瀬戸大也「自信持ってレースできた」 2019年世界選手権振り返る

競泳男子400㍍個人M 決勝の瀬戸大也

 2020年東京五輪で競泳ニッポンを引っ張る大黒柱、瀬戸大也(ANA)に、金2、銀1のメダルを手にした7月の世界選手権を振り返ってもらった。(聞き手、共同通信=吉田学史)

 ―200メートル個人メドレーを1分56秒14で初制覇し、400メートル個人メドレーは4分8秒95で3度目の頂点に。200メートルバタフライも銀メダルを獲得した。

 「自分が思っていたメダルの色より、すごくいい色が取れた。ただ、タイム的な達成度は正直、60~70パーセントくらい。200メートル個人メドレーは1分55秒台を目指していたし、400メートル個人メドレーは4分5秒台が目標だった。東京五輪に向けて、パンチのあるタイムを出したいと思っていたので、出せなかったことは次に向けた課題」

 ―収穫は。

 「ラッキーだったこともあって金メダルを取れたし、200メートルバタフライは久しぶりに自己ベストを更新して1分53秒台に突入することができたのはよかった。やってきたことは間違いない。スタート台に立った時に『誰よりも今年頑張れている』と思えていたので自信を持ってレースができた。レース展開というか、勝負勘も生かして200メートル個人メドレーは金メダルを取れたので、成長はしていると思う」

世界水泳で獲得したメダルを手に笑顔の瀬戸大也

 ―近年、夏の大会の前に故障などアクシデントがあった。

 「17年は直前に首を痛めたし、それに引っ張られて肩も痛くなって、コンディションが悪い中で世界選手権を迎えてしまった。18年はそこそこいい状態だったが、大会前の合宿で風邪をひいた。今回の世界選手権は、比較的よくコンディションが整えられて、いい状態で臨めていたので自信もあった。やはり体調管理と、コンディションを最大限に引き上げてレースをすることが大切だと感じた」

 ―フォームを変えたり、試したりしたことはあったのか。

 「技術面で、ここを変えたというのはあまりない。4泳法とも自分の泳ぎが確立してきているので、あまりいじってはいない。バタフライの呼吸のタイミングに気をつけるところと、背泳ぎであまりローリング(体のひねり)しないところ、平泳ぎのキックの強化―。この三つを意識していたくらい。あとは最後の自由形の強化。そのための耐乳酸トレーニングを一番重視している」

 ―耐乳酸トレーニングをはじめ、苦手な練習に向き合ってきている。

 「トレーニングでは『サボろう』とか『嫌だ』と思った瞬間に『これが強化のポイントだ』と、いつも思うようにしている。あとは最近、きつい練習メニューを出されたときに『うわっ』と思いつつも『まあ今しかできないし』という気持ちがすぐに芽生えてくる。考え方も、さらにポジティブになれている。覚悟ができている」

 ―耐乳酸トレーニングの効果を世界選手権で感じることはあったか。

 「あった。特に200メートル個人メドレーは、かなり体がよく動いてくれたと思う。絶対にきついと分かっていたけど、耐乳酸トレーニングをやっていたから、耐えられたら勝てると思っていた。最後接戦になることは想定していて、練習の成果を見てみようという気持ちだった。競っていたのできつかったが、リードしているのは分かっていたので、そのまま必死で逃げた」

男子200㍍個人メドレーで金メダルを獲得し喜ぶ瀬戸大也(手前)=光州(共同)

 ―ライバルの萩野公介(ブリヂストン)が不在で、エース、主将として迎えた世界選手権だった。

 「今までとあまり変わらなかった。自分は注目をしてもらうと頑張れるタイプ。すごく追い風ではあった。プレッシャーが全くなかったので、自分に風が吹いているなと感じた。今回金メダルを2個取れて、東京五輪も注目してもらえると思う。その環境を自分でつくれたのでよかった」

 ―プレッシャーを感じないのはなぜか。

 「自信がないときは多少なりともプレッシャーを感じる。プレッシャーは準備ができていない人が感じるものではないかと思う。『ああなっちゃったらどうしよう』とか後ろ向きに考えてしまう人が、プレッシャーを感じる人だと思う。やるべきことをやったら、あとは頑張るだけ。自分は、やってきたことを全部出すだけ、と考えるタイプ」

 ―そういう考えに至ったのは。

 「プレッシャーはもともと、あまり感じていなかった。今までは(萩野)公介がいたので、プレッシャーが半分半分になっているところもあったとは思う。プレッシャーはリオデジャネイロ五輪の時も感じなかった」

 ―競泳界の大黒柱として東京五輪に向かう。

 「リオ五輪が終わった後に『次は東京で金メダル』とすぐ発言していた。そういう発言に対して、今の出来はいい感じできていると思う。今の段階では百点。ここからが勝負。油断せず、風邪や病気、けがをなくしていけたら、リオ五輪よりもさらに自信を持っていけるのではないかと思う」

男子200㍍個人メドレーで金メダルを獲得し、日の丸を掲げる瀬戸大也=光州(共同)

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