「3巡目は見直し必至で廃止やむなし」 国スポめぐり宮下知事が見解

渡部耕平 野田佑介
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 全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事の「廃止論」をきっかけに、国民スポーツ大会(国スポ)のあり方が議論になっている。県内からは負担が重いため賛同する声が出る一方、2年後に自県開催を控える中、複雑な反応も出ている。

 2026年に「青の煌(きら)めきあおもり国スポ・障スポ」の開催が決まっており、関係者が準備を進めている。宮下宗一郎知事は25日の会見で、「県民の力を結集し、将来のためになる思い出に残るような大会に仕上げていきたい」と述べ、従来方針通りに開催する意向を改めて表明した。

 一方で将来のあり方については、「(2035年以降の)3巡目の見直しは必至で、廃止もやむなしだ」と述べ、「廃止論」に同調。理由について、県と市町村の費用や人員面での負担、前例踏襲型の硬直的な大会の組織運営などの課題を挙げ、「(現状のままなら)大会を継続するのはやめたほうがいい」と強調した。

 2年後に開催を控えたタイミングでの「騒動」については、「直近の大会に水を差す、誤解を生じさせるような報道の内容になっていることは非常に残念」とし、「(村井氏の)発言の機会は配慮いただきたかった」とも話した。

 国スポは、日本スポーツ協会、文部科学省、開催地の都道府県の3者で共催し、各都道府県の持ち回り方式で原則、毎年開催する。1946年に旧・国民体育大会として第1回大会が開かれ、今年の佐賀大会から国スポに名称を変更。34年に2巡目の開催を終える。

 青森県で国民スポーツ大会が開かれるのは、名称が「国民体育大会」だった77年以来。49年ぶりとなる2026年の大会では86競技があり、会場は県内全40市町村のほか県外の3市町に及ぶ。大会期間は冬季大会が26年1月31日~2月17日、本大会が10月10日~20日。県は選手団や観客ら約80万人の来県を見込み、「青森の魅力を知ってもらう好機」と意気込む。

 しかし、国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会を担当する、県の国スポ・障スポ局は、施設整備や選手の輸送、職員確保など「開催県の負担は大きい」と明かす。県は関連予算として23年度までに24億円を計上、今年度は25億円を盛り込んだ。ほかに基金として115億円を積む。50メートルプールの新設などに投じている。

 人件費もかさむ。県内にスポーツ施設のない競技(水泳の飛び込み、馬術、スキーのコンバインドとスペシャルジャンプ)は、それぞれ宮城、山梨、秋田3県の施設を借りるため、現地事務所の設置と職員派遣が求められる。担当する職員数は今年度84人だが、26年度には100人程度に増員する見込みだ。

 また懸念の一つに、選手団のバス確保がある。宿舎と試合会場の往復に加え、運転手の働く時間に規制がかかる「2024年問題」による運転手不足の影響もある。

 県は経費削減のため、ライフル射撃で使う電子標的を昨年の開催県の鹿児島から安価で購入したり、競技用のボートを他県と共同購入したりするなど対策を講じている。同局は「運営費が過大にならないよう、節約に努めたい」としている。

     ◇

 国民スポーツ大会の存続を求める競技関係者は多い。青森陸上競技協会は「スポーツの普及や選手たちの能力向上にとって、重要な大会」。国内一線級の選手の能力や技術を間近で見られる、貴重な機会と考えている。

 ただ、地元での開催となると話は別のようだ。協会によると、大会運営に役員として審判員が約420人、競技の補助員に約330人が必要。だが、協会の登録者の減少や高齢化により、必要人数を確保するのは現時点では難しいという。

 協会の安田信昭・常任理事は「大会は続けてほしいが、地方で運営するのには役員が大幅に足りない」と訴える。「できれば(人材が豊富な)東京の国立競技場で開催してもらいたい、と本音をもらす関係者もいます」(渡部耕平、野田佑介)

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