今どきの夫婦にとって「子は鎹(かすがい)」になってない?

「子どものために離婚はできない」と話す女性たちは多い。主に経済的な理由があるが、その他にも「子どもから父親を奪ってはいけない」という思い込みもある。だが、実際、離婚した両親をもつ子どもたちはどう考えているのだろうか。

子どもから見た親の離婚~子は鎹(かすがい)にはなれなかった?

「子どものために離婚はできない」と話す女性たちは多い。主に経済的な理由があるが、その他にも「子どもから父親を奪ってはいけない」という思い込みもある。だが、実際、離婚した両親をもつ子どもたちはどう考えているのだろうか。
 

息子たちのために離婚できないと言っていた母も

「うちは僕が小学校6年生のときに親が離婚しました」

そう言うのはユウイチさん(29歳)だ。当時、父親は43歳、母親は40歳。兄が14歳で彼が12歳だった。

「僕が小さいころから、母親はよく泣いていました。父は酒飲みで酔って帰ってきては暴れる。わりといい会社に勤めてはいたんですが、外でのストレスをすべて母にぶつけていたんでしょう。母が殴られているのを見たこともあります。僕ら兄弟が大きくなってからは、ふたりで父親を止めていました。ふたりでよく、母に『離婚しなよ』と言っていたけど、母は『あんたたちを大学まで出してやりたい』と。そのためには離婚できないと」

あるとき、父が執拗に母に暴力をふるったことがある。止めようとしたユウイチさんが父に突き飛ばされて頭を打ち、意識を失った。それを見た兄が父親を刺そうとした。母が間に入ったため、兄は母の腕を刺してしまった。

「この一件があって、母はついに離婚したんです。うちの事情を知っていた近所の人たちがいい弁護士さんを紹介してくれて、家は母と僕たちが住めるようになりました。生活は苦しかったけど、母はダブルワークで働いてがんばっていたし、僕らも高校生になるとバイトをしてた。いちばん変わったのは、母が泣かなくなったこと。体は大変だったと思うけど、離婚後は明るかった。母の笑顔を見たいから兄も僕もがんばってこられたと思っています」

離婚後、母親が笑顔を見せるようになったことがうれしいと語る人は多い。両親のケンカや暴力を目の当たりにして暮らすより、母の笑顔を見ながら育つほうが子どもにとってもいいのではないだろうか。
 

突然の離婚で裏切られた気がして…

一方で、離婚した親を今も恨んでいる人もいる。ユミさん(33歳)だ。

「私が高校生のころ、親が突然離婚したんです。それほど仲がいいとは思っていなかったけど、離婚するほど悪化しているとは知らなかったので、家族なのに仲間はずれにされたような気持ちでした。高校生なんだから話せばわかるのに……。父が出ていって、私は一人っ子だから母とふたりきり。どうやら父に女性ができたようでしたけど、私は母とは折り合いがよくなかったので、両親に裏切られたと感じました」

当時、両親ともに40代半ば。母親は離婚の決意がきちんとできていなかったのだろう、それからも意気消沈したように日々を送っていた。もともと共働きだったのと、父からの慰謝料があったため、急に生活が困窮することはなかったが、ユミさんは荒れた。悪い仲間とつるんで恐喝や万引で、何度も警察につかまった。

「母は泣くばかりで怒らなかった。そのうちバカバカしくなって学校にも行かなくなった。その後は男のところを渡り歩いて……。19歳で結婚したけどすぐに離婚。その後は水商売をしながらひとりで暮らし、23歳で再婚して子どもも産まれたんですが、また離婚。離婚した両親を恨んでいたのに、私も娘に同じことをしている。それでようやく目が覚めました」

現在は母と娘との3人暮らし。母が朝から働き、ユミさんは近所のスナックで夜、働いている。娘には寂しい思いをさせたくない。もうじき母が定年退職したら、ユミさんが昼間、働く予定だ。

「そのために昼間、コンピューターの専門学校に通っています。就職できるかどうか不安もありますが、とにかくがんばらないと」

父とはまったく会っていなかったが、4年前、再婚していた父と再会した。父はすでに末期がんだった。

「わだかまりや恨みは消えていません。それでも父の最期に会えてよかったと思う。母とだって完全にうまくいっているわけではないんですが、協力しないと生活できないから仕方がないなと思っています。おそらく父にも母にも、それぞれ思いはあるんだろうという想像だけはできるくらい、私も大人になったということですかね」

ユミさん、最後はくすりと笑いながらそう言った。いろいろな経験を経て、彼女自身が清濁併せのむことができるようになったということなのだろうか。

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