中東地域の安定を目指す意図は理解できる。

 情勢の悪化を受けて、政府内では訪問延期も検討された。首相の意向もあり、予定通り実施したことは妥当と言える。

 首相のサウジ訪問は、2013年以来だ。首相は、実質的な指導者であるムハンマド皇太子との会談で「事態のエスカレーションは避ける必要がある」と指摘した。皇太子も同意した。

 昨年9月には、サウジの石油関連施設2か所が無人機による攻撃を受けた。対イラン強硬派と目されている皇太子との会談で、対話による事態の収拾を確認したことは評価できよう。

 緊張緩和に向け、日本は外交努力を重ねることが重要だ。

 首相の訪問は、海上自衛隊の中東派遣について説明するのも主眼の一つだった。一連の会談で、各国から支持を取り付けた。

 日本関係船舶の安全を確保するため、海自による情報収集は欠かせない。米国主導の海洋安全保障構想に基づく作戦に、サウジとUAEは参加している。海自は各国と情報共有に努め、的確に任務を遂行していかねばならない。

 首相はUAEに対して、自衛隊の補給拠点の確保について協力を要請し、了承を得た。東部のフジャイラ港を検討している。

 オマーンにも補給拠点を設ける方針だ。ホルムズ海峡を領海に持つオマーンは地理的な要衝にある。海自が安定的に活動できるよう環境整備を急ぐべきだ。

 サウジなど3か国は、日本にとって重要な原油輸入元であり、合計で輸入量全体の3分の2を占める。3か国との関係強化は日本の国益に直結する。

 サウジは石油依存から脱却し、産業を多角化する改革を推進している。首相は皇太子との会談で、インフラ整備やエネルギー分野での協力を深めることを確認した。UAEとは、石油備蓄事業での協力の拡充で合意した。

 政府は、各国と多角的な協力を進めていくことが大切だ。