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MLBのマイナー大幅縮少案に広がる懸念。もはや「ハンバーガーリーグではない」革新進む現況を日本人コーチに聞く【インタビュー】

メジャーリーグの舞台を夢見るマイナーリーグの選手たちに、選手生命を脅かす危機が訪れている。実際、多くの選手がその道を閉ざされる可能性が高い。かつてタフな環境から「ハンバーガーリーグ」と表現された組織だが、今日では様々な改革とともに選手の育成が進められている。メジャーリーグの根幹を揺るがしかねない懸念が広がる中、マイナーリーグの現場に立つ指導者は何を思うのだろうか。

2019/11/19

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全体の26%を削減…「計画はマイナーリーグを破壊する」

 メジャーリーグ機構(MLB)が先月マイナーリーグに提案したとされる縮小案の具体的な内容が徐々に明らかになってきた。米国大手紙『ニューヨーク・タイムズ』では、16日(日本時間17日)付の記事で削減対象とされる42チーム名を発表し、同日にニューヨーク地域紙『デイリーニューズ』では「ロブ・マンフレッド(MLBコミッショナー)の計画はマイナーリーグを破壊する」という刺激的な見出しで詳細に論じている。
 
 報道によれば、MLBの提案骨子は以下の通り。
 
1.現在160チームの全マイナーリーグの26%減にあたる42チームを削減する。
2.削減対象は主にショートリーグやルーキーリーグに所属するチーム。
3.新人ドラフト会議を6月から8月に移し、指名ラウンドも現在の40巡から20巡に減らす。
4.1球団組織が傘下にもつマイナーリーグの現在の7~9階層から5階層に限定する(3A、2A、 1A+、1A、混合)。1球団組織が保有する選手数も現在の200人超から150人に減らす。
 
 提案が実現すれば、1000人以上の野球選手が仕事を失うだけではない。それぞれのチームが抱える球団スタッフ、施設従業員、リーグ審判など多くの人の職もまた失われることになる。さらに多くの地方都市から野球の文化と経済的な恩恵を奪うことにもつながる。
 
 MLBは、この提案の目的はマイナーリーグ選手たちの待遇を改善し、またすべてのマイナーリーグ施設をMLB傘下に相応しいレベルにするためだと説明している。
 
 昨今MLBは米議会へのロビー活動を行い、マイナーリーグ選手を最低賃金や時間外労働賃金を保障する労働基準法の適用対象外とすることに成功した。そのことがかえって、マイナーリーグ選手たちが置かれている過酷な経済的状況が数多く報道される結果となり、MLBはいくつかの集団訴訟をも抱えている。
 
 この提案の背景にはそうした批判をかわず狙いがあることは間違いないだろう。同時に、したたかなビジネス論理も見え隠れする。仮にマイナーリーグの給与水準を一律に引き上げたとしても、全体の選手数を減らせば、球団組織が負担する人件費は総体として大きな影響を受けないだろうことは容易に想像がつく。
 
 削減されるチームの1つとして名前が挙がっているミネソタ・ツインズ傘下エリザベストン・ツインズ(ルーキーリーグ)の三好貴士コーチは、この提案についてメジャーリーグ全体の選手育成にも大きな影響が生じると警鐘する。

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