逮捕状発付の是非を判断する令状審査に出席するため、ソウル中央地裁に入る容疑者=8日、ソウル(聯合ニュース)
逮捕状発付の是非を判断する令状審査に出席するため、ソウル中央地裁に入る容疑者=8日、ソウル(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国・ソウルで6日、男が交際相手の女性を刺殺する事件が発生した。容疑者は名門大医学部に通う学生で、大学修学能力試験(日本の大学入学共通テストに相当)で満点を取っていたことが明らかになり、市民は大きな衝撃を受けている。

◇名門大医学生の凶行 交際相手に別れ告げられ

 警察によると、ソウルの瑞草警察署は6日、地下鉄江南駅近くのビルの屋上で交際相手を殺害した疑いで20代の男を緊急逮捕した。

 「屋上から男性が飛び降りようとしている」という通報を受けた警察は、現場に出動して男を保護した後、死亡している女性を発見した。

 男は警察の取り調べに対し、同い年の交際相手から別れを切り出されたために犯行に及んだと供述した。殺害の2時間前にソウル近郊の大型スーパーで凶器を購入し、被害者を呼び出すなど計画的な犯行とみられる。

 警察は7日に容疑者の逮捕状を請求しており、裁判所は8日午後に令状審査を行って逮捕状発付の是非を判断する予定だ。

 容疑者が大学修学能力試験で満点を取ってソウルの名門大医学部に在学中であることが明らかになり、インターネットやSNS(交流サイト)では男の個人情報が急速に拡散されている。

 また、犯行現場は2016年5月に商業ビルのトイレで20代の女性が見知らぬ男に殺害された事件の現場から500メートルほどしか離れておらず、改めて凶悪犯罪に対する恐怖が募ったという反応も出ている。この事件では、容疑者が犯行動機について「女性に無視された」などと供述したことから、韓国社会の女性嫌悪問題を巡る論争に発展した。  

◇夫や交際相手に殺害された女性 昨年138人以上

 女性を対象とする凶悪犯罪は毎年後を絶たない。今年3月には京畿道華城市で20代の男が交際相手を殺害し、母親も負傷させる事件が起こった。

 昨年7月、仁川市内で元交際相手を刺殺した30代の男は、ドメスティックバイオレンス(DV)とストーカー行為で裁判所から接近禁止命令を受けたにもかかわらず、被害者のもとを訪れて犯行に及んだ。同年3月にはソウル市内と京畿道安山市で30代の男が交際相手の女性を殺害する事件が相次いで発生した。

 白昼の都心で再び発生した凶悪犯罪に、市民は不安を訴えている。

 警察庁の統計によると、交際相手などから暴力を受けるデートDVで検挙された被疑者の数は19年の9823人から22年には1万2828人に増え、3年で30.6%増加した。

 女性が夫や恋人など親密な関係の男性に殺害された事件に関する公式統計は存在しないが、女性団体「韓国女性の電話」がメディアで報じられた事件などを基に分析した結果、昨年に親密な関係の男性に殺害された女性の数は少なくとも138人に上ったという。

 専門家はデートDVに対する認識の向上とともに、このような犯罪に対するより厳しい処罰が必要だと話す。

 京畿大の孔楨殖(コン・ジョンシク)教授(犯罪心理学)は「(デートDVや殺人には)加害者が普段から持つ家父長的思考と女性差別的認識が大きな影響を与える」として、加害者から被害を受けた証拠が十分にある場合は公権力が事前に介入できる余地を残しておかなければならないと指摘した。

 元韓国女性弁護士会広報理事の張允美(チャン・ユンミ)弁護士は、男女関係ではそのようなこともあり得るという認識を改めることも必要だが、予防策を講じることも容易ではないとした上で「結局、厳罰に処して量刑基準を引き上げることが代案にならざるを得ない」と述べた。


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