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伝説の名将が語る

中村順司(元PL学園高監督)×渡辺元智(元横浜高監督) スペシャル対談 昭和&平成甲子園を戦った名監督

 

甲子園の良さも怖さも、すべてを知り尽くしている。2人で計109勝。昭和と平成、球児の聖地で多くの伝説を刻み、頂点へと導いた名将が、令和元年夏に高校野球を語り合う。
取材・構成=岡本朋祐、上原伸一 写真=高塩隆、BBM

神奈川と大阪の強豪校を率いた名指揮官。「甲子園」の共通項でつながる2人が、指導論を語り合う。中村氏は渡辺氏から総監督退任時に贈られたネクタイを着け、取材に応じた


PL学園高は高校野球の「文化」


 7月、2人は監督勇退後初めて、母校のユニフォームに袖を通した。渡辺氏は「YOKOHAMA」のマークを胸に、神奈川大会の開幕試合で始球式を務め、中村氏は「マスターズ甲子園」の大阪府予選で、PL学園高の総監督としてベンチで指揮した。胸の高鳴りを抑えることはできず、自然と体が動いたという。

渡辺 2015年夏に辞めたときは、2度と横浜高校のユニフォームを着るつもりはありませんでした。ただ、高校野球全体に恩返しをしたい、という思いがあったので、その1つと、やらせてもらいました。練習のときは本塁までの18.44mが遠く感じたのですが、いざマウンドに立ったら、近く感じましてね。ミットに吸い込まれていくようにボールがいってくれました。

中村 PL学園高が「マスターズ甲子園」の予選に出場するのは今年が初めてで、桑田真澄(元巨人)が野球部のOB会長になったのを機に、出ることになったそうです。世話役の者から、ベンチに入ってください、と言われ、昔のユニフォームを引っ張り出しました。PL学園のユニフォームを着るのは、渡辺先生が率いる横浜高と対戦した98年春のセンバツ準決勝以来。サイズ的に心配だったのですが、当時の伸びるニット素材のおかげで何とか(笑)。久びさのノックはうまくできませんでした。雰囲気に乗せられ、打ってみたんですが、レフトに打ったつもりが、センターを走らせてしまうことに……。試合は背番号「81」を背負った桑田が初回、先頭打者に安打を許した後は三者連続三振を奪うなど活躍し、勝つことできました。試合後は桑田からウイニングボール。うれしかったですねえ。

渡辺 (2016年夏を最後に休部状態の)PL学園には何とか、復活してもらいたいですね。単なる野球部ではないですから。聖地・甲子園であれだけの実績を残したわけです。高校球界の財産だと思っていますね。

中村 渡辺先生からそう言ってもらえると、私たちとしてもうれしいです。

渡辺 今の新しい野球もありますが、中村先生が率いていた全盛時代のPL学園と融合しながら、より新しいものを作り上げてほしいと願っています。PL学園の野球部は一つの文化ですよ。絶対に残していかないといけない。

中村 母校が地方大会に出場していないのはやはり、寂しいですね。渡辺先生から以前「神奈川から近畿の甲子園に行くので、地元の兵庫、大阪のチームが強いほうが闘志が湧く」と言われたことがあります。そういうチームと戦うことが、チャレンジだ、と。

渡辺 春、夏の甲子園大会は地元・近畿のチームが君臨している構図でないといけない。全国から人が集まる「聖地」とはそういうものだと思いますし、それが、高校野球の根底にもなっていると思います。PL学園の後は、大阪桐蔭という常勝チームが出てきましたが、常に私たちは近畿の高校を意識して戦っていた部分はあります。

中村 そこまで思われて、戦われていたのですか……。光栄です。周囲の皆さんからは、横浜とPL学園は(東・西の横綱として)比較されましたが、私たちも東の王者に負けるな、という気持ちで臨んでいたのを覚えています。

渡辺 大阪と神奈川というと、古くは浪商高(現・大体大浪商)の尾崎行雄(元東映ほか)さんと、法政二高の柴田勲(元巨人)さんの対決がありましたが今後、野球ファンに刻まれる新しい記憶を残さないといけない。それが、新しい高校野球観を持った子どもたちが育つ源になると考えています。

──今夏の地方大会も終盤を迎えていますが、大阪は今も昔もノーシードのオープン抽選で行われています。

中村 私が監督をしていたころも1回戦から、いきなり強豪校と激突することがたびたびありました。1回戦から決勝まで8試合を勝ち上がらないといけない、厳しい大阪大会です。

──渡辺氏は常々「神奈川を制する者は全国を制す」と言われていました。

渡辺 全国制覇という頂上がある以上、求めていくことに価値がある。甲子園で得た経験を地元に還元する。大げさな話ではなく、少なくとも・・・

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