【3月23日 AFP】世界各地の病院の医師らは今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)への対応に追われる中、大規模なトリアージ(治療優先度の決定)の実施を迫られる可能性と向き合っている。

 救急医療の現場で医師は、常に患者の生存率に基づき、治療方針に関する重大な決定を下しているが、今回は戦時に匹敵する厳しい選択になるかもしれないとの声も上がっている。

 公式統計によると、世界全体で新型コロナウイルスの感染者数は30万人以上に達し、これまでに1万3000人以上が死亡している。

 新型コロナウイルス感染症にかかった人の多くは入院を必要としないが、呼吸器感染症の重篤な症状を示した患者には救急医療が必要だ。だが、限られた数の人工呼吸器を、どの患者に使用すべきなのだろうか。

「患者の優先度を決める必要が出てくる」と言うのは、仏パリにあるサン・アントワーヌ病院(Saint Antoine Hospital)の集中治療室長、ベルトラン・ギデ(Bertrand Guidet)氏だ。

「エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の言葉を借りれば、われわれは戦争状態にある。戦場では、死んでしまうと判断された重度の負傷者には治療を施さない。これはトリアージと呼ばれている」

 さらに同氏は、長期的に受け入れ能力を維持することも必要だと指摘する。「すべてがたちまち飽和状態になってしまうことは避けなければならない」

 トリアージを実施する際の指針は既にあるとギデ氏は話す。「われわれは日々そうした決定を下しており、ゼロから始めるわけではない」。通常の判定基準には、「患者の意思」、総体的な健康状態、そして症状の重篤度が含まれている。だが戦争や自然災害の際には、この判定基準が極めて厳しくなる。