ニュース 2020.04.29. 18:44

“平成の怪物”がメジャー挑戦前年に放った輝き ~プロ野球「“超個人的”名勝負」~

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2006年「西武・松坂大輔」最後のゲーム (C) Kyodo News

今こそ「あの名勝負」の話がしたい


 「新型コロナウイルス」の問題により、シーズン開幕の見合わせが続いているプロ野球。これまで当たり前のように行われていた野球の試合が突然奪われ、寂しい想いをしているファンの方も多いのではないか。


 そんな中、野球ファンの『#おうち時間』を盛り上げているのが、テレビやラジオで行われている「過去の名勝負」特集だ。

 当事者がハイライト映像を見ながら知られざる裏話を踏まえて解説してくれるという企画は過去にもあったが、最近では貴重なフルマッチを丸ごと流してしまうという大胆な番組構成も。家でお酒を飲みながら当時の懐かしい思い出にふけるファンや、話は聞いたことがあるけどしっかり見るのは初めてという若いファンまで、SNS上では様々な盛り上がりを見せている。


 というわけで、今回からベースボールキングでも過去の野球界の名勝負について取り上げる新企画をスタート。「“超個人的”名勝負」と題しているように、筆者が随所で私情を挟みながら思い出に残っている1試合をご紹介。第1弾は編集部の尾崎が担当します。


松坂大輔、メジャー挑戦前年の奮闘


 私がこのテーマでまずパッと思い浮かんだのが、2006年10月7日(土)に行われた、パ・リーグのプレーオフ第1ステージ・初戦。実はこの試合、5月1日(金)にNHK・BS1にて放送される『スポーツ名勝負』で取り上げられることが決まっているという。

 なので、この試合の熱さについては映像で見て感じていただきつつ、ここでは知っているとより楽しめる、この試合に至るまでの“背景”について先に振り返っておきたい。


 この試合について語る前にしっかりと触れておきたいのが、この話の“主役”となる松坂大輔について。

 言わずと知れた“平成の怪物”、野球界に数々の名勝負を残してきた右腕であるが、結果的に松坂はこの試合を最後に日本を去る。2006年のオフ、かねてからの夢だったメジャー挑戦を叶えるのだ。

 実はこの1年前、2005年のオフにポスティングシステムを利用したメジャー挑戦を球団に直訴していた背番号18だったが、この時は球団がそれを認めず。一度はお預けを食らっている。

 2005年は28試合に登板してキャリアハイの防御率2.30という安定した成績を残しながら、14勝13敗と思うように貯金を作ることができず。この時は援護の少なさに加えて守備も粗かったこともあり、味方の野手陣に苦言を呈してしまったこともあった。


 “エースとしての振る舞い”について批判の声が挙がったこともあったが、それを見事に払しょくして見せたのが2006年の戦いぶり。

 この年は開幕前に第1回ワールド・ベースボール・クラシックが開催され、松坂は日本のエースとして参戦。3度の先発でいずれもチームを勝利に導く好投を見せ、優勝がかかったキューバとの決勝戦でも堂々たる投球を披露。大会の初代MVPに選出される活躍で、日本の世界一に大きく貢献した。

 その激闘から今度はペナントレースへ……という目まぐるしさのなか、故障もなく年間を通してローテーションの柱に君臨。25試合に先発して前年を上回る防御率2.13という安定した投球を見せ、17勝5敗に200奪三振という堂々たる成績。モヤモヤの多かった2005年を経て、「レオのエースここにあり」という姿を見せつけている。


 しかし、そんな松坂を押しのけ、この年パ・リーグの投手四冠に輝いた男がいた。ソフトバンクのエース・斉藤和巳である。

 実は、松坂の防御率・勝ち星・奪三振はすべて斉藤に次ぐ2番目の成績。春に世界一の投手となった男が、国内のタイトル争いでは一人の男に敗れたのだった。


ここぞで頼れるのがエース


 前置きが長くなってしまったが、この2人が相まみえたのが2006年10月7日(土)のこと。当時はインボイスSEIBUドームと呼ばれていた西武の本拠地で行われた、パ・リーグのプレーオフ初戦だった。


 「野球は筋書きのないドラマ」──。期待が高まる時ほど、試合展開とは得てして真逆のものとなりがちではあるが、この試合は周囲の予想通り“極上の投手戦”に。短期決戦独特の緊張感のなか、互いに譲らずスコアボードにゼロを並べていく展開が続く。

 とはいえ、その内容は対照的。“四冠王”の斉藤和巳が立ち上がりから西武打線を圧倒していく一方、松坂は走者を背負いながら気合いでアウト3つをもぎ取っていく形。ピンチは作りながらも、絶対に先に失点はしない、という意地でソフトバンク打線を封じていく。


 試合が動いたのは、0-0のまま迎えた7回。松坂は下位打線の連打にこの日4つ目の死球で満塁のピンチを迎えるも、ここも執念で切り抜けて無失点。するとその裏、先頭の中島裕之とアレックス・カブレラに連打が飛び出し、西武が無死一・二塁のチャンス。ここで5番の和田一浩が三遊間突破の安打を放ち、この間に二塁走者が生還。西武が試合の均衡を破った。

 援護をもらった松坂は、直後の8回表にさらにギアを上げ、ホルベルト・カブレラ、松中信彦、フリオ・ズレータのクリーンナップを三者連続三振。チームを勢いづけると、9回も最後までマウンドを守り抜き、被安打6に死球4つながら13奪三振で完封。タイトル争いでは後塵を拝した斉藤和巳を相手に、一番負けられない試合で投げ勝ってみせた。


 WBCの決勝戦、そしてこのプレーオフ初戦と、“ここぞ”の場面で頼れるのが松坂大輔という投手の最大の魅力。“いろいろあった”2005年を経て、松坂大輔という投手の真骨頂が見られたのが2006年だったように思う。

 チームはその後に連敗を喫し、第1ステージ敗退。オフにはポスティングの行使が認められ、松坂はこの試合を最後に西武を去った。しかし、あれから14年…。紆余曲折を経て2020年に男はまた所沢に帰ってくる。こんな未来が待っているとは、この時は誰もが予想もつかなかったことだろう。


 背番号は「16」に代わったが、令和の時代に古巣に戻ってきた“平成の怪物”。「西武の松坂大輔」が見られる日はいつになるのか、一日も早い2020年シーズンの開幕が待たれる。


文=尾崎直也


2006年10月7日(土) 西武 - ソフトバンク


【パ・リーグ プレーオフ第1ステージ・第1戦】
▼ インボイス
ソ|000 000 000|0
西|000 000 10X|1
勝:松坂大(西)
負:斉藤和(ソ)

【スタメン】
・先攻:ソフトバンク
(遊)川崎
(中)大村
(三)カブレラ
(左)松中
(一)ズレータ
(右)柴原
(指)田上
(二)本多
(捕)的場
先発P. 斉藤和

・後攻:西武
(中)赤田
(右)福地
(遊)中島
(一)カブレラ
(左)和田
(指)リーファー
(三)中村
(二)片岡
(捕)細川
先発P. 松坂大

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