新型コロナウイルスの流行で、株主総会の開催が制約を受けている。株主との対話で企業価値の向上を図る流れを止めないようにしたい。

 3月期決算企業の株主総会がピークを越えた。感染を防ぐため規模を縮小する企業が相次いだ。

 トヨタ自動車は参加の見合わせを要請し、来場者を前年の10分の1以下に抑えた。内容は動画で公開した。ソニーも株主の出席は前年の7分の1にとどまる。NTTはインターネットで中継した。

 質問を制限し、例年より時間が短縮されるケースが目立つ。

 感染防止のため、やむを得ない面がある。ただ、総会は株主が経営方針や取締役選任について説明を受ける重要な機会だ。できる限り株主との対話の場を確保していくことが大切となる。

 今回、ネットでの配信が増えたが、多くは傍聴しかできず、議決権行使や質問ができたのはソフトバンクグループなど一部に限られた。企業は通信障害のような事態を恐れ、慎重なのだろう。

 株主にも自由な意見表明を妨げられるとの不安があるという。ネット活用の加速へ、IT基盤の拡充や運営の工夫が欠かせない。

 気がかりなのは、コロナ禍が、分散化の進んでいた開催日を再び集中させたことだ。

 ピークの26日は、3割強の約750社が開いた。昨年の集中日の719社から増えた。同じ日に集まれば、出席や議決権の行使を制限しかねない。分散の手法を再検討するべきだ。

 総会は、議決権を持つ株主を確定する基準日から3か月以内に開く必要がある。決算期末の3月末を基準日とする場合が多い。総会延期のために変えると、4月以降に株を売った人が反発する懸念があり、企業は二の足を踏んだ。

 決算期末から開催までの期間を延ばし、7月以降に開きやすくすることが課題となる。

 2014年には、機関投資家に積極的な議決権行使を促す指針が設けられた。生命保険会社などは経営側の議案を厳しく点検し、反対票を投じることが珍しくなくなった。経営の緊張感を高め、企業統治を強化する効果があろう。

 コロナの影響で、改革を停滞させてはならない。

 米国で「株主第一主義」からの脱却が提唱され、総会では株主還元だけでなく、環境への配慮や女性の登用などを要求する動きが広がっている。幅広い観点から企業経営のあり方を問う場として、有効に機能させてほしい。